【地獄に落ちた男が、一度だけ善行をした蜘蛛の恩によって救われるチャンスを得るが、自分だけが助かろうとするエゴイズムが仇となる物語】
本のタイトル 蜘蛛の糸
出版社 新潮社
作者 芥川龍之介
♡あらすじ♡
釈迦はある日の朝、極楽を散歩中に蓮池を通して下の地獄を覗き見た。罪人どもが苦しんでいる中にカンダタという男を見つけた。カンダタは殺人や放火もした泥棒であったが、過去に一度だけ善行を成したことがあった。それは林で小さな蜘蛛を踏み殺しかけて止め、命を助けたことだった。それを思い出した釈迦は、彼を地獄から救い出してやろうと、一本の蜘蛛の糸をカンダタめがけて下ろした。暗い地獄で天から垂れて来た蜘蛛の糸を見たカンダタは、この糸を登れば地獄から出られると考え、糸につかまって昇り始めた。ところが途中で疲れてふと下を見下ろすと、数多の罪人達が自分の下から続いてくる。このままでは重みで糸が切れてしまうと思ったカンダタは、下に向かって大声で「この蜘蛛の糸は己のものだぞ。」「お前たちは一体誰に聞いて登って来た。」「下りろ。下りろ。」と喚いた。その途端、蜘蛛の糸がカンダタの真上の部分で切れ、カンダタは再び地獄の底に堕ちてしまった。無慈悲に自分だけ助かろうとし、結局元の地獄へ堕ちてしまったカンダタを浅ましく思ったのか、それを見ていた釈尊は悲しそうな顔をして蓮池から立ち去った。
♡見どころ♡
この物語の見どころは、芥川龍之介が自らの創作として初めて手がけた児童文学作品であるという点と、仏教の教えをユーモラスに表現した点です。芥川はこの作品を書くにあたって、ポール・ケーラスの『カルマ』という仏教説話集を参考にしたと言われていますが、その中の「蜘蛛の糸」の話を大幅に改変して、自分のオリジナリティを発揮しています。特にカンダタのエゴイズムや罪人達の人間性を描く際に、芥川の独特の皮肉や風刺が効いています。また、この物語は芥川の他の作品と比べて、健康で明るく、人間性豊かな作風であるとも言われています。
♡感想♡
カンダタの態度に驚きと怒りを感じました。彼は自分の命を救ってくれた蜘蛛に感謝することもなく、自分だけが助かろうとして、他の罪人達を蹴り落としました。その結果、自分も救われることができなくなりました。これは自分の行いが自分に返ってくるという、仏教の因果応報の法則を示しています。私はこの法則に共感しました。私は自分の行いに責任を持ち、他人に対しても思いやりを持つことが大切だと思いました。また、釈尊の慈悲深さにも感動しました。釈尊はカンダタの一度だけの善行を見逃さず、彼に救いの手を差し伸べました。しかし、カンダタがその手を拒否したので、釈尊は悲しみました。釈尊はカンダタを罰するのではなく、彼の選択を尊重しました。これは釈尊の智慧と慈愛の心を表しています。
♡まとめ ♡
「蜘蛛の糸」は、芥川龍之介の児童向け短編小説で、地獄に落ちた男が蜘蛛の糸によって救われるチャンスを得るが、自分だけが助かろうとするエゴイズムが仇となる物語です。この物語は、仏教の教えをユーモラスに表現した芥川の初期の名作です。カンダタのエゴイズムや罪人達の人間性を描く際に、芥川の独特の皮肉や風刺が効いています。また、釈尊の慈悲深さにも感動します。この物語を読んで、自分の行いに責任を持ち、他人に対しても思いやりを持つことが大切だと思いました。
♡オススメ♡
この物語は、仏教の教えに興味がある人や、芥川龍之介の作品に親しむ人にオススメです。この物語は、芥川の他の作品と比べて、健康で明るく、人間性豊かな作風であるとも言われています。この物語を読んで、芥川の多面的な魅力を感じてみてください。