村子サイド
春夏秋冬、365日、平日でも休日でも私の行動は変わらない。
10年前に父を事故で亡くし、私が成人になるまで、加害者家族から月々20万が損害賠償として入るが、金遣いの荒い母と、母の恋人が、15万を持っていくから、5万でやりくりしている。
塾には行きたいけど、行けないし、奨学金がもらえたから、授業料は一応、タダ。
近所のファミレスでのバイト代を貯めて、返済に当てる。
5時に起床して、朝食の準備と自分の弁当作り、新聞を速読でチェックして、朝食を食べ、身支度をして洗濯して、父に手を合わせて、学校に行く。
その時、黒渕の眼鏡は忘れずに。
度は入ってないけど、必要になるのだ。
「村子、おはよ」
「村ちゃん、おはよ」
とぼとぼ歩いてたら、背中に重みが。すば子が背中に飛び乗ってるのだ。
村「おはよ、すば子。丸山くん」
そう返せば、必ず丸山くんが言うんだ。
隆「マルとか隆、って呼んでや。友達やねんから」
村「うん…。でも、ダメやって。丸山くんも侯くんもモテるから。私と仲いい、なんて知れたら…。こうやって話してくれるだけで十分だよ」
隆「妬けるわぁ。侯隆くんに。村ちゃん、ちゃんと呼び分けてるやん」
村「…マル…くん」
戸惑いながらそう呼べば、丸山くんは嬉しそうに微笑んだ。
す「隆、村子に浮気せんといてや?」
すば子が不機嫌そうに頬を膨らませる。
隆「大丈夫やて。村ちゃんは友達。本当に好きで愛してるのはすばちゃんだけやで」
そう言いながら、すば子にチュッと音をたててキスをするマルくん。すば子は嬉しそうに、照れ笑いを浮かべ、マルくんに抱き着いた。
それを見ていた私は、何故かスゴく熱くなった。
家族のことがあってか、《恋愛》が何なのか、全く解らないのだ。
お隣で幼なじみの男の子・横山侯隆のことは好きだけど、すば子やマルくんに対する《好き》と同じだと思うし。
すば子とマルくんカップルの言う《お互いのことが好き》が解らない。
幸せそうだな。とは思う。
でも、侯くんとはそうならない気がする。
しかも、いつか、侯くんは私以外の誰かと結婚する気がする。
【チクリ】
…解ってるのに。侯くんは私みたいな暗い女は嫌いだって。
なのに、何でやろ…?
心の奥に小さな針を刺されたみたいにチクチクする…。
心の奥が痛い…。
侯くんの隣に居るのは、いつも私がいい…。
贅沢だけどそう思う私がいる…。
続