もう、先々週末のお話になってしまいました。
「関東~新潟」の出張を振り返るエントリ第4弾です。
完成させることに意義があるッ!


10日昼 犬の行動分析セミナー in 新潟

10日のお昼13時からは、「犬の行動分析セミナー 」と題して、お話させていただきました。
こちらは極力専門用語を使わず、「しつけの話」をすることがテーマのセミナーです。

こちらの運営に関しては、聖籠ドッグスクールの鹿野先生 と、先日のエントリ にもご登場いただいたJETSの村居先生 に、本当にお世話になっています。
このお2人がいらっしゃらなかったら、まったく成立しないどころか、影も形もありません。
これまで、昨年末にあったキックオフのセミナーから数えると、新潟では3回目です。
新潟に呼んでいただいて、お話をさせていただいて、本当に感謝感謝です。
その感謝を、なんとか形にしてお返ししたいと思いつつの、セミナーでした。

今回は、内容に本当に苦労しました。
やっぱり、こういったセミナーに参加される方っていうのは「今、困っていること」があって、「それの解決のヒント」もしくは「解決方法そのもの」を知りたくて、いらっしゃるのだろうと思うんですよね。
それは、飼い主さんであろうと、プロであろうと、きっと同じだろうと思うんです。
しかし、話す側からすると「基本がわからないまま、テクニックを紹介する」っていうのは、やっぱりちょっとやりにくいというか、やりたくないわけです。
それは、セミナーの中でも「ハサミの使い方を知らない人に、テディベアカットを教えるなんてことしませんよね」というたとえでお伝えしたりもしたのですけれど。
でもね、やっぱりね、知りたいですもんね。
そこのバランスをどうとるか。
ここは、本当に苦労しました。

また、ご参加いただいた方々が、一般の飼い主さん、トリマーさん、トレーナーさんと、要はバラバラ。
それぞれの方々に響きつつ、でもできれば「ひとつのテーマ、ストーリーで繋がる話」をしたいなと。

「行動」というところから考えると、実は飼い主さんであれ、トリマーさんであれ、トレーナーさんであれ、なんならイヌを飼っていない人であっても、実は全部繋がるんです。
僕のクライアントさんなんかからも「最近、子育てにも使える考え方やなーって思ってます」と、おっしゃる方も結構いらっしゃいます。
でも、これは当たり前といえば当たり前の話で、そもそも「行動分析学」は「ヒトの心理学」の中にあるものですから、まず最初に「ヒトの話」があるわけです。
大学でも、出てくるのは当然のことながら「ヒトの話」です。
しかし、基礎の実験では、ハトやラットが出てくる(うちの大学はハトさんがいます)。

ヒトと、ヒト以外の動物。
「違うところ」もたくさんあります。これはもちろん当然。
でも、「同じところ」も、たくさんあります
これはきっと、あなたが思ってる以上にあります。

僕が「行動分析学」をとにかく推すのはこれが理由です。
「イヌのしつけは飼い主次第」だと言うのなら、ではその「飼い主さん=ヒト」を、「飼い主さん=ヒトの行動」を、どう支えていくのか
トレーナーと呼ばれる職の人間は、ここをもっと考えるべきだと思います。
イヌの勉強は、もう当たり前のように大事です。
でも、多分それ以上に、ヒトの勉強が大事です。
だから、みんなで学んでいけたらなって思いつつ、お話をさせていただいてるんですけども。

ちょっと話が逸れました。

セミナーでは「できる」ということを共通テーマとして持ってきて、「トイレのしつけ」と「お手入れ時の問題への対処」の話をしました。

「トイレのしつけの話」は、割と色んなところで喋っているので、ひょっとしたら「ああ、あの話ねー」という方もいらっしゃるかもしれません。
僕は「トイレのしつけ」の中には、すべての「しつけ」「トレーニング(訓練)」「行動的な問題の改善」の基本が詰まっていると考えています。

たとえば、よく言われる「叱る」と「褒める」の話。
昔は「トイレを失敗したら、失敗した場所に連れていき、鼻をそこにこすりつけて叱りましょう」というトンデモな対応がよく紹介されたりしていました。
しかし、今はそんなことをする人は、まあほとんどいないでしょう。
むしろ「叱る」という対応をすると、トイレをちゃんと覚えるどころか「飼い主に叱られないように、見つからないように、隠れてする、いないときにする」という風になったりしてしまいます
これは「叱られる」という経験をしたために、イヌが「逃避・回避行動を学習した」と考えることができます。
そして、これは「他の行動」でも同じことが起こる可能性があるんですね。

「褒める」にしても同じです。
「ちゃんと褒めてるのに、全然覚えてくれない」という話を聞いたりします。
でも、「覚えてくれない」ということは、それは「褒めたことになっていない」ということでもあります。
イヌにとっては、ぶっちゃけ「トイレなんかどこでやっても構わない」わけです。
そこを曲げて、なんとか「ペットシーツの上でやってもらえませんかね?」ということを、伝えたいわけです。
だったら、そのイヌ自身が「じゃあしょうがないなぁ、シーツの上でやりましょうか」となるようなナニカを、渡さないといけないわけです。
その「ナニカ」とは、つまり「ご褒美」になるわけですが、それはイヌが決めます
「撫でられる」が十分ご褒美になる子もいるでしょう。
「声かけ」がご褒美になる子もいるでしょう。
「食べ物」がご褒美になる子もいれば、「オモチャで遊ぶ」がご褒美になる子もいます。
何がご褒美になるかは、みんなそれぞれで違います(まあ、食べ物は大体の場合において、ご褒美として機能するんですけど、中には食べ物が機能しない子もいます)。
僕がよく言う「褒められたかどうかは、イヌが決める」というのは、こういうことです。

あるいは「行動的な問題の改善」なんかで、「本能が」とか「犬種特性が」みたいな話が割と出てきたりします。
でも、トイレのしつけにその辺のことを持ち出す人はまずいません。
ところが、「吠え」とか「噛みつき」となると、いきなり「本能がー」とかいう話になったりします。
でも「本能が」って言うんなら、「排泄」なんてまさに「本能的な行動」でしょう。
生きていくのに絶対に必要な行動なんだから。
つまり、「関係なくね?」っていうね。

他にも色々と「すべてのしつけに共通すること」というか、「通底する」って言った方がいいかな。
そういうものがたくさん詰まってます。
だから「トイレのしつけができた人なら、他のしつけだってできますよ」ってことをね、言いたいわけです。
この辺が、聞いてくださった方に伝わっていたら嬉しいんですけど。

「色んなしつけに通底する話」を、今回は「できる」という切り口でお話しました。


ちょっと長くなったので、分けますね。

続きます。