(2) 復活する場合の基準等(具体的な考え方)
上記(1)の基本的な考え方を踏まえた、復活に向けた具体的な基準や手法等は 次のとおりである。
① 【前提・その1】復活に向けた住民の要望・合意があること
町名の復活にあたっては、歴史的町名を住居表示として暮らしのなかに取り戻 していくことについて、その町に暮らす住民が合意していることが必要である。
あわせて、事業所を含む対象区域内の全世帯において、各種の住所変更等、様々 な手続きが必要となることが理解されていることが求められる。
≪8頁「住居表示の際に必要な手続きの例」参照≫
≪10 頁「金沢市における旧町名復活の流れ」参照≫
② 【前提・その2】復活による効果が見込めること
復活にあたっては、歴史的町名が暮らしのなかで使われるようになるといった 当然の効果に留まらず、復活する町及び地域(町の周辺または市全域)にとって 次に挙げる効果のいずれかが見込めることを条件とすることが望ましい。
・ 城下町仙台の歴史や伝統の継承につながること。
・ コミュニティの活性化につながること。
・ 地域のブランド力強化につながること。
・ 観光資源としての地域の魅力向上につながること。
なお、歴史的な趣が残されていない町で歴史的町名を復活することについて、 その効果を疑問視する意見が、本委員会が平成 20 年 7 月に行った意見交換会にお いても各地区で出されている。
この点については本委員会としても、歴史的町名を大切にしていくことと共に、歴史的建造物など現存する有形物の保存・活用に も積極的に取組むことが望ましいと考えるところである。
その一方で、たとえ目に見える歴史的遺産がない町であっても、由緒ある町名の存在により、その町の安易な開発が抑制され、町の品格や風格が保たれる等の効果を認めるところであり、有形の歴史的遺産の有無を復活の条件には加えないこととしたところである。
③ 【前提・その3】住所のわかりやすさの確保に配慮すること
歴史的町名の復活は、住民の合意と要望に基づいて、ひとつひとつ行われるこ とになり、したがって、現在の町名のなかにかつての町名が混在することとなる。
また、都市化が進展し、大きなビルが数多く立ち並ぶ仙台においては、復活する 町の境界がかつてとは異なり複雑になるなど、来訪者にとって住所がわかりにく くなるおそれがある。
復活にあたっては、住民の希望や想いを十分尊重しつつも、 復活する町名が今後長く使われるものであり、また、来訪者等にとっての重要な地理的標識となることに鑑み、そのわかりやすさの確保には一定の配慮がなされることが望ましいものと考えるところである。
④ 【復活の対象区域】当面は旧城下の範囲を対象とすること
仙台においては「歴史的町名=旧城下の町名」というイメージが根強いが、そ の一方で旧城下の範囲は現在の仙台市域の一部に過ぎない。
このことを受けて、 歴史的町名復活の対象区域を旧城下の範囲に限定する必要性の有無について検討を行い、本委員会としての考え方を次のとおりとしたところである。
・ 「城下町仙台」から想起される範囲、あるいは、仙台城下の屋敷林に由来するといわれる「杜の都」のイメージは、今や仙台市全体に及ぶものであり、旧城下の範囲に留まるものではない。しかしながら、事業の当初においては、城 下町仙台における歴史的町名復活の目的と効果を明確にするため、旧城下の 範囲を復活の対象とすることが適当である。
≪37 頁「資料Ⅷ・旧城下の範囲」参照≫
⑤ 【町の形の定め方】城下町の町割りの特性を最大限尊重すること
仙台にはかつて、長さが1km を超える細長い町が数多く存在し、その範囲は、 復活にあたっての主体として想定される地域コミュニティの範囲とは必ずしも 一致していない。
これは、これまで旧町名の復活を実現させた金沢市及び長崎市 のいずれの町とも異なる、いわば仙台城下の町割りの特徴であり、仙台における 町名復活の大きな課題として予測されるところである。
また、歴史的町名の復活は、通常の住居表示と同様、「住居表示に関する法律」 に則して行うこととなるため、前述のとおり、かつての町の形と復活した町の形とが大きく異なる可能性もある。
このため、復活する町の形を定めるにあたっての留意点を検討したものである が、本委員会としては、城下町仙台の歴史と伝統を将来に伝えていくという目的に照らし、復活にあたっては仙台藩の特徴的な町割りの再現に十分配慮する必要 があるとしたところである。
具体的には、かつて実在した町の姿に可能な限り忠 実であることを原則とした上で、町の境界を明確にするために最低限必要な調整 を行うこととしている。
なお、かつて二つの町が交差していた区域については、いずれの町名を選ぶこ とも可能とし、復活する町の連続性を確保することも望まれるところである。
≪本頁下「仙台城下の町割りの特徴」参照≫
≪35 頁「資料Ⅵ・かつての町の形の例(北一番丁・北六番丁)」参照≫
⑥ 【町名の定め方】復活する場合の町名は、住居表示実施直前の町名とする こと
町名については一部、時代による変遷が見られることから、復活するにあたっ て、どの時代の町名とすることが望ましいかについて、特定の時代に限定することの要否も含めて検討を行ったものである。
その結果、住居表示直前(現在の住所の直前)に実在した町名については、町の範囲を明確に示すことができ、また、 その名称はほぼ藩政時代からのものであること、さらに、複数の町が復活した際に、面的な時代の統一性が確保できることから、これが、復活する場合の町名と して望ましいものとしたところである。
なお、復活する町名が、現在の町名と同一である場合も想定されるが、この場合には、住所の混乱を避けるために個別の対応を検討する必要があると考えると ころである。
≪29 頁「資料Ⅴ・旧城下の町名(住居表示実施直前の町名)一覧」参照≫
⑦ 【住居表示の方式】通りを中心としたかつての町の姿の再現に可能な限り 配慮すること
かつての町は、その多くが道路を中心とする両側町であり、町名はすなわち通り名でもあった。 国内における住居表示は、ほぼ「街区方式」により行われており、金沢市及び長崎市における旧町名復活も「街区方式」により実現しているところである。
しかしながら「街区方式」の場合、町の境界を道路や河川などの地形地物で明確に区切ることが原則となるため、復活する町の形がかつての姿から大幅に変わり、復 活を希望する住民の要望と復活後の町の形が大きく異なる可能性がある。
本委員会としては今後、市内いずれかの町において具体的に復活が検討される 段階においては、必要に応じ「道路方式」による住居表示の可能性を探るなど、可能な限りかつての町の姿に近い姿での復活に配慮する必要があるものと考えると ころである。
≪本頁下「住居表示の「街区方式」と「道路方式」」参照≫
≪13・14 頁「復活した町の事例1~4」参照≫
〔歴史的町名復活検討委員会報告書(平成21年1月)9-12頁から転記〕