世界インフレの謎
渡辺 努
感想
とても分かりやすく面白い本。
以下は、筆者の別の本「物価とは何か」を読んで『人々のインフレ予想が物価の動きを決める』ことを理解した上での私なりの解釈。
『パンデミック後に起こったのは「供給不足によるインフレ」という新しいタイプのインフレである。(今までは需要が過剰によるインフレだった。)
供給不足になった3つの理由は以下。
①ステイホームをきっかけとして、人々は消費の対象をサービスからモノへとシフトさせた。(今までの「モノの消費からサービスへの消費」という流れと逆行しているため、モノの供給が不足した)
②パンデミックを機に仕事を離れ、戻ってこない人が多かった。(労働者不足によるモノの供給力不足)
③パンデミックにより、企業は脱グローバル化を進めた。(安定、安全と引き換えに、企業はコストアップを甘受した。)
つまり、消費者、労働者、企業の三社の行動変容により、供給サイドに大きなダメージをもたらした。
中央銀行は需要サイドに働きかけることはできるが、供給サイドに働きかける術はない。(今までのように金利を上げてもインフレを止めることが難しい。)
中央銀行が最も懸念しているのは、物価上昇が賃金上昇を呼び、今以上の物価上昇を起こす「賃金・物価スパイラル」である。
これを抑えるためには、2つ方法がある。
①やっぱり、金融引き締め(景気が悪くなればインフレ予想は下がる。)
②政府の「賃金凍結」命令
では、日本は?
今までは物価が上がらないため、賃金は上がらなかった。
しかし、今回のコロナ禍では、輸入品などの高騰により、価格を上げざるを得ない状況である。
このことを人々が認識し、「インフレが実現される」という予想を関係するすべての人が共有し、それに基づく行動をとることが大事。』
実際、少なくない企業で賃上げがされる予定であり、日本版賃金・物価スパイラルは解消されると期待できるのかな?