「おまちなさいっ!」

下着姿の男の子が二人、部屋の中を走り回っている。

過去前例がないほどの祝福を受けた二人の王子はすくすくと育ち、朝から跳ね回って後宮の女たちを手こずらせている。

「ドフン!ドンジュ!お着替えを!」

女たちは二人の王子を大切に慈しんで、厳しくするところは厳しく接している。

本来ならば、女たちはこの二人の子供に膝まづかなければならないはずだが、ユノ王とシム チャンミンの意向で成人するまでは全ての大人たちは王子を【子供】として扱うことになっている。

「将来この国を治めるものとなるのだから、身勝手な温室育ちでは困る。」

ユノ王は王の顔のときはこんなことをよく言うが、皆は知っている。

庭で胡座をかいた両膝に二人の王子を抱きお喋りしているときの顔が、この上もなく幸せにとろけていることを。




後宮中を走り回った王子たちは、後ろから抱えあげられた。

追いかけていた女たちはゼエゼエと肩で息をしている。

「またですか?朝から皆を困らせてはいけません。」

「おとうさま!」

二人を抱えあげたのは後宮管理人であり、もう一人の父親であるシム チャンミン。

「おとうさま、おはよう!」

「おはようございます。いつまでも下着だけでいてはいけませんよ。きちんと着替えを。」

「はあい」

「はあい」

二人を床に下ろして、目線を合わせる。

「君たちが言うことをきかないから、皆、大変ですよ?」

小さな二人が振り向くと、そこには呼吸を整えつつある女たち。

走り回ったせいか、髪が乱れている。

二人は女たちのところへ駆け寄り、女たちは目線を合わせるためにしゃがんだ。

「…ごめんなさい。」

ドフンの小さな手が、ほつれて落ちてきている髪の筋に触れる。

「ごめんなさい。おきがえする。」

ドンジュが頬にキスをする。



誰に習ったのか、この二人はこういうときの甘さが半端ない。

「ぽくたち、ひとりでおきがえできるから、きれいにしてきて。」

…一人ではまだ無理。

「交替で行って下さい。」



女たちに手を引かれて二人の御子は着替えるために歩いていった。