四
40歳で始めた書道
最初は書道なんてするつもりはありませんでした。
どちらかといえば、「重い習い事」とさえ考えていました。
きっかけは、当時6歳の長女。
彼女から始めたいと言い出した「習字」でしたが、すぐに飽きたらしく
二言目には「もう行きたくない」と。
「おいおい、ふざけるな」だが、まだ小さいから仕方ないか。
とりあえず「私も一緒に習って彼女の伴走者として徹しよう」と決めました。
そして気がつけば、5年後に私は書道教室を開いていたのです。
そう、ハマったのは娘ではなくて私。
私が書道教室を開こうとしたきっかけは「書道が好きだから」というのはもちろんですが、
「書道の価値」が思っている以上に世間に伝わってないと感じたからです。
あなたは書道に対してどのようなイメージがありますか?
美しい字の書き方を教えるところ。
日本文化を認知するところ。
または、規律やら、躾やら、と考える人もいるでしょう。
私の場合は違います。
それは書道は「やりたいことが見つからない人」にとって価値を提供できるということ。
やりたいことが続かない
私は40歳になるまで、器用貧乏が仇となって「やりたいことジプシー」でした。
何をやってもそこそこなところまでできるけど、すぐハマるけど、すぐに飽きる。
当時の私のようにやりたいことが続かない人は多いのではないでしょうか。
中には「目標達成」を「目標」にしていることが多い。
何かを達成した時点で、目標が消滅。といったやつ。
短期的な目標なら良いのですが、長期的な目標となればどうでしょうか?
英語でいうと「英検1級をとる」とか
書道でいうと「師範になる」といったものです。
その目標が「海外で仕事をするから勉強がてらに英検1級の学習しよう」「書道教室を開きたいから毎日お稽古してたら師範になれた」とか、
達成できたその先、の価値がないと続けることができない。
大切なのは目標達成ではなく「目標が副産物」であること。
ついでに達成できたらラッキーぐらいがちょうど良い目標。
それには、今自分がやっている活動に「楽しくハマる」っていることが条件です。
ただ漠然と「資格をとる」とか「1千万貯める」といった目標達成は人生の目標にはならないのです。
達成したら終わりのものを繰り返すと、常に達成できていない自分に鬱々し、達成してしまったら、喜びは一瞬ですぐに満たされない状態になります。
そこで、生涯を通して自分の価値に合う目標を見つけることが大切になります。
書道は「価値」を提供してくれる
そこで、そんなやりたいことが見つからない人におすすめなのが、「書道」なのです。
書の道というものは、書と文字を通して私たちに「人生の価値の追求」を促してくれます。
あるときは作品に書かれた詩から、
あるときは流れるような筆さばきから、
あるときは書家の生き方から、
書道には生涯通しても学びつくせないほどの「学び」があります。
私が書道から学んだことで、特に大きなものは「今の瞬間を一生懸命」「足るを知る」ということです。
書道は瞬間の芸術です。
今という瞬間はその瞬間しか味わえない。
そして、求めても求めても上には上がある。
今の自分にあるものだけで勝負する。
こういったものです。
世の中には色んなジャンルの学びはありますが、その中でも書道は、文学、芸術、歴史と本当に多くのことが、紙と筆で学べる最強の生涯学習です。
書道を学んでいる人は、誠実で真面目で、向学心が強い。
いくつになってもは学び続ける人は、老若男女問わず美しく若々しいです。
それは好奇心が非常に強いからゆえだと思います。
下手な美容サプリメントにお金をかけるぐらいなら、好奇心を育む活動にお金をかけた方が何倍も良いとは思いませんか?
何事もやってみないと、初めて見ないと「良さ」というものはわからないものです。
もしかしたら、私のように人生後半になって「運命の目標」に出会えるかもしれませんよ。
それでは、このへんで。