二頭の龍は光の弧を描いて帰っていった。

僕にそっくりなユン様はじきにシェンロンとなる。

そうなったら、白虎が守るこの国へはそうそう来れないだろう。

シェンロンとしての仕事もあるだろうし。

きっと、ヒチョリヒョンがそのあたりを想って連れてきてくれたんだろうな。

僕もユノも転生しているから正確には繋がりはないはずなんだけど、やっぱり会えたのは嬉しかった。

「…ン」

それにしても、本当にそっくりだったなあ。

まるで鏡を見ているようだった。


「…ミン」


子供たちには話したほうがいいかな。

僕が龍の生まれ変わりで、ユノが巫女の生まれ変わりだって。

あ、あの書き物を見せればいいのか。

そのうち、ヒチョリヒョンに相談しよう。


「チャンミン!」


僕を呼ぶ声に気がついて我にかえると、ふくれっつらをしたユノが睨んでいた。


「何度も呼んでるのにっ!」

「すみません。なんですか?」

「もういいっ!」


ユノはぷいっと僕に背を向けたかと思うと、そのまま出ていってしまった。


ばたんとドアが閉まる。


あれ?

もしかして、僕、やらかした?

追いかけないとヤバくないか?



慌てて追いかけていくと、王の居室はドアノブにベルが掛けられていた。

…あぁ。

しまった…


王が用事があって家来を呼ぶときは、声に出すのではなくベルを鳴らす。

そのベルがドアノブに掛けられているのは、『誰も来るな』ということ。

すなわち、人払いだ。


僕が仕えるようになってからは人払いされることなんてなかったから、ドアノブに掛けられたベルを見るのはショックだった。

家来どころか、誰も入れないんだから。


茫然とする僕に、召し使いが言う。


「お人払いが解けたらお知らせしますから、お仕事に戻られては?」


それをしたら、さらにまずいことになりそうだ。

「いえ、僕が原因ですからここで待ちます。申し訳ありませんが、後宮へそのように伝えていただけますか?」

「承知しました。」


今まで、どんなにふてくされても人払いをすることなんてなかったのに。

さっきの召し使いとのやりとりも聞こえていたはずなのに、ドアの向こうは静かなままだ。


僕はどんな地雷を踏んだんだ?