厚生労働省は、現在暫定的に公費助成している子宮頸(けい)がんとインフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の3種類のワクチンを、事実上無料の定期接種にする方針を固めた。
今国会にも予防接種法の改正案を提出し、2013年度からの実施を目指す。さらに、おたふくかぜなど4種類のワクチンの定期接種への追加も検討する。
3種類のワクチンはいずれも、世界保健機関(WHO)が予防接種を推奨している。いわば日本の取り組みが遅れていた。国内で公的に接種するワクチンは欧米の主要国に比べ少ない。今後、有効性や安全性などを踏まえ、必要なものは定期接種に移行していくべきだろう。
子宮頸がんは、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因で、子宮の出入り口に発症する。
ほとんどの場合は自然に消滅するが、一部の人はがんに進行するという。20、30歳代の女性で増えており、国内では年間約8500人が発症し、約2500人が亡くなっている。
3ワクチンは、この子宮頸がんの防止や、乳幼児にとって深刻な細菌性髄膜炎を防ぐ効果が、期待されている。
ただ、副作用の危険性が伴うことを忘れてはなるまい。子宮頸がんのワクチンでは、けいれんや意識喪失が報告され、ヒブと小児用肺炎球菌のワクチンでは乳幼児の死亡例もあったという。
接種の意義や効果、リスクやデメリットなどを絶えず検証し、見直していかなければならない。利用者への情報公開の徹底は、言うまでもない。
また、定期接種を拡充するには、財源の問題が避けて通れない。
子宮頸がんのワクチンは13歳女子の約58万人、ヒブと肺炎球菌のワクチンはそれぞれ0~1歳の約110万人を想定している。3種のワクチンの接種には、年間約1200億円かかるとされる。
国は10年度後半から12年度まで、時限措置として公的助成をしている。国と市町村がほぼ半分ずつ負担しているが、定期接種になれば、市町村が全額負担しなければならない仕組みだ。財政状況の厳しい地方自治体から、国の支援を求める声が相次ぐのは当然だろう。
4種類を追加すれば、さらに年間約1100億円かかるとされる。
定期接種のワクチンは、法律上は個人から実費を徴収できるが、自治体が自ら負担して無料化している場合が多い。
欧米主要国並みの国際水準へ公費接種の対象を拡大しようとするならば、いずれ市町村が全額財政負担をする現在の仕組みを見直すことが必要になるだろう。
ただ、ことは国民の命と健康に関わる問題である。どの地域に住んでも、同じ条件で安心して接種を受けることができる制度にしなければならない。
その視点から国と市町村は、予防接種のあり方と、その裏付けとなる財源負担の問題について協議に入るべきだ。
出典:西日本新聞