タンカきって王の寝所を出た僕は、震える足で後宮まで戻ってきた。

そのまま自室へと急ぐ。

途中、あちこちで衣擦れの音がしたけど、気付かないふりをして部屋に入った。

明かりをつけると、テーブルの上にポットとティーセットが用意されていた。

添えられている手紙には、[温かいお茶を飲んで体を休めて]と書かれている。

抱かれたと思われている…

やだなあ。なんか恥ずかしいし。

それに抱かれてないしね!

でも、女たちの心遣いは嬉しかった。

僕って、人を見る目あるな。

せっかくだから、お茶をいただくことにした。

甘い香りのハーブティーだ。

お茶飲んで身体も温まって眠くなってきたので、ベッドに入るとすぐに、部屋中に広がったハーブの香りに包まれて眠りに落ちた。




その夜、不思議な夢を見た。

「ちゃんみぃん…」

凄く甘い声。

誰かが僕を呼んでいる。

「ちゃんみんといっしょがいい…」

誰?

凄く可愛らしい。

僕は誰かを抱き締めている。

「あなたはほんとうに可愛らしいですね。」

唇をちょん、と触ると、うふふっと肩をすくめる仕草が可愛い。

「ちゃんみぃん…」

その可愛い人は僕の胸に顔をすり付けるようにしがみついてきた。

どちらがどちらなのか分からないくらいにピッタリくっついて、ぎゅーっと抱きしめて…




朝、僕は自分の涙で目を覚ました。