皆に温かいココアをいれた
香りのいいココアは、極度の緊張で疲れきった脳にじんわりとしみた
バー「なんと」の常連が勢ぞろいし、一息ついたあと、だれかれとなく
「それで・・・」という声があがった
「部長、ここまでの事件になっちゃったんだから もう、かくすことなしで話しちゃったら?」
「このさき何がおこっているのかわからないままだと、私達がフォローしても危険なことがおこるかもだし」
「うん・・・そうだね、なんさん そうするよ」
部長は席からたつと、キノコ人間のとなりにいき、静かに語りだした
「ちょうどフロシキさんも到着したことだし」
「そろそろこの小説の読者さんも、いいかげん脱線しまくりで、物語の筋を把握するに辛くなってきてるかもだから」
「あらすじもふくめて説明するね」
なんさんが苦笑いしている
「まず、そうだな ドクロさん以外の人は、僕のスタンドのことは知っているよね?」
え?なに?スダント?
ボクチンはきょろきょろと皆の顔をみまわす
部長は無視して話をすすめる
「まずは、そこから話さないといけないんだけど」
「この世にはふつうに暮らしていたら、おめにかかることのない不思議な力をもった人がいる」
「たまたま、このバーには、そういう人たちが集まっちゃったんだけど」
「そのなかの一つが僕の『スタンド』だ」
「精神の力をパワーあるヴィジョンとして発現し、あらゆる超常的なアクションをおこすことができる」
「この『スタンド』は、人それぞれの精神の内面を色濃く反映して、多様な能力を発揮する」
「たとえば、壊れた物を治す力、空間をけずりとる力、物体に音をしみこませる力」
「僕のは、人の感情を自由にあやつる力だね」
え・・・?部長も超能力者なの?
「いろんな能力があるなか、他人の精神や魂に干渉する力は、その制御が難しい」
「思い通りに動かせることもなく、逆に自身の能力にふりまわされて、身を滅ぼすことだってある」

「その一人が、今回の事件の発端となった『彼』だ」
「だれもが知っている偉大なロックシンガーは、この制御できない才能に苦しんでいた」
「子どものころはきづかなかったそうだが」
「彼の歌で熱狂し、彼を神とあがめるファンを見て、その力を確信し、同時に絶望した」
「つみあげてきた功績や、彼を熱望するファン、世界中に拍手でうけいれられた自分、そのすべてが自分の歌の才能からでなく、『スタンド』の能力のおかげだったんだ」
「彼は絶望した」
「一時期、彼が音楽業界から姿をけしたことがあったよね、それがこのころのことだ」
「彼は日本を離れ、行き先もきめず、世界を放浪した」
「さまよい、そして出会った」
「『天国へいく方法を知っている男』 『DIO』に」

続く