フルアーダ号を中心にした船団は、黒ひげを討つと聞いた海賊たちが更に加わって、大船団となった。
夜のうちに島をぐるりと囲み、逃げ道を塞いで、黒ひげの一味が船に乗り込むのを今か今かと待つ。
奴等が船を出したら、島への逃げ道も塞いで、戦に持ち込む算段だ。
僕が放つ矢が作戦開始の合図。
皆に聞こえるように、音と共に飛ぶ矢を放った。
黒ひげの海賊旗を射ぬいた僕の矢。
更に矢を放つ。
「チャンミン、俺の剣の相手も残しておけよ。」
隣でユンホが言った。
船団に囲まれた黒ひげの一味は、実にあっけなく崩れた。
僕らの獲物は黒ひげただ一人。
縛り上げられた乗組員たちの先頭に、そいつはいた。
やっとここまできた。
僕は手首に巻いていた金の首飾りに、一つ、キスをした。
ユンホの握りしめた拳が震えている。
「…お前ら、フルアーダ号のガキだな?
震えているのか?
図体だけ大人でも中身はガキのままか。」
黒ひげが嘲笑うように言った。
「震えているとも。嬉しくてな!俺たちの父さんと母さんの仇を討てるこの日を待っていたんだ。」
ユンホは片方の口の端を上げながら言う。
首には縄をつけられ、手足を縛られ、甲板から海の上に出された板の上に、あのときのクッデとチャンスニのように立たされている黒ひげ。
ひゅん!
一歩ずつ近づいて矢を放つ。
右腕に。
左腕に。
右足に。
左足に。
「ユンホ、いいよ。」
「おう。」
ユンホは舞うように剣を振り、次の瞬間、僕が射た矢は黒ひげの心臓を射抜き、吊るされた首を残して、身体だけ海に落ちていった。
そして、最後の矢で縄を切り、首も海に落ちた。
「ぐえっ!」
「ぅおっ!」
父親と、一人の男の子が呻き声をあげた。
「…おかあさん、いたい…」
「…ん。ユンホ、こっちおいで。」
「ん~」
涙目の男の子は母親の腕の中に潜り込んだ。
「俺もそっち行きてえ。チャンミニは本当に寝相が怪獣だ。起きてるときは天使なのに。」
大の字でスヤスヤと眠る男の子を見る父親。
「まだ早いからもう少し眠りましょ。」
「ああ。そろそろ四人で寝るのは限界だな。俺とユンホの身が持たん。」
父親と母親は、二人の男の子をそれぞれ抱き締めて、再び眠りについた。
終わり。