【説明】

重役たちを襲撃、監禁、尋問せよ。どんづまり人生の一発逆転にかける失業者アラン、57歳。企業の人事部長だったアラン、57歳。リストラで職を追われ、失業4年目。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今はアルバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが人材派遣会社の社長じきじきに告げられた最終試験の内容は異様なものだった。-就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ。重役たちの危機管理能力と、採用候補者の力量の双方を同時に査定するというのだ。遂にバイトも失ったアランは試験に臨むことを決め、企業人としての経験と、人生どんづまりの仲間たちの協力も得て、就職先企業の徹底調査を開始した。そしてその日がやってきた。テロリストを演じる役者たちと他の就職希望者とともに、アランは重役室を襲撃する!だが、ここまでで物語はまだ3分の1。ぶっとんだアイデア、次々に発生する予想外のイベント。「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部構成に読者は翻弄される。残酷描写を封印したルメートルが知的たくらみとブラックな世界観で贈るノンストップ再就職サスペンス!

 

【読後感】

ルメートル作品らしさは、最後の結末にしっかりと仕組まれている。

主人公のアランは57歳失業して今はアルバイト暮らし。そんな彼の境遇はもともとは会社の人事部長と言う職にあり、十分に人生を謳歌してきたものであった。しかし失業者が職を手にすると言う甘い誘いに乗った時、悲劇が始まると言う内容だ。波乱の人生においてこの就職試験がうまくいくかどうか、筆者も転職した身として痛いほどわかる。結局仕組まれた就職試験は受かる見込みがないことがわかり、それを大きな仕掛けに変えていく賭けの大きさ、まさにうまくいくかどうか、これまでの経験をフルに活用して、家族を騙し、結果として大きなお金を手に入れる。でも結局は幸せを手に入れることができず、それは手の間からすり抜けてしまう。最も大事にしていた妻の愛を失い、娘の1人の愛も失い、喜び・幸せは何なんだろうと考えさせられる内容で終幕。幸せは決して金では買えないと言う、古くから言い古された内容のストーリーであった。最後の一文は、実は自分でもどうしようもないくらい、働きたくて仕方がない、と言うコメントだった。心に滲みる…