彼女は僕を自宅にむかえてくれると必ず手料理を振る舞ってくれた。

2回目のデート以降からは毎回そうしてくれた。

アスパラとキノコとベーコンが入ったパスタが好きだと言うと、オニオンスープまでつけてくれる。

「 はい、注文通りつくったよ〜 」

ただ一言で「 美味しい!」なんて、そこらへんのバカでも言えそうな感想は絶対にしない。

彼女が美味しいと喜んでもらいたくて作ったのだから、料理ど素人の僕でも気づいた事は精一杯に伝える必要がある。

ただでやらせてくれて料理も作ってくれて送り迎えまでしてくれるんだから、これくらい当然の事だ。

「 よく気づいてくれたね〜!嬉しい、いっぱい食べてね〜 」





家から電車で30分くらいの片田舎に彼女は住んでいた。

朝から工場で働くこども2人持ちのシングルマザー。

僕より5歳下の25歳だ。

ラインを交換し1週間近く連絡をとってから会う事になった。

最寄り駅から彼女の自宅までかなりの距離があるため、彼女は車で迎えにきてくれた。

初デートは夜中の0時を回った頃だった。

「 ごめん!待たせたよね...こども寝かしつけてて遅くなっちゃった 」

彼女は家に招いてくれると同時にこどもの寝顔を見に行って少しホッとしている様子。

「 煙草吸っていい?」

台所に腰を降ろしクールマイルドを吸う彼女は、ライヴ後のバンドマンの様。

「 銀髪ショートめっちゃ似合うね 」

彼女が少し照れて笑うたび、耳からぶら下がったピアスも揺れる。

彼女の耳には右と左に3つずつピアスがあった。

「 あっ、お風呂はいる?」

まだ自分の煙草も吸い終えぬうちに僕を気遣ってくれた。

アプリのプロフィールより可愛くてスタイルも良かった。

あってもB、あってもB、と僕は呪文の様に繰り返した。

胸なし子持ちのビハインドを背負いながらも60点台後半をマークか、よかろう。

「 あっ、俺風呂は入ってきたから大丈夫!ありがとね 」

ジム通いで鍛えられた健康的な細いカラダを見て、しばらくは飽きないだろうと思った。

「 コーヒー淹れてあげるね、ブラックでいい?」

こどもたちが寝静まる隣の寝室に向かった。

こだわりのある薫りの強いそのコーヒーより、いつも飲むセブンコーヒーの方が美味しいと思った。

布団が一枚敷かれてあったが先にコタツに足を入れ、彼女の隣に近寄った。

すると彼女は間髪入れずに、「 距離感だいじー、距離感だいじだよ?」と言って、僕から離れた。

この攻防戦は彼女を含めて何回目なんだろうと思った。

役者2人が台本通りに会話を進めている様な感覚だ。

布団は1つしか用意されてないし、入ってしまえば十中八九こっちのもん。





最中に彼女がこんな事を言った。

「 あたし、ゴムがカラダに合わなくて...」

まさに都合の良いカラダをしてやがる、と思った。

朝までほぼ眠らずに何回戦続いたかもう覚えていない。

それからと言うもの結構な頻度で彼女と会う様になった。

別の日の話だが、こどもが起きてくる朝方にやるのは危険度が高かった。

「 ◯◯くん、しっしー?(おしっこ)すぐ行くから我慢してまってて〜 」

彼女は布団の中でスッポンポンだと言うのに、冷静にこどもへ声をかける。

こういう状況には慣れているんだろうと思った。

こっちの方は全く慣れていないので、バレないよう何回も布団の中に隠れていた記憶がある。

ある時はこどもたちと皆んなで鍋パーティもした。

カニが好きだというと蟹を取り寄せてくれた。

カニカマで飯を一杯いける性分としては、涙が出るほどその蟹が美味しく感じたものだ。

「 あんもう下手くそ、剥いてあげる 」

でかいこどもが一人増えたと言って、彼女は笑った。

彼女を一言で説明すると、責任感が強くてお世話好きの負けず嫌い。

休みの日でしかも大雨だと言うのに、職場へ出向いていくこともあった。

少しの間、こどもと3人で留守番も任されることも。

部屋を見て行くと至るところに彼女らしい工夫がされてあった。

すべて手作業で組み立てたタンスやテーブルなどの各角には、すべて透明なラバー製のカバーが付けられてあった。

こどもがジュースをこぼしたりおしっこをしてもいいようにと、各部屋すべてにパズルマットも敷かれてあった。

職場の工場から工具を持ち帰っては夜な夜なD.I.Yにも励むのだそうだ。

そんなある日、彼女がこんなことを言った。

「 私のママ友とか友達とこの家でパーティーするから紹介したいし来てよ 」

僕は大勢の人と戯れるのが苦手だと言って断ると彼女は少し寂しい顔をした。

「 だってさ、なんか◯◯くんは他の人とは違うから、、、もっと仲良くなりたいし 」

正直、他の人とは混じりたくないのでめんどくさいと思った。

この辺りから彼女から僕へのアプローチは加速していく。

僕が友達と遊んでいる時でも電話やラインでもっと構って欲しいとせがまれたりもした。

彼女との遊び予定をキャンセルし少しの期間が空いて久しぶりに家に行くと、僕専用のパジャマも用意されてあった。

確かこの日の帰り道だ。

彼女とのラインが最期だった。

" いろいろご馳走さま!楽しかった!また遊びいくから "

こんな風に僕からラインを送ると彼女から意外な返しがあった。

" ねぇ◯◯くんにとって私って何? "

どんな難解な問題より難しく感じた。

僕はこれに既読をつけたまま、しばらく返信ができなかったのだ。

1日、1週間、1ヶ月が経ってようやく返信をした。

" ごめん、なんて返していいかわからなくて何にも言えなかった "

これに彼女から既読がつく日などやってこなかった。

あれからもうすぐ約一年が経とうとしている。

冬に入る手前の少し寒い時期。

確か11月だったかな。

一言、" 遊び相手として完璧だった "

これが言えなかったのだ。

今思えば彼女とのラストは不甲斐なく男として情けがない。

あの日の返信ひとつでまた未来が変わっていたのかもしれない。

現在、彼女のタイムラインには新しいパートナーとの写真がたくさん投稿されてある。

複雑な心境ではあるけれど、僕は少しホッとした。

でも、彼女には感謝もしている。

良しも悪しも、彼女がきっかけで今の僕が出来ている部分もあるからだ。

"人"という字は人と人が背中で支え合って生きているなんて誰が最初に言いだしたのだろう。

背を向き合い、個が別々の正しい道に前を向いているではないか。





先日、ブスな女と遊んだ。

この翌日に僕からラインを送った。

" 思ったよりタイプじゃなかった、ごめん!ブロックしていいよー!"

これも正しい答えなのだ。







裏アカオフ会、変わった性癖?呟いて三千里、目指すは東の大東京!?旅の道中でまさかの釣り上げ大成功!ツイッターガール、現る。

次号、「 そのアカ、落とします 」