双子の王子たちは一日の殆どを後宮で過ごしているが、おやつの時間だけ本殿のサンルームに移動する。

それは、城の全ての人間が王子たちの姿を見ることができるようにということと、王子たちが城で仕える人間を知るためであった。

もちろん、【様】づけは禁止。

なので、すれ違う大人たちから「ドフン」「ドンジュ」と声をかけられる。

で、本日のおやつ。

「今日はミルクプリンですよ。」

パティシエがテーブルにセットすると、王子たちの目がキラキラと輝く。

「…ドンジュっ!」

「うん!」

「うさぎだっ!」

「かわいー!」

ドフンは頬に手を当ててキャーキャー言ってるし、ドンジュはスプーンを握って、うっとりしている。

ユノも「可愛らしいな」と腕組みしながら覗きこんでいる中、一人シム チャンミンだけは渋い顔だった。

「ちょっといいですか?」

パティシエをサンルームの外に連れ出して、向かい合った。

「あのプリン、幼児向けの量とは思えませんが。一体どういうことですか?」


後宮管理人のシム チャンミンは普段が穏やかなだけに、こういうときは妙に怖い。

「あ、あのっ、初めはプレーンなミルクプリンだったんです…」

「初めは?」

テーブルにセットされたのは、ビスキュイ、カラフルなホイップクリーム、フルーツで飾られた豪華なものだ。

「は、初めはミルクプリンにストロベリーを添えただけだったんです。そしたら、別のパティシエがそれでは寂しいとビスキュイで耳を…」

そこから我も我もと、デコレーション合戦になってしまったのだと、ガックリと項垂れた。

はあ。

ため息をつくシム チャンミン。

「俺たちが一緒に食べれば丁度いいんじゃないか?」

なかなか戻ってこないシム チャンミンを見にきたユノ王がドヤ顔で言った。


「王さま。」

「後で感想を伝えに行かせればいい。ご苦労だったな。戻っていいぞ。」

恭しくお辞儀をしたパティシエは大急ぎで厨房へ戻っていった。



サンルームで四人が和やかにおやつを食べているとき、厨房では大騒ぎになっていた。

「大変だ!ドフンとドンジュがここに来る!」

「片付けろ!」

「掃除だ!」

「お前のエプロン、汚れてるぞ!」

今までにないくらいの団結力で厨房はピカピカに磨きあげられた。

コックもパティシエもぐったりだ。

身支度も整えられた頃、双子たちがやってきた。

「こんにちは。皆さん、子供たちが本日のおやつのお礼を言いたいと。」

シム チャンミンが双子たちの背中を押す。

「プリン、おいしかったです!」

「おみみがさくさくしてて、ね!」

「しっぽがふわふわしてて、ね!」

「いちごと、ちっちゃいのもおいしかった!」

「あのね、おとうさまが、さくさくのおみみにプリンをのっけてね、ちちうえにアーンてしたの!ね!ね!」

「そしたらね、ちちうえのおかおがまっかになったの!ね!ね!」

双子たちはグーに握った手を口元に当てて、二人でキャーキャー言っている。

そして、その後ろではイチャコラをバラされて真っ赤になっているシム チャンミンがいた。

「ドフン、ドンジュ、次はどんなおやつがいい?」

パティシエ長が言う。

「んー、またおみみがついたのがいい!」

「うん!そしたらまたおとうさまとちちうえがうれしいから!」


もういいでしょ、とシム チャンミンに抱えられて双子たちは去っていった。




「見たか?あの顔。」

「もちろん。」

「…耳じゃなくても、アーンはできるんじゃないか?」

「羽とか?」

「花びらというのもアリだな。」




かくして、双子たちのおやつは豪華に飾りがついた甘くて可愛いムードのものが出てくるようになったのであった。