第5試合は、世界ジュニアヘビー級選手権試合、土方 隆司vsKAI。デビューからわずか1年半のKAIが、Jr.リーグ戦を制してタイトル初挑戦。

 KAIという選手は確かに逸材だろう。これまで私はGAORAで見ただけで生で見たのは今回が初めてなのだが、同期4人の中でも現時点ではずば抜けたものを持っている。しかし、惜しむらくは「うまい」という印象なのだ。それに対して相手の土方はバチバチのバトラーツ出身だけにキック主体で「強い」という印象を観客に与える。ふたりのキャリアからするとこれはむしろ反対でなければおかしい。若い時にはがむしゃらに強さを追い求め、ある程度キャリアがいってからそこにうまさを加えていくのがプロレスラーの本道なのだが、KAIの若さでうまさが際立ってしまってはかえって良くない。ここで仮にタイトルを獲れたとしても、いつか壁に当たることは目に見えている。試合は土方の勝利だったが、一気にシンデレラ・ボーイを作らなかった全日に好感を覚えた。




 休憩開けの第
6試合、小島聡、天山広吉vs TARU、真壁刀義。

 知らない人は知らないだろうが、知っている人は天コジは登場するだけで涙モノである。我々は、なんでこのふたりに、ここまで心を震わせられるのだろう。「友情」などという、あまりといえばあまりに臭いキーワード。でも実は誰だって、恥ずかしくて口に出せないだけで、本当は「友情」とか「愛情」というものをほしがっている。それを恥ずかしげもなくリングの上で見せてくれるふたりに、感動しないではいられない。『友情』をテーマにした映画を見るようなものだが、それを天とコジのふたりは、リングの上でまさに肉体を張って見せてくれているのだ。この試合中ずっと、私の頭の中には『修二と彰』の「俺たちはいつでも~♪、ふたりでひとつだった~♪」が鳴り響いていた。

 そもそも、このふたりはヒールがまったく似合わなかった。雑誌のインタビュー記事などによって、ふたりとも本質は「いい人」だということがわかっていたから、無理にヒールを装っているとしか思えなかったからだ。まあ、それも長いレスラー人生の中での経験なのだろうが、そこを抜けたふたりには、今後期待大である。

 だからといって、いつも組んでいたのでは感動は薄れる。所属団体が別れて、たまに組むというシチュエーションは最適だっただろう。試合後には飯塚も出てきたし、このストーリーはもっともっと引っ張ってもらいたい。飯塚の屈折を加味すれば、もっと感動が味わえそうな気がする。



 さてさてさて、第
7試合、IWGPヘビー級選手権試合、武藤 敬司vs後藤 洋央紀だ。近年、これほどまでに結果が注目された試合があっただろうか。

 ・・・試合から1日経ってこれを書いているのだが、実はこの試合の内容はほとんど覚えていない。見ている最中は熱狂していたように思うのだが、今振り返ると、後藤の敗戦しか記憶にない。

 というのも、たまたま私がいた席は通路の横で、しかも通路を出たすぐ左にビール売り場があったものだから、私は試合と試合の合間に何度もビールを買いに行き、既に酔っ払っている状態だったのである。

 とにかく、後藤が負けたのは驚きだった。てっきり札幌で中西が取り返すとばかり思っていたIWGP、それをG1覇者の後藤でも取り返せなかった。試合後にリング上で中邑が、そして真壁もアピールしていたが、どうなるIWGP? どうする新日本?



 驚きの中で始まった第
8試合、ダブルメインイベントの三冠ヘビー級選手権試合、諏訪魔vs太陽ケア。

 前述したが、鈴木みのるプロデュースによって完全に蘇ったのが太陽ケアだ。ここは一気に行くかと思われたが、静かな立ち上がり。そして・・・日ごろの寝不足とビールの飲み過ぎがたたって、私は眠りに陥っていた・・・

 ふと気がつくと、「30分経過」のアナウンス。え、ええ~? もう30分経ったの? ここで私は、朦朧としている意識の中で瞬時に理解した。全日は、最後の勝負を耐久マッチで来たかと。新日出身の武藤と現新日の後藤戦の後の全日興行の締めだ。全日らしさを出すのは、これだったのか、と。

 プロレスで30分超えたら、あとは体力勝負だ。攻防の「攻」ではなく、「防」の勝負、ようするにどこまで耐え切れるかだ。プロレスの技というものは、関節技を別とすれば、3秒間くらい耐えられないものではない。失神していない限り、フォールされても返そうと思えば2.9くらいで返せるものだ。心が折れて、「もういい」と思わなければ。

 どうやらこれを最後までやるつもりのようだということがわかったが、はたして諏訪魔が、太陽ケアがやれるのか?

 私は、そんな興味で試合を見ていた。少しでも心が折れたら、「もういい」と思ってしまったら、スリーカウントが入る。しかし、最後までふたりは意地を貫き通した。結果は、60分時間切れ引き分け。

 私は眠りから覚めた時点で、この結果をある程度予測していた。しかし、このふたりがここまで意地を見せてくれたことに、素直に感動した。ふたりとも、完全にフラフラだったから。これはこれで、やはりプロレスラーの耐久力を見せ付けてくれた良い試合だったと、拍手を送りたい。最初の半分は寝ていたけど・・・

 ということで全興行が終了したわけだが、私は空席が気になって仕方がなかった。升席も結構空いていた。これだけのカードを揃えて両国を満員にできないというのは、なぜなんだろう?

 プロレス人気は決して落ちてはいない、しかし興行が多過ぎるから分散されているのだ。空いている升席を見ながら、私はそんなことを考えていた。