後宮に王の使いが来た。

それも駆け足で。

今度は何なんだ。


「シム チャンミンどの!今すぐ来て下さいっ!」

「え?ちょ、ちょっと!」

使いは僕の腕をぐいぐい引っ張って走る。
















side King

「王さま、いい加減に御機嫌をお直しになってくださいませんか?」

大臣たちが俺の前に立ったまま、ため息をつく。

「別に機嫌なんか悪くないし。」

ふん!

「その姿を機嫌が悪いと言うのです。こちらを向いて下さい。」

むっ!

「なんだよ。」

「王さまは民の手本にならなければなりません。自分の欲望のための我が儘は許されないのですよ?」

我が儘だとっ?

「愛しい者に会うことのどこが我が儘なんだっ!」

「後宮からのお召しは週に一度と決められているはず。それを毎晩というのは如何なものかと。」

「もういいっ!呼ぶのがダメなら俺が行くっ!」

「王さまっ!」

大臣が立ち上がろうとする俺を押さえ、別の大臣が何やら指示を出した。


しばらく経って、俺の目の前にはゼイゼイと肩で息をしているチャンミンがいた。


「…これはっ…どういうことっ…ですかっ」

息を整えながら周りを見渡すチャンミン。



「いきなり申し訳ない、シム チャンミンどの。王の我が儘を諌めてもらいたい。」

大きな目を更に大きく見開いて、はあ?と口をあんぐりと開けたチャンミンが俺を見た。