このブログの最初の書評をこの本で始められることに喜びを感じる。地図と合わせて漢詩を眺め、さらに声に出して、かつての時代の詩人たちに想いを馳せる。読み終えた後に漢詩が色づいて見える、そんな本だ。

 

 漢詩というとやはり国語が苦手な仲間内ではとっつきづらいと言う言葉が多いが、そんな彼らにお勧めしたいのがこの一冊である。漢詩の持つ細やかな情景を地図と合わせて想像する事で、とても贅沢な時間へと早変わりする。

 

 本作において、助動詞や日本では一般的に使わないもの表現は固有名詞を除き全てひらがなで表記されている。だが、熟語や漢文において使われる文字(旧字)の意味の解説は詳細に書いてあり、意味を汲み上げた上で読みたいというならば最適だろう。白文、読み下し文、ちょっとした作者の時代背景の他、現代語訳もそれなりに口語的な(意訳)気がしたが乗ってあり良い。本書の特徴として最大に評価すべき点はまず題材となった地や、読まれた地によって分類されているところだ。作中に掲載されているように、作者たちの漢詩と実際の土地が関連していることを感じられるものはなかなかない。中国旅行の際は片手に持ち歩きたいものだ。口当たりも良くなだらかな読み下し文である。参考書として使うことには躊躇すべきだしそもそもそのように読むべきものではないが、読むことで漢詩の持つ世界観をより広く理解することができることだろう。

 

 きっとあなたも中国旅行に行きたくなる。