手を伸ばせば、そこに居たのに。

さよならだけが、言えなかった。

どうしても放してあげられなかった。

哀しさだけ残るって、わかっていたのに。

守って欲しくなんて無かった。

優しさも気遣いもいらなかった。

只傍にいられたらそれで良かった。

君の隣には、あたしが居たかった。

裏切られても良かった。

愛じゃなくても良かった。

伸ばした手は、虚しく宙を切るだけで。

もう君には、届かない。

繋いでいた手は、いつか解けて。

隣に居たはずの君は、遠い所へ。

それが当たり前になってゆく日常が怖くて、また手を伸ばす。


だけど、そこはあたしの場所じゃないから。

アタシだけが、君への想い出を引き摺って。

それでも幸せだって笑うから。

君はどうか、幸せに。

さよならはいってあげられないけど。

放すことも出来ないけど。

それでもどうか、幸せに。

ごめんなさい。