Thread(BBC) 1984


もしもイギリスに核が落とされたらどうなるか、の世界線を描いた作品。映像は現実性が高く(そう感じるのは物語の後半がほぼ色のない世界だからかもしれない)、思いの外グロい。見たことのある写真がいくつか出てきたので、wwⅡのドイツ軍の写真や広島(主に原爆被害者)の写真がつかわれていると思われる。救いも無い。

 

主人公は遊び盛りの若い女性ルース。ジミーと付き合っていたが、妊娠がわかり結婚することに、同時にニュースではソ連がイランへ軍備を移動中だとかアメリカの潜水艦が行方不明だとかかなり不穏な話ばかりで…気がついた時にはもう落ちている。ルースの家族や治安維持のための軍、倒壊したビルの中に閉じ込められた司令部、連絡の取れない報道機関、彼らの未来はいかに?放射線が残留する中、暮らし産んだ子供の未来とは…?


ナレーターの「爆発後〜日」という表記と読み上げに合わせて断片的に人間の姿を経過観察する。単なるその時間での人間模様だけではなく、この事態が春先に起きたばかりに放射能で枯れ果て収穫が見込めず飢餓へと向かう姿や農薬の不足による翌年の害虫被害、病気(そこまで描写されない)、そしていわゆる核の冬が描かれている。子供を亡くした夫婦など、夫が死にかけの妻に水をせがまれて探しに行き、家の水道を捻ると水は出てきたが、おけに汲もうとした時に配水管に残っていた分が途絶えて、夫が泣き崩れるシーンなどはえもいわれぬ絶望感がある。
予想しうる展開ではあるが、最後に子供たちが毛糸のセーターやらを解き糸にして再び何かを織り上げる姿は、冒頭に蜘蛛が糸で巣を作る姿と対比されている。ギリシャ神話から導入された熟語にThreads of lifeというがあるが、これは人間の寿命やDNAのことを意味する。もしかしたら単なる糸だけではなくて、核で壊れたDNAもタイトルのThreadは含意しているのかもしれない。the day afterの方が有名かもしれないがこちらの方が随分とはっきりしたものを作り上げている。

 

考査の深夜に観て大層後悔した。