アルツハイマー病は認知症の一疾患で、アルツハイマー型認知症とも呼ばれており、認知機能の低下などが生じます。加齢に伴い、脳内ではアミロイドβという老廃物が日々たまってきます。通常それはミクログリアの働きなどによって除去されるのですが、除去しきれないほど沈着すると、脳の働きをつかさどるニューロンという神経細胞の情報伝達が正しく行われなくなり、記憶や認知機能が維持できなくなります。
ミクログリアは脳内で唯一の免疫細胞で、脳内の老廃物を除去してくれる、いわば“お掃除細胞”ともいえるものです。脳内にウイルスや病原体が侵入したときの生体防御や、古くなった神経細胞の代謝促進、神経細胞に栄養を与えて情報伝達に必要なシナプスを伸ばすといった機能もあります。しかし、老廃物を食べ過ぎると暴走して炎症状態となり、脳環境にストレスが生じます。ミクログリアを暴走させることなく活性化させる有効成分を見つけることができれば、脳内に老廃物がたまりにくくなり、認知症予防につながるのではないかと言えます。
ある研究機関が研究を進め、カマンベールチーズを毎日食べたマウスは、脳内の老廃物沈着が抑制させました。
神経細胞が情報伝達する際に必要なシナプスの量が、アルツハイマー病マウスだと低下しているものが、被験食群では改善していることがわかりました。
オレイン酸アミドと、デヒドロエルゴステロールが有効成分として確認できたという事です。
オレイン酸アミドは、生乳に多く含まれる不飽和脂肪酸のオレイン酸に由来する成分で、ミクログリアの老廃物除去活性を高め、炎症を抑制する作用があります。発酵工程で発生したアンモニアとオレイン酸が白カビの酵素で反応し、生成されたものと考えられます。また、エルゴステロールに由来するデヒドロエルゴステロールにも、炎症を抑制する強い作用がありました。
また、赤ワインが認知症予防に良いという見方もあります。
1997年にフランスのボルドー大学が発表した論文があります。フランスのとある地方に住む協力が得られた2273人を調べたところ、認知症になった人とならなかった人の生活習慣には、どんな違いがあったのか・・・?研究グループが調べたところ「ワインを飲む習慣」が浮かび上がってきたんです。しかし、実は最近の研究で、ワインを適度に飲む習慣がある人は、健康的な食生活をしているケースが多いことがわかってきました。先に挙げたカマンベールチーズはワインがとてもよく合いますよね。要は、健康的な食生活のほうが重要であり、それを心がけている人がたまたまワインを飲んでいた可能性もあるということです。
“ワインと認知症”の関係に関しては、「ワインを含むアルコールを適度に楽しむような生活習慣には、認知症のリスクを減らす効果がありそうだ」と考えられるようになってきています。
