はじめまして 善人仮面 と申します。仮面と付けば弱きを助け強きをくじくヒーローと言うことになるのですが、悲しいかな実はまったく逆の話です。
世間的には、いわゆる いい人 いい親で、特別誰からも嫌われたりなんてなく、会社に勤め夜遅くまで働くことが家族のためと疑わなかったし、どこにでもある普通の家だと思っていた。
善人という仮面を被っていることを気付かせてくれたのは、実は娘です。
小学校までは明るく活発な子で、スポーツも万能どちらかと言えば優等生であり、親としては手のかからぬ物分りの良い子だった。ところが中学校時代、子どもの頃から仲の良かったともだちに裏切られ、嫌がらせを受けるようになり悩むようになった。
近所ということで小さい頃からいっしょに遊び、部活も同じということが、さらに悩みを深く大きくしたのだと思う。人間に対する不信感、クラスでの孤立、疎外感に苦しみわれわれ親に相談してきた。
じっと心に悩みを抱え深く考え込む娘を案じながらも、われわれ親ときたら何とかなるだろう、この子なら大丈夫という思い込みからか、相手が悪いんだしご近所でもあるしと、表面的な励ましで済ませてしまい、じっくり話を聞き娘の心の奥の痛みを分かって上げようとしなかった。
このときの親の対応のまずさ未熟さが、後の娘の人生に深く陰を落とし、問題をさらに大きくしてしまった原因である。
善人仮面は娘の窮地を救ってあげようとしなかったし、見放してしまったのだ。
ともだちからも家族からも見放され、だれも味方のいない極度の人間不信に陥ってしまった娘だが、そんななかでも私は親やみんなに心配をかける悪い子なんだろうかと思い悩むほど、周囲を気遣う優しい子である。
相変わらず親は、私の心の中に降りてきてくれない。そつなく近所付き合いをし、相変わらずいい人で通っている。自分が被っていることも分からぬドク親は、善人仮面を被ったままでいる。
その仮面をずっとずっと、善人仮面を娘は、どんなにか剥がしたかったに違いない。今になって娘の気持ちが痛いほど分かる。