甘いワナ
自分には無い物を求め合う。なんて言うけれど俺にはイマイチ意味が判らない。
だって今までそーゆー関係になったおんなのこたちは皆俺と同じ感覚の目線で、似た様な事を考えてたし。
俺もそーゆー子がスキだった。
それが当たり前だった。
だから今自分の陥っているこの状態がなんなのか?と問われても俺には答える術が無い。
だってこんなの初めてだから。
いくらなんでも冗談キツ過ぎだろ。
思わずつきたくも無いため息を漏らす。今日これで何度目だろうか。
何でよりによって丈瑠なんだ―――?
がしがしと頭を抱え込んで、あーっと唸った。
己に欠如した物を求め合うのが男女の常です。と爺に切々と説かれたがハッキリ言ってどうでもいい。
爺は事或る事に。
「志葉家存続の為‥」
というお題目を掲げ、どこから連れて来たのか俺におんなを当てがって来る。
しかしおんなに手を出した事は1度も無い。
俺のこの呪われた人生に巻き込みたくは無いからだ。
こんな時代錯誤の人生は俺ひとりで充分だ。
ああ。それなのにまた4人も巻き込んでしまった。
谷千明――。特にこいつは巻き込んではいけなかった。
侍として生きて行く上の覚悟がまるで無い。
俺とまるで真逆の人生を送って来た奴。
こんな奴は外道衆の前では赤子も同然だ。
逃がしてやりたいと思ったが何に対してのプライドなのかどうしても食らい着いて来て離れない。
その手を離してくれ―――。
切実にそう願った。
「黒子さんたちのお役に立たねば!!ひいては殿の為!!」
とまた暑苦しい事を叫びながら流ノ介が黒子たちと一緒に買い物に出かけて行った。
うるせえな。フツーに出かけろよ。と思う。
「だったらあたしたちもショッピングしない?ことはもこっちのお店覗きたいでしょ?」
と茉子がことはを連れ出して行く。
勿論俺にお声が掛かるなんて事は無く、ひとり部屋で彦馬の爺さんに出された宿題を大人しくこなしていた。
いつもならこんな事はなからバカバカしいとやりもしないのだが。
なんだか何かしていないと余計な事ばかりを考えてしまうので調度よかったのだ。
ただ黙々と目の前の書を書き写していく。
余計な事は考えない。考えない‥。あ。今ちょっと考えちまった。
「あいつらはどうした?」
突然後ろから声を掛けられて心臓が跳ね上がる。
「―――丈瑠‥っ!」
「爺を知らないか?」
「し知らねえー‥何で俺に聞くんだよ。あんたの家臣だろ」
「見掛けないからてっきりお前に説教でもしているのかと思ってな。あいつらもいないのか」
瞬間かちんとスイッチが入り、余所見していた顔を真直ぐに丈瑠に向ける。
「あいつらとか。もちっと言い方考えれば?俺たちだって名前はあるんだぜ。お殿サマよお」
丈瑠の黒い瞳が真直ぐに俺を見返す。
その黒い瞳の中に綺麗な星を見つける。
思わず魅入っていると。
「―――千明」
と突然名前を呼ばれ、はっとする。
「‥お、おう」
ふっと丈瑠の顔が一瞬微笑んだ。
瞬間心臓がまたどきりと跳ねる。
待て待て待て。こんなんに騙されるな。こいつは男だ。しかもあの丈瑠なんだ。だからこんな感情間違ってる。うん。違う。はい終り。
丈瑠がスキだとか―――。
「あー!!もう‥っ!!!」
と泣き叫んで机に突っ伏した。
丈瑠はきっと変なヤツだという目で俺を見てるだろう。
だがそんな事もうどうでもいい。叫ばずにはいられ無いのだ。
「――辛いのか」
多分関係ねえ事で聞いてんだろうと思うが丈瑠が語り掛けて来る。
「うるせえ‥」
「帰りたくは無いのか。自分の世界へ――」
「――は?」
少し顔を上げてみた。丈瑠の顔は見えない。
「千明は帰った方がいい。元の世界へ‥」
ぐりんと一瞬で身体を丈瑠に向ける。
丈瑠の瞳には相変わらず星が見えていて綺麗だ。
「何だって?」
「折角普通に暮らして来たんだろう。帰れる場所があるなら。帰るべきだ。帰れるうちに‥」
「あんた何言ってんの?」
「こんな人生は俺だけで充分だ」
そう言うとそれきり瞳を逸してしまう。
何だよそれ。何でそんな事今さら言えるんだよ。
「‥ざけんなよ」
そんな泣きそうな顔して――。
「だったらそんな甘い考え捨てて。すぐにでも外道衆たちぶっつぶせる様なやり方考えろよ」
「千明は判って無い外道衆との闘いがどうゆう物なのか。本当の意味を」
「ああ。判んねえな。がっかりだよ。あんたがそんな事言うなんて」
俯いてしまった丈瑠の瞳の星も見えなくなった。
スッと立ち上がり丈瑠の前に立つ。
「言っとくけど俺は自分で納得してシンケンジャーやってんだよ。誰に言われたからでもねえ。自分で選んだんだ!!」
「‥‥」
「今度そんな事言ったら殿だろうが何だろうがぶっ飛ばすからな」
「‥ぶっ飛ばす」
「おうよ。ボッコボコにしてやんよ」
「それは、怖いな‥」
ふっとまた丈瑠が微笑む。
その笑顔のあどけなさにまた胸が跳ね上がる。
慌てて丈瑠から離れ様としたら。
「ずっと共に或ると誓えるか‥?」
とまた泣きそうな顔で俺に聞いて来る。
その瞳にまた星を見つけて魅入ってしまう。
もう逃げられ無い。
「‥ああ。誓える。――誓います。殿」
つい、いつもの調子でするりと頬を撫ぜた。
そのまま、つ‥と顎に手を置く。
丈瑠は動かない。
ぐっと顔を丈瑠に近付ける。
丈瑠の瞳の星が瞬いて眼が離せない。
口唇まであと何cm。
「殿おおーーーっ!!!」
がくりと身体を崩す。流ノ介だ。
「殿ーー!!買い物に行って参りましたー!!どちらにー!!?」
完璧にムードを壊されどうでもよくなった俺は丈瑠から手を離し。
「ホラ‥流ノ介呼んでんぞ‥」
と促すと丈瑠は。
「あ。ああ‥そうだな‥」
と逃げる様に部屋を出て行った。
ん?何か今おかしくなかったか?
と丈瑠の後ろ姿を見つめる。
「もしかして‥照れちゃった、とか‥?」
俄然自分が優位に立った気がしてうれしくなる。
可愛いとこもあんじゃねえか。
とひとりニヤニヤする。
ハマっているのはあいつなのか自分なのか。
自分には無い物を求め合う。まるで運命の様に。
その運命に今は身を任せようと考える俺だった。
だって今までそーゆー関係になったおんなのこたちは皆俺と同じ感覚の目線で、似た様な事を考えてたし。
俺もそーゆー子がスキだった。
それが当たり前だった。
だから今自分の陥っているこの状態がなんなのか?と問われても俺には答える術が無い。
だってこんなの初めてだから。
いくらなんでも冗談キツ過ぎだろ。
思わずつきたくも無いため息を漏らす。今日これで何度目だろうか。
何でよりによって丈瑠なんだ―――?
がしがしと頭を抱え込んで、あーっと唸った。
己に欠如した物を求め合うのが男女の常です。と爺に切々と説かれたがハッキリ言ってどうでもいい。
爺は事或る事に。
「志葉家存続の為‥」
というお題目を掲げ、どこから連れて来たのか俺におんなを当てがって来る。
しかしおんなに手を出した事は1度も無い。
俺のこの呪われた人生に巻き込みたくは無いからだ。
こんな時代錯誤の人生は俺ひとりで充分だ。
ああ。それなのにまた4人も巻き込んでしまった。
谷千明――。特にこいつは巻き込んではいけなかった。
侍として生きて行く上の覚悟がまるで無い。
俺とまるで真逆の人生を送って来た奴。
こんな奴は外道衆の前では赤子も同然だ。
逃がしてやりたいと思ったが何に対してのプライドなのかどうしても食らい着いて来て離れない。
その手を離してくれ―――。
切実にそう願った。
「黒子さんたちのお役に立たねば!!ひいては殿の為!!」
とまた暑苦しい事を叫びながら流ノ介が黒子たちと一緒に買い物に出かけて行った。
うるせえな。フツーに出かけろよ。と思う。
「だったらあたしたちもショッピングしない?ことはもこっちのお店覗きたいでしょ?」
と茉子がことはを連れ出して行く。
勿論俺にお声が掛かるなんて事は無く、ひとり部屋で彦馬の爺さんに出された宿題を大人しくこなしていた。
いつもならこんな事はなからバカバカしいとやりもしないのだが。
なんだか何かしていないと余計な事ばかりを考えてしまうので調度よかったのだ。
ただ黙々と目の前の書を書き写していく。
余計な事は考えない。考えない‥。あ。今ちょっと考えちまった。
「あいつらはどうした?」
突然後ろから声を掛けられて心臓が跳ね上がる。
「―――丈瑠‥っ!」
「爺を知らないか?」
「し知らねえー‥何で俺に聞くんだよ。あんたの家臣だろ」
「見掛けないからてっきりお前に説教でもしているのかと思ってな。あいつらもいないのか」
瞬間かちんとスイッチが入り、余所見していた顔を真直ぐに丈瑠に向ける。
「あいつらとか。もちっと言い方考えれば?俺たちだって名前はあるんだぜ。お殿サマよお」
丈瑠の黒い瞳が真直ぐに俺を見返す。
その黒い瞳の中に綺麗な星を見つける。
思わず魅入っていると。
「―――千明」
と突然名前を呼ばれ、はっとする。
「‥お、おう」
ふっと丈瑠の顔が一瞬微笑んだ。
瞬間心臓がまたどきりと跳ねる。
待て待て待て。こんなんに騙されるな。こいつは男だ。しかもあの丈瑠なんだ。だからこんな感情間違ってる。うん。違う。はい終り。
丈瑠がスキだとか―――。
「あー!!もう‥っ!!!」
と泣き叫んで机に突っ伏した。
丈瑠はきっと変なヤツだという目で俺を見てるだろう。
だがそんな事もうどうでもいい。叫ばずにはいられ無いのだ。
「――辛いのか」
多分関係ねえ事で聞いてんだろうと思うが丈瑠が語り掛けて来る。
「うるせえ‥」
「帰りたくは無いのか。自分の世界へ――」
「――は?」
少し顔を上げてみた。丈瑠の顔は見えない。
「千明は帰った方がいい。元の世界へ‥」
ぐりんと一瞬で身体を丈瑠に向ける。
丈瑠の瞳には相変わらず星が見えていて綺麗だ。
「何だって?」
「折角普通に暮らして来たんだろう。帰れる場所があるなら。帰るべきだ。帰れるうちに‥」
「あんた何言ってんの?」
「こんな人生は俺だけで充分だ」
そう言うとそれきり瞳を逸してしまう。
何だよそれ。何でそんな事今さら言えるんだよ。
「‥ざけんなよ」
そんな泣きそうな顔して――。
「だったらそんな甘い考え捨てて。すぐにでも外道衆たちぶっつぶせる様なやり方考えろよ」
「千明は判って無い外道衆との闘いがどうゆう物なのか。本当の意味を」
「ああ。判んねえな。がっかりだよ。あんたがそんな事言うなんて」
俯いてしまった丈瑠の瞳の星も見えなくなった。
スッと立ち上がり丈瑠の前に立つ。
「言っとくけど俺は自分で納得してシンケンジャーやってんだよ。誰に言われたからでもねえ。自分で選んだんだ!!」
「‥‥」
「今度そんな事言ったら殿だろうが何だろうがぶっ飛ばすからな」
「‥ぶっ飛ばす」
「おうよ。ボッコボコにしてやんよ」
「それは、怖いな‥」
ふっとまた丈瑠が微笑む。
その笑顔のあどけなさにまた胸が跳ね上がる。
慌てて丈瑠から離れ様としたら。
「ずっと共に或ると誓えるか‥?」
とまた泣きそうな顔で俺に聞いて来る。
その瞳にまた星を見つけて魅入ってしまう。
もう逃げられ無い。
「‥ああ。誓える。――誓います。殿」
つい、いつもの調子でするりと頬を撫ぜた。
そのまま、つ‥と顎に手を置く。
丈瑠は動かない。
ぐっと顔を丈瑠に近付ける。
丈瑠の瞳の星が瞬いて眼が離せない。
口唇まであと何cm。
「殿おおーーーっ!!!」
がくりと身体を崩す。流ノ介だ。
「殿ーー!!買い物に行って参りましたー!!どちらにー!!?」
完璧にムードを壊されどうでもよくなった俺は丈瑠から手を離し。
「ホラ‥流ノ介呼んでんぞ‥」
と促すと丈瑠は。
「あ。ああ‥そうだな‥」
と逃げる様に部屋を出て行った。
ん?何か今おかしくなかったか?
と丈瑠の後ろ姿を見つめる。
「もしかして‥照れちゃった、とか‥?」
俄然自分が優位に立った気がしてうれしくなる。
可愛いとこもあんじゃねえか。
とひとりニヤニヤする。
ハマっているのはあいつなのか自分なのか。
自分には無い物を求め合う。まるで運命の様に。
その運命に今は身を任せようと考える俺だった。