
普通に誰も彼も『隠しごと』というものはありますよね
無い方がおかしい

よく、女の人は『隠しごとはしないで』っていうけど
普通に隠さないで話すと、逆に怒るし…

それだったら、隠しますよね…

『ねぇ、今度の春分の日って何か予定あった?』
と夕飯の後片付けをしながら聞く有華
『…うん…ちょっと実家に帰ってくる…』
と答える僕…
『ウチも一緒に行こうかな…』
という有華に対し
『お彼岸だから墓参りに帰るだけだし…すぐ戻ってくるし…』
と即答する僕…ハナっから、有華を連れて行く気はなく…

『怪しいな…』
と言いながらも、こちらは見ないで片付けを続けているので
僕は、有華の本音を窺いしれず…
春分の日当日
始発の新幹線に乗り込む僕
僕は自分の気持ちにケリをつける
というか、報告のための帰省だった…
アヤカの事は高校に入学の頃から知っていたけれど
実際に話をしたのは高2で同じクラスになってからだった…
アヤカはサッカー部の美人マネージャーとして有名で

でも、部活もクラスも違う僕は一度も話した事がなく…
始業式の日から部活のある僕は

クラスメイトが帰宅しようとしているなか
座り慣れない席で、一人、弁当を食べようとしていると
『美味しそうだね』
と聞き慣れない声が…
誰だ?と思い声の方を見るとお弁当を持ったアヤカが立っており
『ウチの部も休みがないんだよね…あの一緒にイイ?』
と僕の席の前のイスに座り、僕の机にお弁当を広げ…
クラスメイトは早く帰りたいらしく、そんな僕等のやりとりは気にせず
こんな簡単に話が出来ると思っていなかった僕は
照れを何とか隠そうと、急いで弁当を食べ…
『そんなに急いで食べると体に悪いよ』
と笑いながら言うアヤカ…

教室で弁当を一緒に食べたのは、その時だけだったけど
朝の挨拶をしたり、休み時間に話をしたりと
クラスメイトとして仲良くなり
部活中にグランドを走っていたりすると
僕の方に手を挙げてくれたり
そんな些細なことでテンションの上がる僕…
文化祭などの学校行事で帰りが遅くなると
一緒に帰ったりと、かなり仲良くなったのですが
あと一歩が踏み出せず…
12月に入ったある日、アヤカが急に
『24日って、何か予定あった?』
と聞かれ
『部活だって…クリスマスイブは普通にね…』
と素っ気なく答える僕
『それじゃ、夕方、体育館に行くから待っていて…』
と有無を言わさないアヤカ
『うん、わかった』
と答えないといけなくなった僕…
24日はクリスマスイブの割には暖かく
アヤカとの約束は憶えていたけど、熱が入り
アヤカが体育館に来ていた事に気付かず…
ようやく気付いた僕に
『真剣な顔を見たの初めてかも…』
と言うアヤカ…
練習を終え、アヤカと一緒に帰る僕
『ゴメンゴメン、すっかり待たせて…』
『そうだよ、私が待っているのに気付かないなんて』
と笑いながら答えるアヤカ
『そういえば、今から何処行くの?』
と呑気に聞く僕

『ウチでご飯食べるの』
と答えるアヤカ
『ゴハン?俺も?クリスマスイブに?アヤカの家で?』

『だから、そうだって言ってるじゃん』
と当たり前に答えるアヤカ

『え!俺、アヤカの家に行くの?だって部活帰りだよ…』
変に動揺する僕

『なになに~そんなに動揺しちゃって』
からかうように笑うアヤカ…

その日を境に僕とアヤカは付き合うようになったのですが
大学は地元に残ったアヤカと上京した僕
遠距離の付き合いになったけれど
僕が帰ったりとか、たまにアヤカが遊びに来たりと付き合いは続き
でも、大学3年の秋に事故は起こった…
バイトが終わってアパートに帰ると
家の電話の留守電ボタンが点滅しており
再生ボタンを押すと
「アヤカが登山中に滑落事故」に遭ったというものが何件も入っており…
翌日、大学の友達やバイト先に連絡して、急いで帰る僕…
地元の駅に着くと友人たちが駅に迎えに来てくれたのですが
表情は皆暗く、誰も口が重く、アヤカの現状を知らせてくれず…
病院に着いた僕等は病室でなく、薄暗い廊下の方に案内され…
その日から僕は泣く事が出来なくなった
『悲しい』という感情は無くなったように…
僕もアヤカのいない地元に就職せず…
ようやく、社会人としての生活に慣れた頃に有華と出会い
そんな有華と6月に結婚することになった僕
それをアヤカに報告するための帰省だった…
春分の日だから、どこのお墓にも花や線香が供えられており
アヤカの墓の前に立つと現実感が無くなる僕…
ふと我に帰り、ろうそくに火を点けようとするのですが
急に風が強くなり、ろうそくには火がつかず…
『なんだよ、アヤカ…イジワルしやがって…』
一人呟く僕…
ようやく、ろうそくに火が点き、線香をあげることが出来た僕
手を合わせながらアヤカに報告する僕
『…アヤカ…ゴメン…』
色々な想いから出た言葉はこれだった…
今でも残るアヤカへの想いはひた隠し…
今回の妄想はネガティブなモノだったので
また時間がかかりましたし
このような経験も無く…
実際の僕の隠しごとは
もっとチンケなものなのですが
そんなことでもバレたくないことはありますし

結論
大小に関わらず、隠しごとは誰にでもあるのだから悪い事ではない
と思います

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