風俗嬢恋物語② | 風俗嬢あいりの日常

風俗嬢恋物語②

ちょうど一週間後。



夕方、仕事が終わった頃にケータイが鳴った。



「いつものバーに集合!」



友達からの誘いのメール。



行くべきか、いかざるべきか。



私は迷っていた。



彼の姿を見てから一週間。



私の心の中で全く葛藤がないわけではなかった。



今ならまだ引き返せる、というより、今ならまだ、なにも始まってはいない。



でも。



あの笑顔を、もう一度、一目でいいから見たかった。



言葉は交わせないかもしれないけれど。



ただ会いたかった。



確信はないけれど、又あそこに行けば会えるかもしれない。



「了解で~す」



結局、この日も出かけることに決めた。



いつものように友達と合流し、次のバーへ流れた。



ドアの前に立つと、ビリヤードの球が弾ける音がもれてきた。



扉を開ける。



そこに彼は。



居た。



ビリヤード台のすぐ傍。



やんちゃな笑顔で、コロナビールの瓶を口にくわえ、自分の順番が来るのを待っている様子。



又、会えた。



心の中でガッツポーズ。



私と友達はコロナビールを買ってから、この日はビリヤード台の奥のソファー席が空いていたので、そこに座る事にした。



そのソファー席からはビリヤード台は見えない。



でも。



彼と同じ空間に一緒に居ることができるだけで、私は嬉しかった。



ほどなくして。



外国人男友達二人が私と友達を見つけ、話し掛けてきた。



一人は私とテーブルを挟んで向かいに座り、もう一人は私の真横に座った。



どれくらい時間が経っただろうか。



終電もあるし、そろそろ帰ろうかと思っていた矢先。



ビリヤードの彼が。



私の方へ向かって歩いてくるではないか。



私は呼吸するのを忘れた。



「Hi!」



彼が微笑みかけたのは。



私の隣に座っていた男友達。



そして。



すかさず彼は。



男友達と私の間の、少しだけ空いていたスペースに、腰掛けたのだった。



ビリヤードの彼が私のすぐ横に。



心臓の鼓動が早くなりすぎて、止まるかと思った。



テーブルを挟んで向かいの男友達とも、何やら親しげに喋っている。



「もしかして、この二人はビリヤードの彼と¨お友達¨なのか???」



私は、ビリヤードの彼の隣で。



余りに突然やってきたこの状況に。



ずっと下を向いたまま、固まっていた。



顔をあげる事が出来なかった。



とにかく緊張していた。



苦しくてどうにかなりそうだった。



たまらずに、コロナビールの瓶を握り締めていた。



その一方で、冷静に。



横目で、彼の左手の指輪だけを見つめていた。



この前は遠目からしか見えなかった薬指の指輪。



ファッションリングであると思いたかった。



でも。



彼の指に他に指輪は見当たらない。



やはりマリッジリングだと確信した。