八ツ場ダム、自治体負担金を返還へ 前原国交相が表明

http://www.asahi.com/politics/update/0919/TKY200909190333.html


「やんばだむ」と読むんだそうな。


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「ダムが要らない」という議論は、

今に始まったことでなく、

田中康夫衆議院議員は長野県知事だった時代から政治家として

発言していたし、(いわゆる「脱ダム宣言」)

またそもそも地元(特に、居住地域がダム湖に水没する人たち)から

の反対運動は、戦後本格的に日本全国にダムの建設計画が作られる

といたるところで起こって問題になった。


そういう紛争にフィクサーとして関わって、偉くなっていったやつすらいる。


wikipedia - 渡邉恒雄

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E9%82%89%E6%81%92%E9%9B%84





ダムは近年無駄遣いの象徴のようにみなされてきた。




ダムの機能は3つあって、

 ・治水

 ・利水

 ・発電(利水に含める場合もある。)

である。


治水はそもそも、そのダムの下流域で豪雨等による災害が発生し得ない

見込み・対策が立てられれば、目的からは失われる。


利水に関しては、単純に短期的な視点で水の必要量から、必要の有無

が議論されてしまうが、簡単に手に入るものではないだけに、将来的な

発展等を見据えておかなければならない。


最後に発電。水力発電はクリーンな再生可能エネルギーであり、コスト

や効率等を度外視すれば、優れて信頼性の厚い発電技術である。

問題は、発電地が使用地まで離れているため、送電ロスが大きいことで

これは、送電・蓄電技術のテクノロジーが進化すれば大きく効率を

改善できることであると思われる。


また、水力発電は、放水によって、発電時間を自由にコントロールすることが

できるため、原子力発電のように発電エネルギー量が昼夜を問わず、常に

一定な発電技術と揚水発電を組み合わせることで、大量に電力を必要とする

時間帯のために夜間で電力を蓄電するなどの仕組みにも応用できる。




日本はもともと小さな島国である割に、高い山脈を持ち、豊富な降水雪量に

よって、ダム建設に適した地形をいくつも持つ国だ。


実際そうした地形を活かして、黒部第四ダム・奥只見ダム・佐久間ダム・

早明浦ダムなど、治水・利水・発電のそれぞれの側面に活用するたくさん

のダムが作られた。




雲行きが変わったのは90年代頃からで、

 ・ダム建設による環境破壊

 ・莫大な建設工事費用

 ・確立していない保守、永続方法に関する懸念

 ・利水の不要

 ・発電技術の原子力への政策転換

 ・難航する水没地居住住民への立ち退き交渉

などによって、冒頭の八ツ場ダムや川辺川ダムなどの建設の雲行きが

怪しくなってきた。




しかし、治水一つとっても、ダムの果たす役割はとても大きいと私は

思っている。




私の実家から車で40分ほどの所に由良川という一級河川がある。

源流を京都府中部とし、河口は日本海側の舞鶴市と宮津市の

市境にあり若狭湾に流れ込む。


この川には、ダムが一つしかない。(大野ダムという。)


2004年10月、台風23号は、勢力を強めたまま四国に上陸後、

大阪府泉佐野市に再上陸し、関西地方を直撃した。



平成16年台風23号 - wikipedia より

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%88%9016%E5%B9%B4%E5%8F%B0%E9%A2%A8%E7%AC%AC23%E5%8F%B7

この台風により由良川は、下流域において、広範囲にわたって、

堤防が決壊し、あたり一面が水浸しとなった。


さらに悪状況が重なり、水没し、渋滞した国道175号線において、

停車中のバスが天井のみを水面に出した状態まで水に浸かる

事態となり、乗客37名が一夜をバスの天井の上で過ごす自体

に見舞われた。


この際、川の水位を大きく左右し、乗客の救出の成否に大きな

役割を果たしたのは、上流にあった大野ダムの治水機能と

その能力を見通した上での放水判断だった。

以下の新聞記事や行政のレポートを読むといかにダムの洪水

調節能力が重要なものであるかが良くわかる。


平成16年台風23号時の大野ダムの洪水調節
~由良川でバスが立ち往生~

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TPage/TP1402Bus.html


大野ダム洪水調節時における下流域の状況を考慮した操作による下流被害の軽減

http://www.wec.or.jp/center/kenshou/H16/pdf/H16oono.pdf



このことをもってしても、ダムが果たす治水機能の重要性が

いかに高いかがわかるだろうと思う。


そして、今問われているのは、100年に一度の大災害で死者数百名・

被害額数千億円の被害を出すことにお金を使うか、一年限りの

思いつきの政策のために、お金を使うかどちらにするのかという

選択肢なのだと思う。


河川の堤防を高くするなどの河川改修事業など治水目的に絞って

対策を行うよう方針転換するなど代替案はいくつかある。


由良川も父曰く「雨が降るたびに水に浸かっていた。。」というほど、

治水能力に欠けた河川でいずれにしても、河川改修は必要だ。



しかし、由良川は別として、100年に一度ですまないということを想定した

事業もすでに進捗し始めている。


その例が丸山ダムである。


丸山ダム - wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B8%E5%B1%B1%E3%83%80%E3%83%A0


丸山ダムは、治水・発電を目的としたダムだったが、1983年の台風により

治水能力を失い(ただし書き操作)が行われる事態に見舞われた。


※「ただし書き操作」とは、ダムへの水の流入が流出量を上回り、

 ダムの貯水量がダムの限界近くまで達したとき、ダムの放水流量を

 上げて、ダムの貯水量を下げる操作を言う。


 ダムの下流では、ダム上流と同じ流量の水が、流れ込むため、

 急激に河川の水量が増すことになり、堤防の決壊などの危険性

 が増す。



私は丸山ダムを観に行ったことがあるが、ダムの下流側には、それほど遠く

ない距離に集落が広がり、他方、ダム湖には、木曽川から流れ込む水が

面々と湛えられていて、地域の生活はダムの治水能力の安定なしには

考えられないのだと思い知らされた。


そして、すでに過去の事例により、「100年に一度ではすまない」

事態が想定されることになり、

それゆえ、現在、丸山ダムは日本でも最大規模のダムのかさ上げ工事

が行われ、事実上新しいダムが建設され、現丸山ダムは水没する予定

となっている。






すべてのダムが必要だとは思わないが、是々非々の判断は欲しい。

特に治水機能に重きを置いたダムには、人の命・暮らしがかかっている。


いつまで続くかわからないバラマキ政策のために、これまでの計画

を紙くずに捨てるようなまねはやめてもらいたいと思う。