1 A社による第1案及び第2案(以下合わせて「両案」という)の実施は、拘束条件付取引(一般指定12項、以下項数のみ記す)にあたり、独禁法(以下略)19条に違反しないか。
2(1)まず、A社は「事業者」(2条1項)であるから、19条の適用がある。
(2)A社と契約する宿泊施設は、A社が自社サイトのオンライン旅行予約サービスを供給する取引の相手方であるから、12項の「相手方」にあたる。
(3)同項の「拘束する」とは、取引条件が契約上の義務として定められている場合には、それで足りる。両案は、A社が、A社と契約する宿泊施設との間で契約条項として導入するものだから、当該施設に対し両案の内容を契約上の義務として定めるといえ、「拘束する」にあたる。
(4)よって、両案の実施は12項の行為要件をみたす。
3(1)同項の「不当に」とは、公正競争阻害性(2条9項6号柱書)の要件を表すが、拘束条件付取引の公正競争阻害性は、拘束の形態によって様々である。
両案は、A社と契約する宿泊施設がA社サイト上で提示する宿泊料金等を、当該施設自身のサイト上ないし他のOTAのサイト上で提示するもの以上に有利になるようにしなければならないとの内容であり、宿泊料金の競争回避による競争減殺ないし、宿泊施設自身のサイトやA社以外のOTAの市場からの排除という競争排除による競争減殺のおそれが生じうる。
このような競争減殺型の拘束条件付取引の公正競争阻害性は、①ブランド間競争の状況、②ブランド内競争の状況、③問題行為を行う事業者の市場における地位、④制限の実効性などの取引先事業者の事業活動に及ぼす影響、⑤対象となる取引先事業者の数・割合及び市場における地位を総合的に考慮して判断する。
(2)両案の実施につきこれらを検討するため、市場を画定する。市場は、当該行為が対象とする取引及びそれにより影響を受ける範囲について、需要者にとっての代替性も考慮しつつ画定される。
両案は、A社と契約する宿泊施設が、A社のサイトを通じてする宿泊役務の供給を対象とするが、A社が当該施設の宿泊について宿泊客に供給するオンライン旅行予約サービスが影響を受ける。そして、需要者たる宿泊客は、インターネットを通じてある宿泊施設を予約する際、有利な条件を求めてその施設自身のサイトや複数のOTAのサイトを探し回ると考えられるから、それらのサイトの供給する旅行予約サービスの間では、需要者にとっての代替性が認められる。
したがって、両案に係る市場として、国内の各宿泊施設の宿泊役務について、施設自身のサイト及びOTAのサイトがオンライン旅行予約サービスを宿泊客に供給する市場(以下「本件市場」)が画定される。
そこで、以下、本件市場における第1案及び第2案の実施の公正競争阻害性を検討する。
(3)第1案
まず、国内のそれぞれの宿泊施設はホテルや旅館など形態も様々であり、提供される部屋のグレードや宿泊料金も多種多様であって、ある者が支配的地位を有しているという事情もないことから、宿泊施設相互間のインターネットを通じた宿泊役務の提供というブランド間競争は、活発である(①)。
しかし、両案の実施前、ある宿泊施設が自身のサイトや各OTAのサイトで提示する宿泊条件等の間には、それほど大きな差がないと考えられるため、ブランド内価格競争はあっても小さい(②)。
そして、本件市場でA社は、35パーセントにオンライン予約サービスに占めるOTAの取扱高のシェア9割を乗じた約30パーセント超えのシェアを有する有力な事業者である(③)。
また、第1案は宿泊料金等の提示内容につき契約上の義務として定めるものであるから、制限の実効性は高く、宿泊施設の事業活動に及ぼす影響は大きい(④)。
さらに、前述のA社のシェアの高さ及び宿泊施設が通常複数のOTAと契約を結ぶことから、宿泊施設のうちA社と契約するものは相当大きな割合にのぼると考えられる(⑤)。
以上から、第1案は、本件市場においてA社以外のOTAや宿泊施設自身のサイト上で提示される宿泊料金が高く維持されるおそれがあるため、競争回避による競争減殺のおそれがある。また、これによりA社より不利な条件を示す他のOTAが宿泊客から予約を受けることが困難となるおそれがあるため、競争排除による競争減殺のおそれも認められる。
(4)第2案
次に、第2案は、第1案とは異なり他のOTAとの関係でA社のサイト上の宿泊条件等が有利であることを求めないものである。この場合、オンライン旅行予約で1割を占めるにすぎない宿泊施設自身のサイト上での宿泊条件等がA社より不利となるのみであるから、競争回避による競争減殺のおそれがあるとはいえず、従って競争排除による競争減殺のおそれも認められない。
(5)では、正当化事由の成立により第1案の公正競争阻害性が否定されないか。「公正且つ自由な競争を促進」する(法1条)等の正当な目的のための相当な手段と認められる場合には、正当化事由が成立し、公正競争阻害性が否定され「不当に」にあたらない。
まず、第1案によりA社のサイト上で低額な料金を競って提示することを通じて、A社と契約する宿泊施設相互間でのブランド間価格競争を促進する効果があるという考え方がありうるが、施設自身のサイトや各OTAのサイトの間で自由なブランド内価格競争が行われたのと同様の効果を生ずるものではない以上、競争促進という正当な目的があるとはいえず、正当化事由は成立しない。
また、第1案の目的として、問題文中イに示すような検索サービスへのただ乗り防止という目的も考えられ、これは各OTAが相当の費用を掛けてシステムを運用していることに照らし競争促進に資する正当な目的といいうるが、D社及びE社が検討するように、通常の手数料とは別に毎月サービス利用料を宿泊施設に払わせるというより制限的でない代替手段が存することから、第1案は手段として相当とはいえないため、正当化事由は成立しない。
(6)よって、第1案の実施は公正競争阻害性を有し、「不当に」をみたす。
4 以上より、第1案の実施は12項にあたり、19条に違反する。
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【反省点】
この問題は市場画定に尽きると思います。公正競争阻害性の判断要素である問題文①~⑤も、市場をうまく画定していないとあてはめがズレます。自分が書いた内容が正解だともあまり思えないので、正当化事由の部分だけでも稼げていればと…
【自己評価】A~B相当(2問合計)
経済法を通じ、第1問は明らかにカルテルの問題、第2問は問題文で法条まで挙がっており、適用法条をミスせず論証をはめこめばある程度守れるという以前の傾向とは異なり、事実認定にポイントがあったと思います。第2問で苦しんだ受験生がそれなりにいると思うのでBくらいはあってほしいです。
→【成績結果】58.89点