「やっててよかった行動分析」第四弾です。

行動分析学と出会って、ひたすら本を読んで、それまでとは割と段違いに結果が出せるようになって、でも「本を読めば読むほどわからないこと」っていうのがたくさん出てきて、そして「わからないことがたくさんあるのに、結果が出ている」ということに怖くなって、「とりあえず、大学で講義を聞いてみよう」という風に考えたってのが、前回までのあらすじです。

これまでのエントリ。

やっててよかった行動分析 1
やっててよかった行動分析 2
やっててよかった行動分析 3


僕が利用したのは、「聴講」という制度でした。
大学の講義は、この「聴講」という制度で申請をして、お金を払えば結構受講できます(受講できない講義もあります)。
金額は大学によって違うと思います。
また、志望動機などを書いた書類を提出するだけでよいところもあれば、面接を課すところもあります。
ちなみに、関西学院大学は面接がありました(立命館大学はなし)。
大学によって、ちょっとずつ違っていたりもしますので、もしこの制度を利用されたい方は、各大学にお問い合わせください。

まず僕がやったのは、日本行動分析学会のサイトにある「行動分析学が学べる日本の大学 」というページで、関西の大学で行動分析学の講義をしている大学があるかどうか?を調べることでした。
そして、その中の関西学院大学に、まず聴講に行きました。
その次に、立命館大学に行きました。
そこで大きな出会いがあったわけなんですね。

さて、その頃の僕は、ひとつの問題と直面していました。

 「ただ飼い主さんに教えるだけでいいのか?」

特にここ最近よく言われることだと思うんですけど、「イヌのしつけは飼い主次第」ってのがあるじゃないですか。
「飼い主さんが変われば、犬が変わります」っていうあれ。
あれは、確かにまったくその通りではあるんですよ。

イヌって生き物は、とーっても環境に左右される動物です。

家の中と外。
道路と公園。
周囲にイヌがいる場所、いない場所。
お父さんがいるとき、いないとき。
いつも行く場所、初めての場所。

環境がちょっと変わっただけでも、行動ががらりと変わったりします。
「ちょっと変わった」の例でいくと、たとえば「オスワリ」をさせようと思ったとき。
「イヌの目の前すぐの場所で『オスワリ』と言うと問題なくできるけど、ちょっと離れた場所で言うとできない」とかね。
あるいは「トレーナーさんがいたら賢いんですけど」とかね。
まあまあ、とにかく「環境からの影響」ってものを、すごく受けるんですよ。

じゃあ、その「環境」ってのはなんなんだと。
「イヌを取り巻く環境」の中で、もっとも大きな要因は、ずばり「飼い主さん」なんですよね。
飼い主さんの接し方や、何かリアクションをするタイミング、そういったものによってイヌはどんどん行動を学習していきます。
たとえば「飛びつき」や、いわゆる「要求吠え」の問題なんてのは、もろ「飼い主さんの対応の問題」といえます。
逆にいえば、その「飼い主さんの対応」さえ変われば、それらの問題は解決します。
やあ、よかったよかった。


飼い主さえ変われば、問題なんて解決する…………

そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました



これ、結構大きな問題なんですよ。
「飼い主さえ変われば」ってのは確かにその通り。
でも、じゃあ、それってどうやるの?っていう。
当時、割とmixiやってたんですけど(今は完全放置)いくつかのコミュでも、トレーナーさん達が口をそろえて言うのは「飼い主さんを変えるのが難しい」だったんですよね。
僕も、まったく同じような疑問があったわけなんですね。
そんなわけで当時の僕は、「ドッグトレーナーじゃあありません。ドッグオーナートレーナーです」てなことを言ってみたりもしていたんですね。
「イヌじゃなく、飼い主を変えるんだ」って。
今から思えば、まあ、なんておこがましくて恥ずかしい~とも思うんですけど、当時の僕にはそれが限界。
でもこれ、ちょっと考えると、ありゃりゃ?ってなるんですよね。

 1 イヌの行動に影響を与えているのは、飼い主さん
 2 飼い主さんが変わればイヌが変わる
 3 じゃあ、飼い主さんに影響を与えているのは……?

「3 飼い主さんに影響を与えているのは……?」ここですよ、ここ。
ここんところをちゃんとやらねば、どうにもならんわけですよ。
つまり、「飼い主さんに変わってもらうためには、飼い主さんの環境を変えなきゃならんじゃないか」と。
でもそれ、どうやってやるんだよと。

そういう、いわば「問題意識」を持って、立命館大学の講義を受けに行ったんです。
そこで聞いた言葉に僕は、衝撃を受けました。

 「行動分析学は『個人の行動を変えること』に関しては、
  もうある程度行きついちゃってるんだ。
  個人の行動を変えるんじゃなくて、
  その個人が生きる環境、社会を変える……。
  そうすれば『個人の行動』を変える必要なんて、
  なくなるかもしれない。
  我々は、そこに目を向けなければダメなんだ。
  それを科学的に、きちんとロジックを持って、やる。
  それが大事なんだよ」


もうね、「電流が走る」ってのは、まさにこのこと。
ノートに思わず「やったー!」って走り書きしましたもん。
「イヌを変えるには、飼い主さんを変えなきゃならない。飼い主さんを変えるには、飼い主さんを取り巻く環境を変えなきゃならない」
ここまでは、なんとなくぼんやりとわかってた。
その「なんとなーくぼんやーり」したものを「行動分析学で、科学でやるんだ」って人が、目の前にいる。
しかも「実は、個人の行動を変える必要なんて、なくなるかもしれない」なんてことまで言ってる。
自分が考えてたはるかにその先を、やってる人がいる。
目の前に。

「この人だ!」と思ったんですね。


続きます。



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■飼い主様向け

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飼い主さんだけでなく、プロの方も是非どうぞ。

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日時:平成24年2月26日(日) 13:00~16:00
会場:サムティフェイム新大阪 ※前回と同じ会場です。
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費用:3,500円/人
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詳しいことは、主催のDLC-PROさんのサイト でご確認ください。


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トレーナーさんだけでなく、わんこと飼い主さんの行動に関わる方なら、どなたでも。
「行動分析学に基づいた犬のしつけ、問題行動への考え方」を、テクニックだけじゃなく行動と学習の原理からお伝えしています。
トリマーさんや獣医さんや看護師さんも是非どうぞ。
また、飼い主さんも受講していただけます。
詳しいことは、主催のDLC-PROさんのサイト でご確認ください。

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 ・「犬塾 関西」
  毎月、大阪で定期開催しています。

 ・「犬塾 関東」
  4ヶ月に一度、東京で定期開催しています。
  次回は4月の予定です。


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  4ヶ月に一度、名古屋で定期開催しています。
  次回は5月の予定です。

 ・「犬塾 関西 2期」
  4ヶ月に一度、大阪で定期開催しています。
  次回は5月の予定です。


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