「よろしくお願いします。」
初めての、依頼主との打ち合わせ。
深呼吸をする。
始まってみると、思っていたよりも落ち着いて話をすることができた。
空回りするわけにはいかない。
私たちは、あくまで依頼する側の希望に沿うように仕事をすることが目標。
我を出しすぎると、怪訝な顔を向けられることはもう経験して痛いほどわかった。
それから、話し合いは続いて、気づくと夕方になっていた。
ここまではうまく行っている。
そして、説明を求められ、立とうとした時。
目の前が真っ暗になった。
言葉の通り、部屋の電気が消え、光が見えなくなる。
黒に包まれ、音もない。
『......停電か?』
『おい、データ無事か』
そんな声がパラパラと聞こえる。
足の力が抜けて、椅子にストン、と腰が落ちる。
頭の中が真っ白になる。
なんて説明しようとしたんだっけ。
今目を閉じたら、だめだ。
直感でそう感じた。
早く終われ。
数秒後、復旧したのか、部屋の明かりが戻っていく。
よかったよかった、という安堵の雰囲気が流れる中で、私は1人で呆然と座っていた。
「.....〇〇さん?説明を、」
『え、と、』
やばい。早く言わなきゃ。
不審がる目線であふれた重い空気が漂い始める。
そう思うのに、立てない。
どうしよう。
隣で、ガタッと音がした。
見上げると、僕が説明します、と相葉くんがこっちを向く。
「....あ、お願いします.....」
何も言えず戸惑う私を置いて、相葉くんはすらすらと説明をしている。
私の言いたいことがほとんどそのまま伝わっていく。
そして、ありがとうございました、という声とともに打ち合わせが終了した。
『.....先輩!あの、大丈夫ですか!』
「ごめん。本当にごめん。」
『いいんです、しかもあんまりうまく言えなくて....
それより、大丈夫ですか?
体調とか....
停電、いきなりでしたよね、』
申し訳なさとまだ少し残った怖さで息が苦しくなる。
『おーい、相葉。ちょっと。』
『あ、はい!....先輩、すみません、僕ちょっと....』
「大丈夫、大丈夫だから、行きな」
やっと落ち着いてきた頭で、どうにか笑顔を作る。
『ちゃんと!ちゃんと休むんですよ!!』
大きな声で言い残して、相葉くんがスタスタと部屋から出ていく。
肩の力が、一気に抜ける。
どっと襲ってくる疲れに、瞼がずっしりと重くなる。
今日は早く帰ろう。