村子サイド
私は、上岡村子。彼氏持ちの大学生。夢は法医学者。
監察医、と言った方が分かり易いかしら?
彼氏の侯隆のことは大好きだし、あわよくば、侯くんのお嫁さんになれたらな。とも思う。
でも、正直お互いに勉強やバイトで忙しくて、ゆっくりデート出来てない。
そういうことも、最近してないし、行きつけのペットショップの顔なじみの店員さんにふっかけられなきゃ、侯くんは
「好き」とか言ってくれない。
照れ屋なのはよく解ってるし、そこも含めて好きだけど、彼はいずれ、病院を継ぐ人。
どこかの病院長のご令嬢がいきなり、「許嫁です」なんて、出て来ないとも限らない。
お互いに学生だから、同棲とかする余裕なんてないし。
だから、本音を伝えたい。
連絡したら放課後、逢えることになった。
今日は、侯くんも私もバイトが無いのだ。
待ち合わせは、前から行きたかった高架下の居酒屋さん。
私に“オシャレなカフェ”とかは似合わないし、振られた時にお酒がないと、きっと耐えられないから。
?「ごめん!!遅なった」
村「大丈夫よ、侯くん。私も今来たとこ。あのね、話があるの」
侯「…別れ話なら聞かんで」
いつもの優しい声じゃなく、低めの声。
不機嫌な証拠だ。現に、口がとがってる。
村「違う。私だって分かれるつもりはない。でも、私の話をとりあえず、聞いて?」
侯「どしたん?」
村「私の夢は、法医学者なの。侯くんの夢は何?」
侯「夢?」
村「そう。私ね、時々スゴく不安になるの。ある日突然、許嫁が現れて、捨てられるんじゃないか。侯くんは本当は、バスケがしたいんじゃないか。事件オタクの私について行けてないんじゃないか。体だけ何じゃないか。って。もちろん、侯くんが照れ屋さんなのも、理解してるし、そこも大好きだけど、侯くんの肩書きが大きすぎて、怖くなるの」
向かいに座っていた侯くんが、そっと隣に来て、私を抱きしめた。
侯「…不安にさせてごめん。俺の夢は、村子と結婚すること。許嫁?そんなん知らん。居たとしても、俺は認めん。確かに、注射は嫌いやけど、村子とやったら何でも出来ると信じてるし、なんなら、病院なんか要らん。村子だけでいいわ。家を捨てる、村子と居られるなら。体だけ?そんなワケないやん。村子と、もう20年一緒に居るのに、今更体だけとか、そんなこと言うヤツ居ったらぼっこぼこや。今は忙しいけど、時間のやりくりするな」
続