「ちょっとここで待っててくれる?」
そう言い残して、男はそそくさと行ってしまった。
私はデート中に1人にされるのが苦手。
その後アイスを二つ抱えて「すごく並んでて、座ってる方が楽でしょ?」なんて男が帰ってきても、私は笑顔の裏で戸惑っている。
長く待ったとしても、たくさん歩いたとしても、一緒にいたい。
普段は1人で行動するのが好きだけど、デートは違う。テンションが違うのだ。ほら、証拠に、こんなスカートはデート以外では履かないから。
そんなデートモードの私を、この浮かれたスカート姿の私を、1人にして欲しくない。
あの時もそうだった。
暗闇の中に1部だけ照らされたオレンジの灯りたち。砂埃。独特な甘い異臭。
トレーナーにジーンズの人もいれば、お出かけか出稼ぎか、目にも鮮やかなサリーを来た家族もいる。
私は深夜、インドの首都デリーのカシミール駅にいた。
「バスを調べてくるから、ここで待っていてくれ。いいね?」
私は付いて行きたい気持ちだったけど、いつものようにこくんと頷き、座る場所もない雑踏の中、1人、彼を待つ事になった。
つづく
