「ん〜やっぱりざっと見たところは特に問題となる診察の所見もないし、検査結果もないですね。それってぼくは専門じゃないから詳しくないけど、脳脊髄液減少症みたいですね。調べてみてもいいかも。とりあえずこちらはこちらでこのまま検査を進めますね。」

診察した大学病院の神経内科の医師は記憶をたどりながらコメントをしてくれた。

 

 起き上がることができない。起きて、歩くと吐き気がして全身の力が抜ける。特に足の力が入らなくて千鳥足になる。柵を乗り越えられない。休むとまだ少しよくなるけど活動していればしているほど回復が悪くなる。仕事が終わると帰れるかどうかギリギリのところで倒れそうになりながら電車に乗る。そんなことが3週間ほど続いた。

 

 年明けに胃腸炎症状が出てからしばらくだましだまし仕事をしていた。熱もあり、近くの内科では胃腸炎でしょうと言われ薬をもらっていた。仕事は立ち仕事が30分以上続けられず、嘔吐を我慢しながらどうやっても2時間が限界だった。しかしそれも徐々に耐えられなくなる。試験もあるが日々の生活がやっとで準備する余裕はない。どんどんめまいと頭痛が増えてくる。手元が見づらいということが今年は非常に多い。老眼が始まったのかと思ったけど特に最近焦点をあわせるのがしんどくなった。頑張れば焦点は合う。よく考えてみると夏過ぎからときどきそんな状況を繰り返して早退していた。

 さすがに働きすぎってことはないだろうけど外出もままならなくなってきたので一応、心療内科に相談してみた。仕事のストレスがないかと言われると普通の労働条件とはかけ離れているのでないとは言えない気がする。精神的に辛い人をたくさん見てきた先生からするとそんなに動くのもままならないほど精神が病んでいる感じではないように思えるから体をしっかり調べてみたほうがいいんじゃないかと提案された。そんな予感は少ししていた。秋頃から両足のしびれが出たり感覚がなくなったり、力が入りにくかったり、足が出にくいような感じもあったなあと思いだした。

 どんなに具合が悪くても仕事はやってくる。当直の順番が来たのはすごくラッキーだったのかアンラッキーだったのか。電車ではなかなか座れず、降りたあと100mと歩けなかった。休み休みバス停まで行き、嘔吐をこらえてなんとか職場へ。まっすぐ歩けなくなり壁をつたいながら勤務をした。

 「いくらなんでも具合が悪すぎるからなんとかしたほうがいいのでは?」という心配の声があったので、とりあえずgoogle検索にワードを入れてざっと調べてみた。慢性疲労症候群が最もヒットした。チェックシートを埋めてみる。恐ろしいほどに基準点を大きく上回っている。何度やっても同じだった。

 

 うだうだしてもしょうがないので早退させてもらってそこそこ有名な医院に相談に行った。電車で座れない。倒れそうなのを我慢しながら何とか行き着くも最後の最後に急な階段。でもこれを登らないと解決の糸口はつかめない。気力をふりしぼって登ったら入り口で辛くて休まざるを得なかった。中に入ると結構有名なのに平日の午後だからか客は自分ひとりだった。いくつか簡単な検査をしてもらったところ

「慢性疲労で矛盾はないけど、あまりに症状がつらそうだからちゃんと精密検査もして、体に問題ないことを確認したほうが無難なんじゃないかな」

そう言われた。そして精密検査ができるように大学病院に紹介状を書いてくれた。症状が複雑で説明に困ったようで紹介状を書くのに2時間もかかった。その間座って待っていたが客は終わり際に一人しか来なくて本当に大丈夫なのだろうかと心配する余裕は少しあった。