なぜ、強い刺激をやめられなくなるのか―いわゆる「ドーパミン中毒」を中国医学で考える

フーフーです。スマートフォンを閉じたはずなのに、また開いてしまう。SNSを見ても満足せず、次の動画、次の投稿へと指が動く。ゲームやギャンブルでも、もう十分と思いながら、もう一回だけと続けてしまう。

最近では、このような状態を「ドーパミン中毒」と呼ぶことがあります。
ただし、医学的にはドーパミンそのものに中毒になるという意味ではありません。強い刺激や報酬を繰り返し経験することで、その刺激をさらに求めやすくなる状態を分かりやすく表現した言葉です。
中国医学では、ここを別の角度から見てみます。人の身体では、気血が全身を巡っています。特に大切なのが、外へ気を広げる宣発です。呼吸によって口や鼻から気を出す。皮膚から汗や熱を外へ逃がす。身体を動かして手足の末端まで気血を巡らせる。このようにして、身体は内側に生まれた余分な気や熱を外へ逃がしています。
ところが、長時間椅子に座り、ほとんど身体を動かさず、スマートフォンやゲーム画面を見続けているとどうなるでしょう。まず下半身が動きません。足まで気血が巡りにくくなります。さらに外気が冷たかったり、冷房で皮膚が冷えていたりすると、皮膚からの宣発も弱くなります。本来なら手足や皮膚へ分散していた気が、身体の中へ残りやすくなるのです。そこへスマートフォンやゲームなどから、次々に新しい情報が入ってきます。
目は動き続けます。
頭は判断を続けます。
次は何が出てくるのか。
もっと面白いものはないか。
勝つか負けるか。
通知が来ていないか。
こうして気血が目と頭へ集中します。
つまり中医学で見ると、いわゆる「ドーパミン中毒」と呼ばれる状態の一部は、全身へ巡るはずの気が、目と頭に集中し続けている状態として考えることができます。
身体全体で使うはずだったエネルギーを、頭だけで大量に使っているのです。これを、身体に蓄えられた気の「放電」のように考えることがあります。身体を動かせば、その気は筋肉や手足へ流れます。
汗をかけば、熱は皮膚から外へ逃げます。
深く呼吸すれば、肺の宣発によって外へ出すことができます。
ところが、それらの出口が少ない。すると余った気は、別の出口を探します。そこで目と脳を使います。
次々に動画を見る。
ゲームに没頭する。
ギャンブルで強い刺激を求める。
速い車や激しいスポーツなど、強い興奮を求める。
刺激が強ければ強いほど、一気に気を動かすことができます。
瞬間的には、とても気持ちがよいのです。だからまた同じ刺激が欲しくなります。しかし問題は、頭と目ばかりに気を集中させていることです。上半身は興奮しているのに、足はほとんど動いていない。頭には気血が集まっているのに、手足の末端には十分に巡っていない。
この上下の偏りが長く続けば、頭が熱い、眠れない、目が疲れる、首肩が張る、足が冷える、むくむといった状態につながることがあります。
長時間同じ姿勢を続ければ、手足のしびれを感じることもあります。ただし、しびれが続く場合には神経や血管など別の原因も考えられるため、医療機関で確認することが大切です。
よく「ゾーンに入る」という言葉もあります。何かに極端に集中して、周囲の音も時間も分からなくなるような状態です。これも中国医学的に見ると、気が一つの場所へ非常に強く集中している状態として考えることができます。ゾーンそのものが悪いわけではありません。スポーツや創作、仕事では大きな力になります。問題は、そこから気を全身へ戻せなくなることです。集中したら、巡らせる。頭を使ったら、足を使う。目を使ったら、遠くを見る。座ったら、立つ。興奮したら、呼吸を深くする。これが大切です。
スマートフォンをやめることだけが養生ではありません。身体にたまった気を、スマートフォン以外の方法でも外へ流せる身体を作ることです。
歩く。
軽く汗をかく。
湯船につかる。
手足を動かす。
太陽の下へ出る。
深く呼吸する。
こうしたことをすると、頭と目に集中していた気が再び全身へ分散していきます。
すると「もっと刺激が欲しい」という感覚そのものが弱くなることがあります。
まとめは、いわゆるドーパミン中毒を中国医学で考える時、脳だけの問題として見ません。長時間の着座や冷えによって皮膚や手足への気血の流れが弱くなり、外へ宣発できなかった気が目や頭へ集中する。そこで強い刺激によって気を動かし、放電するような状態を繰り返すうちに、さらに強い刺激を求めるようになると考えます。大切なのは刺激を力ずくで我慢することではなく、頭に偏った気をもう一度、手足、皮膚、呼吸、全身へ戻してあげることなのです。










