つれづれ養生訓 ~ 神戸から中医学の健康の知恵のお届け ~

つれづれ養生訓 ~ 神戸から中医学の健康の知恵のお届け ~

健康であるためには、自然であることが一番です。
そのためにいろいろ試されたりしていると思います。
そのひとつに中国医学の智慧をお届けします。
中国医学は、素晴らしい医学です。その中の生活に密接した部分の智慧をお届けします。

なぜ、強い刺激をやめられなくなるのか―いわゆる「ドーパミン中毒」を中国医学で考える

フーフーです。スマートフォンを閉じたはずなのに、また開いてしまう。SNSを見ても満足せず、次の動画、次の投稿へと指が動く。ゲームやギャンブルでも、もう十分と思いながら、もう一回だけと続けてしまう。

最近では、このような状態を「ドーパミン中毒」と呼ぶことがあります。

ただし、医学的にはドーパミンそのものに中毒になるという意味ではありません。強い刺激や報酬を繰り返し経験することで、その刺激をさらに求めやすくなる状態を分かりやすく表現した言葉です。
中国医学では、ここを別の角度から見てみます。人の身体では、気血が全身を巡っています。特に大切なのが、外へ気を広げる宣発です。呼吸によって口や鼻から気を出す。皮膚から汗や熱を外へ逃がす。身体を動かして手足の末端まで気血を巡らせる。このようにして、身体は内側に生まれた余分な気や熱を外へ逃がしています。

ところが、長時間椅子に座り、ほとんど身体を動かさず、スマートフォンやゲーム画面を見続けているとどうなるでしょう。まず下半身が動きません。足まで気血が巡りにくくなります。さらに外気が冷たかったり、冷房で皮膚が冷えていたりすると、皮膚からの宣発も弱くなります。本来なら手足や皮膚へ分散していた気が、身体の中へ残りやすくなるのです。そこへスマートフォンやゲームなどから、次々に新しい情報が入ってきます。
目は動き続けます。
頭は判断を続けます。
次は何が出てくるのか。
もっと面白いものはないか。
勝つか負けるか。
通知が来ていないか。
こうして気血が目と頭へ集中します。

つまり中医学で見ると、いわゆる「ドーパミン中毒」と呼ばれる状態の一部は、全身へ巡るはずの気が、目と頭に集中し続けている状態として考えることができます。

身体全体で使うはずだったエネルギーを、頭だけで大量に使っているのです。これを、身体に蓄えられた気の「放電」のように考えることがあります。身体を動かせば、その気は筋肉や手足へ流れます。
汗をかけば、熱は皮膚から外へ逃げます。
深く呼吸すれば、肺の宣発によって外へ出すことができます。
ところが、それらの出口が少ない。すると余った気は、別の出口を探します。そこで目と脳を使います。
次々に動画を見る。
ゲームに没頭する。
ギャンブルで強い刺激を求める。
速い車や激しいスポーツなど、強い興奮を求める。
刺激が強ければ強いほど、一気に気を動かすことができます。

瞬間的には、とても気持ちがよいのです。だからまた同じ刺激が欲しくなります。しかし問題は、頭と目ばかりに気を集中させていることです。上半身は興奮しているのに、足はほとんど動いていない。頭には気血が集まっているのに、手足の末端には十分に巡っていない。

この上下の偏りが長く続けば、頭が熱い、眠れない、目が疲れる、首肩が張る、足が冷える、むくむといった状態につながることがあります。

長時間同じ姿勢を続ければ、手足のしびれを感じることもあります。ただし、しびれが続く場合には神経や血管など別の原因も考えられるため、医療機関で確認することが大切です。

よく「ゾーンに入る」という言葉もあります。何かに極端に集中して、周囲の音も時間も分からなくなるような状態です。これも中国医学的に見ると、気が一つの場所へ非常に強く集中している状態として考えることができます。ゾーンそのものが悪いわけではありません。スポーツや創作、仕事では大きな力になります。問題は、そこから気を全身へ戻せなくなることです。集中したら、巡らせる。頭を使ったら、足を使う。目を使ったら、遠くを見る。座ったら、立つ。興奮したら、呼吸を深くする。これが大切です。

スマートフォンをやめることだけが養生ではありません。身体にたまった気を、スマートフォン以外の方法でも外へ流せる身体を作ることです。

歩く。
軽く汗をかく。
湯船につかる。
手足を動かす。
太陽の下へ出る。
深く呼吸する。

こうしたことをすると、頭と目に集中していた気が再び全身へ分散していきます。
すると「もっと刺激が欲しい」という感覚そのものが弱くなることがあります。

まとめは、いわゆるドーパミン中毒を中国医学で考える時、脳だけの問題として見ません。長時間の着座や冷えによって皮膚や手足への気血の流れが弱くなり、外へ宣発できなかった気が目や頭へ集中する。そこで強い刺激によって気を動かし、放電するような状態を繰り返すうちに、さらに強い刺激を求めるようになると考えます。大切なのは刺激を力ずくで我慢することではなく、頭に偏った気をもう一度、手足、皮膚、呼吸、全身へ戻してあげることなのです。

なぜ、強迫症状は「やめたいのに、やめられない」のか

フーフーです。戸締まりを確認したのに、また確認したくなる。手を洗ったのに、まだ汚れている気がする。同じことを何度も考え、「もうやめたい」と思っているのに、頭から離れない。強迫症状では、なぜ自分でも必要がないと分かっている行動や思考を繰り返してしまうのでしょう。

精神医学では、強迫症状には、繰り返し浮かんでくる強迫観念と、それによる不安を和らげるために確認や手洗いなどを繰り返す強迫行為があります。日常生活に大きな支障が出る場合には、強迫症として専門的な治療が必要になります。
そのうえで、中医心理学では、この状態を「心が弱いから」「考え方がおかしいから」とは考えません。
まず、気の流れが同じところを何度も回っている状態として見ます。
人の気は本来、昇る、降りる、外へ出る、内へ入るという昇降出入を繰り返しています。
・何かを考えた。
・判断した。
・行動した。
・そして終わった。
本来なら気もそこで次の方向へ移ります。
ところが強迫症状では、ここに「終われない」という現象が起こります。

確認したのに、まだ気がそこに残っている。
手を洗ったのに、安心するところまで気が降りない。
頭では「大丈夫」と判断していても、身体の気がその判断についてこないのです。
ここには脾の「思」の働きが深く関係します。
脾は食べ物を消化して、必要なものを選び、気血へ変え、全身へ運ぶ臓です。
思考にも似た働きがあります。
・入ってきた情報を整理する。
・必要なものと不要なものを分ける。
・そして処理が終われば、次へ送る。
ところが脾の運化が弱ると、情報もその場に残りやすくなります。
「本当に大丈夫かな」
「もう一度確認した方がいいのでは」
「もし間違っていたらどうしよう」
という思考が、消化されずに何度も戻ってきます。

つまり「思」が多いというより、思考を終わらせて次へ送る力が弱くなっているのです。

さらに心も関係します。
心は神志を司り、身体全体の情報を集めて判断するリーダーです。
心が安定していれば、「確認した。大丈夫」と判断したあと、その指令を全身へ伝えることができます。ところが睡眠不足や気血不足、強い緊張が続くと、心は判断していても、その判断に身体が安心できなくなることがあります。

そこで再確認します。
一度確認すると少し安心します。しかし根本の気の流れは変わっていないため、しばらくするとまた不安になります。
・確認する。・安心する。・また不安になる。
この繰り返しが、気の流れとして固定されていきます。

中医心理学では「地」の心の方向も見ます。
失敗したくない。間違えたくない。失いたくない。安全を確保しておきたい。
この意識が強くなると、気は内側へ集まりやすくなります。
特に「失うことを避けたい」という方向が強くなれば、何度も確認し、確実な状態を作ろうとします。しかし、世の中には完全な確実というものはありません。そこで心はいつまでたっても終了の合図を出せず、同じところを回り続けます。ここに身体の状態が重なると、さらに症状は強くなります。
気血が不足している。
眠れていない。
胃腸が弱っている。
頭に気が集まり過ぎている。
身体を動かさず、気を外へ逃がせていない。
こうした状態では、心の判断に使える余裕が少なくなり、一つの考えから離れにくくなります。
だから養生では、無理に「考えないようにする」ことだけを目標にしません。
まず睡眠を整え、脾胃から気血を作れる状態にすること。
歩いたり手足を動かしたりして、頭に集まった気を全身へ分散させること。
入浴などで身体を緩め、皮膚を開いて気を外へ巡らせること。
香りを使うなら、柑橘類のように停滞した気を巡らせる香りや、その人の状態によっては白檀のように上に集まった気を下へ落ち着かせる香りも考えられます。
ただし強迫症状が強く、生活や仕事、学校、人間関係に支障が出ている場合には、養生だけで何とかしようとせず、精神科や心療内科などで適切な治療を受けることが大切です。認知行動療法や薬物療法など、効果が確立している治療があります。

まとめは、強迫症状を中医心理学で見る時、「考えすぎる性格」とは考えません。脾が情報を処理しきれず、心が終了の合図を身体へ十分に伝えられず、気が同じ場所を何度も巡っている状態として考えます。大切なのは、思考を力で止めることではなく、気血を作り、巡らせ、心が「もう終わった」と判断できる身体の土台を整えることなのです。

 

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シェーグレン症候群を中国医学ではどう考えるのか

フーフーです。口が乾く。目が乾く。水を飲んでも、目薬を使っても、また乾いてしまう。シェーグレン症候群では、なぜ身体の潤いが失われていくのでしょう。

シェーグレン症候群は、免疫の働きによって涙腺や唾液腺などに炎症が起こり、涙や唾液が少なくなる自己免疫疾患です。
中国医学で考える時も、まずこの病気そのものをきちんと理解することが大切です。

そのうえで、「乾いているから水分を補えばよい」とは考えません。

なぜなら身体の潤いは、単に身体の中に水があるだけでは作れないからです。中国医学には津液という考え方があります。飲んだ水や食べ物に含まれる水分は、脾胃で受け取られ、身体が利用できる津液となり、必要な場所へ運ばれます。
その津液が目へ届けば目を潤し、口へ届けば口腔を潤し、皮膚へ届けば皮膚を潤します。
つまり大切なのは、水分の「量」だけではなく、作ること、運ぶこと、必要な場所へ届けることなのです。

シェーグレン症候群では、この津液の流れのどこに問題があるのかを考えていきます。

一つは熱です。
炎症が続いている場所には熱が生まれます。
熱が強くなれば、その場所にある津液は消耗します。鍋を火にかけ続ければ、中の水が少しずつ減っていくのと似ています。特に目や口の周囲に熱が集中すれば、その部分の津液が失われ、乾燥が強くなります。しかし、ここで重要なのは、その熱がどこから来たのかです。

肝の疏泄が強くなり、気血と熱を上へ押し上げているのかもしれません。
脾胃に湿熱があり、その熱が上へ昇っているのかもしれません。
肺の宣発が弱く、本来外へ逃がすべき熱を身体の中に閉じ込めていることも考えられます。
また、腎陰虚によって身体を冷まし潤す力が不足し、内熱が生じている場合もあります。
同じ「乾燥」でも、原因は一つではありません。

もう一つ考えたいのが、津液を作る側の問題です。脾胃が弱れば、飲んだ水を身体が使える津液へ十分に変えることができません。水をたくさん飲んでいるのに口が乾く。
身体にはむくみがあるのに目は乾く。一見すると矛盾しているようですが、中国医学では十分に起こり得る状態です。

水はある。
しかし、必要な津液になっていない。
あるいは津液になっていても、必要な場所まで運べていないのです。

さらに血も重要です。
目や口腔などの組織は、津液だけではなく血によっても養われています。身体のどこかで炎症や修復が続けば、そこへ血が集まります。すると別の場所を養う血が相対的に不足し、乾燥がさらに目立つことがあります。

この状態を見ていくと、陰虚だけでは説明できない人もいることが分かります。
湿が多いのに乾いている。
身体はむくんでいるのに口は乾いている。
舌には苔があるのに目は乾燥する。

こういう人に、単純に潤すものばかりを加えると、かえって湿を増やして脾胃の働きを邪魔することがあります。
だから中国医学では、「乾燥しているから陰虚」とすぐに決めません。

津液は作れているのか。
きちんと運べているのか。
熱によって消耗していないか。
湿が流れを塞いでいないか。
血は組織を十分に養えているか。
そして肺の宣発、脾胃の運化、肝の疏泄、腎の潤下などがどのように関係しているのか。

身体全体から乾燥の理由を探していきます。
養生でも、水をたくさん飲めばよいとは限りません。

脾胃が処理できる量を少しずつ摂り、食事から津液を作れる身体を保つこと。身体に熱がこもっているなら、その熱がどこから生まれているのかを考えること。適度に身体を動かして気血津液を巡らせることも大切です。

シェーグレン症候群は全身に影響する自己免疫疾患です。強い目の痛みや視力の変化、著しい口腔乾燥などがある場合を含め、自己判断だけで対応せず、眼科、歯科、膠原病・リウマチを診る医療機関などで適切な管理を受けることが重要です。

まとめは、シェーグレン症候群の乾燥を中国医学で考える時、「水が足りない」という一言では終わりません。津液を作れないのか、運べないのか、熱によって失っているのか、湿によって流れが塞がれているのか、それとも血による組織の栄養まで不足しているのか。乾いている場所だけを見るのではなく、「なぜ、そこまで潤いを届けられなくなったのか」を身体全体から考える。それが中国医学でシェーグレン症候群を見る時の大切な視点なのです。
 

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パーキンソン病を中国医学ではどう考えるのか

フーフーです。パーキンソン病というと、手が震える病気というイメージがあります。でも、どうして手が震れたり、身体が動かしにくくなったりするのでしょう。

まず現代医学では、パーキンソン病は脳内のドパミンを作る神経細胞が減少することで、動作が遅くなる、手足が震える、筋肉がこわばる、姿勢を保ちにくくなるなどの症状が現れる神経変性疾患として考えられています。中国医学でも、こうした現代医学の診断を否定するものではありません。

そのうえで、もう一つ考えます。
なぜ、この人の身体では「震える」「固まる」「動き出せない」という現象が起きているのでしょう。パーキンソン病を考える時、まず「動かす力」と「動かされる身体」の両方を見ます。
身体を動かすためには気が必要です。
しかし、気がたくさんあれば身体が動くわけではありません。
気血が筋肉や関節、手足の末端まできちんと届き、経絡が通り、身体の各部分が連携して初めて滑らかな動きになります。

例えば、ホースに水を流しているところを想像してください。
ホースが柔らかく、途中に詰まりがなければ、水は先端まで滑らかに流れます。
ところが途中が硬くなったり、狭くなったりすると、水はスムーズに流れません。
強く押せば流れる。
止めると止まる。
また押す。
この不安定な動きが繰り返されます。

パーキンソン病にみられる震えも、中国医学では、このような気血の流れの不安定さから考えることができます。
震えるということは、気がないというより、気を一定方向へ安定して流し続けられない状態です。

流そうとする。
しかし通りにくい。
もう一度力を加える。
また止まる。

この小さな動きが繰り返されれば、外からは震えとして見えることがあります。
一方、身体が固まる、動き始めるまで時間がかかるという症状では、経絡や筋肉の通りにくさを考えます。
特に年齢を重ねると、気血津液の量や性質も変化します。
血が十分に筋肉を養えなければ、筋は柔軟に動きにくくなります。津液が適切に巡らなければ、身体を潤滑に動かす働きも弱くなります。反対に湿が停滞し過ぎれば、身体は重くなります。そこへ冷えが加われば、さらに固まりやすくなります。

パーキンソン病を単純に「肝風」だけで説明するのではなく、気血津液がどこまで届いているのか、どこで停滞しているのか、筋肉や関節がどの程度柔らかさを保っているのかまで見ていくことが大切だと考えています。
そしてもう一つ重要なのが足です。
身体を動かす時、頭から命令を出すだけでは歩けません。
足が地面を感じ、身体を支え、その情報を受けながら次の動作へつなげています。

ところが足が冷え、むくみ、気血が不足してくると、この上下の連携が弱くなります。
頭には動かそうとする力があるのに、下半身がすぐについてこない。
一歩目が出にくい。
方向転換が難しい。
身体の重心を移すのに時間がかかる。
こうした症状を見る時にも、頭だけではなく全身の気血の配分を考える必要があります。

養生では、無理に大きく身体を動かすことよりも、その人が安全にできる範囲で、毎日少しずつ身体を動かすことが大切です。
手足を温める。関節をゆっくり動かす。筋肉を固めたままにしない。食事と睡眠を整えて気血を作る。そして湿や冷えを停滞させない。

まとめは、パーキンソン病を中国医学で考える時、震えだけを見て「風」と決めるのではありません。気血津液は十分なのか、それを末端まで運べているのか、湿や冷えによって経絡や筋肉が固まっていないか、頭と足の気血の配分がうまく連携しているのか。一つの症状ではなく、「身体が滑らかに動くための仕組み全体」を見ることが大切なのです。
 

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薬をずっと飲んでいる。それは「治った」と同じなの?

フーフーです。血圧の薬を何年も飲んでいて、血圧はずっと正常です。それなら高血圧は治ったということでしょうか。

ここは、少し考えてみたいところです。例えば、水道管から水が漏れているとします。そこを手でギュッと押さえたら、水は止まりました。
「よかった。水道管が直った!」
とは言いませんよね。
手を離したら、また水が漏れるからです。

薬にも、これと似た役割を担っている場合があります。
例えば高血圧の薬には、血管を広げたり、余分な水分や塩分の排出を促したり、心臓や血管に関係する仕組みに働きかけたりして、血圧を適切な範囲に保つものがあります。これは非常に大切な治療です。血圧を適切に管理することで、脳卒中や心臓、血管などへの負担を減らすことにつながります。
ですから、薬を飲むことが悪いという話ではありません。自己判断で薬を減らしたり、中止したりしてはいけません。
ただし、「数値が下がっていること」と「血圧が上がった身体の原因そのものがなくなったこと」は、同じではありません。
ここを中国医学では、とても大切に考えます。
中国医学では、「なぜ、この人の血圧は上がらなければならなかったのか」を考えます。例えば血が粘り、流れにくくなっているとします。身体は、それでも頭や手足、臓腑まで血を届けなければなりません。そこで心が血圧を上げ、血を押し出そうとしているのかもしれません。この場合、血圧の上昇は単なる故障ではなく、身体が全身へ血を届けようとして行っている調整とも考えられます。また、身体に余分な津液が停滞している人もいます。脾胃の働きが弱く、食べたものや水分をうまく運化できない。
汗をかけず、余分な津液を外へ出せない。
腎や膀胱からの排出もうまくいかない。
そうして身体の中に余分なものが増えれば、気血の流れにも負担がかかります。
反対に、血が不足している人もいます。

必要な血を臓腑や頭まで届けるために、身体がより強い力で循環させようとしている可能性も考えます。
さらに肝の疏泄が強くなり、気血を上へ押し上げている人。
身体に熱が多く、その熱によって気血の動きが過剰になっている人。
冷えによって末端の流れが悪くなり、中心部に気血が集まっている人。
同じ「血圧が高い」という数字でも、中国医学から見ると身体の状態は一人ひとり違います。

ここに「標」と「本」の考え方があります。
高い血圧という現象を安全に管理することは、とても大切です。しかし同時に、その血圧を上げなければ身体を維持できなかった理由、つまり「本」を探していくことも大切なのです。
食べ過ぎていないか。
甘いものや脂っこいものが多くないか。
身体を動かしているか。
汗をかけているか。
睡眠は十分か。
足は冷えていないか。
便や尿はきちんと出ているか。
気血津液は全身を巡っているか。
こうした身体全体の状態を一つずつ整えていきます。

薬で数値を管理しながら、生活や養生によって身体そのものも整えていく。
私は、この二つを対立させる必要はないと思っています。西洋医学には、危険な状態を管理し、病気による重大な合併症を防ぐ大切な役割があります。中国医学には、その人がなぜその状態になったのかを、気血津液や五臓、食事、睡眠、運動、生活環境まで含めて考える得意分野があります。

まとめは、薬を飲んで数値が安定していることと、病気の原因そのものがなくなったことは必ずしも同じではありません。水道管から漏れる水を押さえることも大切ですが、なぜ水が漏れたのかを調べ、水道管そのものを整える視点も必要です。薬を自己判断でやめるのではなく、必要な治療を続けながら、自分の身体がなぜその薬を必要としているのかを考える。それが養生の始まりなのです。
 

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なぜ、怖いと腰が抜けるのか

フーフーです。ものすごく怖い思いをした時、「腰が抜けた」「足に力が入らない」ということがあります。本当に人間の身体は、怖いだけで立てなくなるのでしょうか。

中国医学では、恐れという感情は腎と深く関係すると考えます。

よく「恐則気下」といいます。恐れると気が下がるという意味です。

ただし本当は、単純に「気が下がったから腰が抜ける」とは考えません。その時に身体の中で、気がどのように動いたのかを考えていきます。

腎には、身体の水分や気を下へ導く働きがあります。

これを潤下として考えます。

普段はこの働きによって、上半身と下半身の気血津液のバランスが保たれています。

ところが突然、大きな恐怖を感じたとします。

身体は一瞬で緊張します。

そして恐れによって気が急激に下へ向かいます。

ゆっくり降りるのではありません。一気に下へ押し込まれるような状態です。

すると腎が本来行っている穏やかな潤下の働きが乱れ、下半身に気が集まり過ぎてしまいます。

怖くて身体が動かない。

足が固まる。

その場から逃げたいのに、一歩が出ない。

これは気が下へ集まり、固まってしまっている状態として考えることができます。

ところが恐怖の瞬間が過ぎます。

「ああ、助かった」

そう思った途端、身体の緊張が緩みます。

ここで、もう一度大きな変化が起こります。

下に固まっていた気が、一気に解放されるのです。

気は上へ昇り、胸や頭の方へ戻ろうとします。

すると今度は、下半身が空っぽになります。

足を支えていた気がなくなる。

腰を支えていた気も不足する。

その結果、膝から崩れるように座り込んだり、腰に力が入らなくなったりします。

これが「腰が抜ける」という現象です。

面白いのは、恐怖を感じている真っ最中よりも、恐怖から解放された直後に力が抜けることがある点です。

怖い間は、まだ身体が必死に自分を支えています。

しかし「もう大丈夫」と心が判断した瞬間、張り詰めていた気が緩みます。

そこで初めて、下半身の気の不足が表面に現れるのです。

びっくりした後に手足が震えるのも、同じように気の急激な変化として考えることができます。

つまり恐怖とは、単なる心の問題ではありません。

恐れによって気が下がり、固まり、その後に上へ戻る。

わずかな時間の中で、身体では非常に大きな気の昇降が起こっているのです。

だから中国医学では、心と身体を別々には考えません。

感情が動けば、気が動きます。

気が動けば、血や津液も動きます。

そして、その変化が身体の症状として現れます。

まとめは、怖い時に腰が抜けるのは、単に「びっくりしたから」ではありません。恐れによって気が急激に下がり、腎の潤下の働きが乱れて下で固まり、緊張が解けた瞬間にその気が一気に上へ戻る。すると下半身を支える気が空っぽになり、腰や足に力が入らなくなるのです。「恐則気下」という言葉の中には、感情によって身体の気が大きく動くという、中国医学ならではの人間観が隠されているのですよ。

飛蚊症は、目だけの問題なのか

フーフーです。目の前に小さな黒い点や糸くずのようなものが浮かんで見える。目を動かすと、それも一緒についてくる。これが飛蚊症です。

飛蚊症というと、どうしても目だけの問題だと思ってしまいます。もちろん、まず大切なのは目そのものを調べることです。
飛蚊症には加齢などに伴うものもありますが、網膜裂孔、網膜剥離、硝子体出血、ぶどう膜炎など、早く治療した方がよい病気が隠れている場合があります。特に突然たくさんの黒い点が見えるようになった、光が走るように見える、視野の一部が欠ける、急に見えにくくなったという場合には、養生より先に眼科で診てもらうことが大切です。

そのうえで中国医学では、もう一つ先を考えます。
目の中で出血や炎症が起きているとしても、「なぜ、その人の身体ではそれが起きたのだろう」と考えるのです。
例えば、身体に熱が多すぎる場合があります。
熱には気血を強く動かす性質があります。
心火が強ければ、心が司る血脈の流れが過剰になります。
肝火が強ければ、肝の疏泄によって気血が上へ強く押し上げられます。目は肝との関係が深いため、その影響も受けやすくなります。
脾胃に湿熱がたまっている場合には、食べ過ぎや甘いもの、脂っこいものなどによって生まれた湿と熱が気血の流れを邪魔しながら上へ影響します。
肺に熱がこもっている場合もあります。肺の宣発がうまくできなければ、本来外へ逃がしたい熱を体内に残してしまいます。
また、腎陰虚から生じる内熱も考えます。

身体を冷まし、潤し、落ち着かせる側の力が不足すると、相対的に熱が強くなります。この熱が上へ昇れば、目にも影響する可能性があります。
つまり、同じように目に熱や出血の問題が現れていても、その熱がどこから生まれたのかは人によって違うのです。

反対に、熱が強すぎるのではなく、身体の力が弱いために出血することもあります。
代表的なのが脾虚です。脾には統血という働きがあります。血を必要な場所に保ち、むやみに脈外へ漏れないようにする働きです。脾が弱って統血できなくなれば、血を留める力そのものが弱くなります。
肺虚も考えられます。肺の宣発が弱くなれば気を体表まで十分に巡らせることができません。すると熱を外へ逃がせず、内側に停滞させることがあります。
心が弱って血脈を十分に管理できない状態も、血の流れを不安定にする一因として考えることができます。
さらに湿が多い身体では、津液が余分に停滞して気血の流れを邪魔します。
湿によって気の働きが弱くなれば、固摂する力も低下します。血を本来あるべき場所に留めにくくなるという見方もできます。

ここが中国医学の面白いところです。
飛蚊症という一つの症状を見ても、全員に同じ治療をするわけではありません。
・熱があふれているのか。
・熱を外へ出せないのか。
・血を留める力が弱いのか。
・湿が流れを邪魔しているのか。
・陰が不足して内熱が生まれているのか。

目に現れた「標」を確認しながら、身体全体のどこに「本」があるのかを探します。
ですから養生も、その人によって違います。
熱が強い人に、さらに身体を温める養生をすれば合わないことがあります。
反対に虚が中心の人に、熱を取ろうとして冷やし続ければ、気血をさらに弱らせる可能性があります。

大切なのは、「飛蚊症にはこれを食べればよい」と決めることではなく、自分の気血津液と五臓の状態を見ながら、なぜ目に症状が現れたのかを考えることです。
まとめは、飛蚊症は目に現れる症状ですが、中国医学では目だけを見て終わりません。心火、肝火、脾胃湿熱、腎陰虚、肺熱のように熱が原因になることもあれば、脾虚による不統血、肺虚、心虚、湿による固摂力の低下など、虚から血の問題が生じることもあります。まず眼科で目に危険な病気がないことを確認し、そのうえで「なぜ、この目に、この変化が起きたのか」を全身から考える。それが中国医学で飛蚊症を見る時の大切な視点なのです。
 

 

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今中 健二

症状の場所と原因の場所は違う

フーフーです。肩がこったら肩を揉む。頭が痛ければ頭を冷やす。咳が出れば肺が悪いと思う。普通はそう考えますよね。

中国医学では、痛いところ、つらいところが、必ずしも原因の場所とは限りません。
中国医学には「標」と「本」という考え方があります。
標とは、今、表面に現れている症状です。
肩こり、頭痛、咳、便秘、腰痛など、本人が困っている症状はまず標として考えます。
一方の本とは、その症状を生み出している奥の原因です。

例えば肩こりです。
肩がこっているのだから肩の血行が悪い。もちろんそれも間違いではありません。
しかし、なぜ肩の血行が悪くなったのでしょう。
食べ過ぎて胃に食べ物が停滞すると、消化のために気血が胃へ集まります。すると首肩へ向かう気血の流れが悪くなり、肩が重くなることがあります。
この場合、肩こりが標で、胃の食滞が本です。
いくら肩を揉んでも、毎晩たくさん食べていれば、また肩はこってきます。
肝の疏泄が悪くなり、気がうまく流れなくなって肩に停滞する場合もあります。
身体に湿が多く、肩周辺に津液が停滞して重くなる人もいます。
血虚によって筋肉を十分に養えず、肩の筋肉が疲労している人もいます。
瘀血があれば、同じ場所に頑固な痛みが続くこともあります。
同じ「肩こり」という標でも、本はまったく違うのです。

咳も同じです。
咳が出れば肺だけを考えたくなります。
しかし胃に食べ物が停滞し、気が下へ降りなくなって上へ逆流すれば、それが肺の粛降を邪魔して咳になることがあります。
身体の中に熱がこもり、肺が宣発によって外へ出そうとして咳をしていることもあります。
この場合、肺は病気の原因というより、身体の乱れを外へ知らせている場所なのです。
頭痛も頭だけの問題とは限りません。
足が冷えて気血が上半身へ偏っているのかもしれません。
胃に食べ物が停滞し、熱が上へ昇っているのかもしれません。
湿が気の流れを邪魔し、頭に湿熱が集まっているのかもしれません。
血が不足して頭を十分に養えず、痛みが出ている場合もあります。
だから中国医学の治療では、「どこが痛いですか」だけでは終わりません。
なぜそこに症状が出たのか。
その前に何を食べたのか。
身体は冷えていないか。
汗は出ているか。
眠れているか。
便や尿はどうなのか。
気血津液はどこに集まり、どこで不足し、どこで流れが止まっているのか。
身体全体を見ながら、本を探していきます。

もちろん標を治すことも大切です。
痛ければ痛みを楽にする。咳がつらければ咳を和らげる。
しかし標だけを追い続けていると、本が残っているため、同じ症状を繰り返すことがあります。これは川の下流にゴミが流れてきた時に、下流で毎日ゴミを拾い続けるようなものです。なぜゴミが流れてくるのかを上流まで見に行かなければ、いつまでたってもゴミはなくなりません。
養生も同じです。
肩がこったから肩を揉むだけではなく、「今日は食べ過ぎていなかったかな」。
頭が重いから頭だけを気にするのではなく、「足が冷えていないかな」「湿がたまっていないかな」。
自分の身体を少し広い範囲から眺めてみることです。

まとめは、症状が出ている場所は、身体が問題を知らせている場所であって、必ずしも原因がある場所ではありません。中国医学では、表に現れた標を見ながら、その奥にある本を探します。症状を消すだけではなく、なぜその症状を身体が出さなければならなかったのかを考える。それが、本当の意味で身体を整えていく中国医学の面白さなのです。
 

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検査で異常なし。でも体がつらい。中国医学は何を見るのか

フーフーです。健康診断では「異常ありません」と言われたのに、なんとなく身体がだるい。眠りが浅い。食欲が安定しない。気分が重い。そんな経験はありませんか。

病院では異常がないと言われると、「気のせいかな」と思ってしまう人も少なくありません。しかし中国医学では、このような状態こそ大切に考えます。
黄帝内経には「上工は未病を治す」という言葉があります。
一般には「病気になる前に治しましょう」という意味で知られていますが、私はもっと深い意味があると考えています。
未病とは、病気がまだ存在しないという意味ではありません。
気血の流れが乱れ始め、これから病という形になろうとしている状態を見つけることです。

身体は突然病気になるわけではありません。
最初は気の流れが少し変わります。
次に睡眠や食欲、気分、舌の色や苔などに小さな変化が現れます。
さらにその状態が続くことで、臓腑の働きが乱れ、やがて検査でも分かる病気へと進んでいきます。

つまり、中国医学が見ているのは「病気」ではなく、「病気へ向かう流れ」なのです。

ここで私は、未病を治す医師には三つの段階があります。
まず「工」の医師です。
身体の不調はあるのに、病院では異常が見つからない。
眠れない。疲れが取れない。胃の調子が悪い。肩が重い。
このような未病の段階で身体を整えられる医師です。
これは中国医学を学ぶ者として、身につけておきたい基本の力でしょう。

次は「賢」の医師です。
賢の医師は、目の前の症状だけを見ません。
五行や五臓の理論を使って、その先に起こる変化まで考えます。
例えば、木の気が強くなり、肝の働きが過剰になっている人がいたとします。
今はまだ高血圧にもなっていないかもしれません。
しかし木剋土の関係から考えれば、次は脾胃へ負担が及ぶ可能性があります。
そこで脾胃が弱ってから治療するのではなく、まだ元気なうちから脾を整え、病気の芽を摘んでいきます。
これは目の前の病気ではなく、理論から未来を読む医学です。

さらに上には「神」の医師がいます。
神の医師は、人だけを見ているのではありません。
天の動き、星の巡り、干支、季節の変化、自然界の五行の盛衰まで含めて身体を考えます。
今年は木の気が強い年だから、肝が乱れやすい。
これから水の力が弱くなるから、腎を補っておこう。
自然界そのものを診察し、人の身体へ起こる変化を先に読み取り、まだ何も起こっていない五臓を整えていくのです。
これは占いではありません。
人も自然界の一部であるという中国医学の考え方から生まれた、最も大きな視点の医学です。
この三つの医師は優劣ではなく、見ている世界の広さの違いです。
目の前の不調を治すことも大切です。

 

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理論から未来を予測することも大切です。
そして自然界の流れの中で人を診ることも、中国医学が何千年も受け継いできた大切な知恵なのです。

まとめは、「上工治未病」とは、単に病気を早く見つけることではありません。気血のわずかな偏りを読み、五行の変化を考え、さらには自然界の流れまで含めて未来の乱れを整えていくことです。病気を治す医学から、病気をつくらない医学へ。それこそが、中国医学が目指してきた本来の養生なのです。

熱中症対策は、水分だけではありません

フーフーです。夏になると、「熱中症対策をしましょう」という言葉をよく耳にします。

水を飲むこと、塩分を補給すること、暑い場所を避けること。どれも大切です。
でも、中国医学から見ると、それだけでは十分とはいえません。実は熱中症は、身体の中の気血の状態によっても起こりやすさが変わるのです。
気が熱邪へ変わりやすい身体ほど、熱中症のリスクは高くなると考えます。
では、どのような身体が熱をため込みやすいのでしょうか。
一つは、血が粘りやすくなっている状態です。
食べ過ぎや糖質の摂り過ぎ、脂質の摂り過ぎなどが続くと、身体の中では気血の流れが悪くなります。流れが悪くなると、熱はその場にとどまりやすくなります。
本来なら汗や皮膚の宣発によって外へ逃げる熱が、身体の中へこもってしまいます。
この状態で炎天下にいると、身体はさらに熱をため込み、熱中症へ近づいていきます。
そのため夏は、糖質や脂質、砂糖などを摂り過ぎないことも大切です。特に食べ過ぎは、胃腸へ気血を集中させるため、身体全体の熱の巡りを悪くしてしまいます。

しかし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。
「血液はサラサラの方がいい」と考えて、極端に糖質や脂質を減らし過ぎることです。
血液が薄くなり過ぎると、今度は血球が十分に頭まで届きにくくなります。
すると、立ちくらみがする。力が入らない。ぼんやりする。
低血糖のような状態になることがあります。
これは身体に必要なエネルギーまで不足してしまった状態です。つまり、熱中症対策は「減らせば良い」という単純な話ではありません。気血が濃すぎても流れが悪くなり、薄すぎても全身を養えなくなります。大切なのは、その中間です。
身体が気持ちよく汗をかき、気血が滞ることなく全身を巡っている状態を目指すことです。
そのためには、食べ過ぎないこと。
糖質や脂質を摂り過ぎないこと。
しかし必要な栄養まで減らさないこと。
そして適度に身体を動かし、汗をかける身体をつくることです。

まとめは、熱中症は暑さだけで起こるものではありません。身体の中の気血が熱をため込みやすい状態になると、その危険性はさらに高まります。反対に、極端な食事制限で気血を薄くし過ぎても、身体は十分に働けなくなります。大切なのは、自分の身体に合った気血のバランスを保つこと。それが夏を元気に過ごす、一番の養生なのですよ。
 

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