「大人の学び直し書道」

 

今回の漢字は「貝」です。

 

漢字の成り立ちは、たから貝の形を表しています。

たから貝はめずらしい貝で、お金の代わりにも使われました。

 

 

 TODAY'S
 

 

 

 

 

硯箱と貝

 

硯の装飾で有名なものは「螺鈿細工」です。

 

様々な貝(夜行貝、白蝶貝など)を使って、細工を施したものが螺鈿硯箱です。

 

螺鈿は美しい模様や輝きを持ち、古くから贅沢な装飾品として愛されてきました。

 

博物館で展示されている硯箱によくみられる細工ですね。

その美しい繊細な模様は息を飲む美しさで、美術品の愛好家に人気があります。

 

 

書道をはじめた当初の私は

硯なんて「とりあえず、墨汁をためるものでしょ」ぐらいにしか思っていませんでしたが、

 

なんのこっちゃない。

 

 

「おいおいおい。道具でここまで腕が上がるのか!?」

 

と、書道をやればやるほど道具の大切さを痛感します。
 
 
書道には「六文具(ろくもんぐ)」という言葉があり、これは書道を行う際に必要な6つの道具のことです。
 
筆、硯、墨、紙、硯箱、水滴。

これらの六文具は、書道の基本的な道具であり、当然欠かせないものです。

 

 

私の師匠は「道具は大切にしなさいよ、最後に助けてくれるのは道具よ」

と、いつもおっしゃっています。

 

書道の三種の神器である、筆・硯・墨はなんとなくわかるのですが、

 

「硯箱にここまで手をかける???」

 

と正直思っていました。

 

 

それが、不思議なことに、妊娠すると妊婦さんばかりが目に入るのと同じ原理で

 

書道をはじめると、書道六文具がよく目に入ってきます。

 

硯箱は記念品や贈り物として作られていたこともあってか華美なものも多い。

 

 

 

そもそも、私たち日本人には「美的価値」を求める血が流れています。

 

ただの「書道の整理箱」ではなく、そこに芸術性と、書道文化に対する思いを表現するのです。

 

 

 

確かに、ただのプラスチック製の硯箱よりも、漆器に螺鈿細工の硯箱であれば書道モチベーションも跳ね上がりそうです。

 

 

 

ただの、箱。

されど、箱。

 

 

 

 

書家が博物館などに行ってしまっては最後です。

 

あなたも、きっと硯箱の虜となってしまうでしょう。

 

 

 

物欲は貝に閉じ込める

 

 

ここまで、美しい道具の素晴らしさをお話してきましたが、

 

私は高価な道具は使っていません。

 

 

 

 

 

前述したとおり「書道は道具に助けてもらう」ことができます。

 

 

私たちが手に入れられる一般的な筆、硯、墨は、やはり値段相応の仕事をしますので、スキルを伸ばしたいという思いが、どうしても「道具」に行ってしまいます。

 

 

この筆が書きやすい。

この紙ならば、良い線がでる。

この墨なら綺麗な色がでる。

 

確かに、作品作成において、この差は大きいです。

 

 

一度、良い道具の味を占めてたら、なかなかレベルを落とせません。

 

 

 

 

しかし、書道は「道具の消費」が激しい習い事で、そこそこお金がかかります。

 

 

 

そこで、私が思ったのは

「安価な道具で負荷練習をやり続ければ、上達も早いのではないか?」ということです。

 

 

良い道具で、自分の最高の良い結果がでる可能性は高いけど、質の低い道具でも、自分の最高の良い結果に近いものが書けるようになれば、底上げできるのではないか?

 

 

 

目指すは「弘法筆を選ばず」

 

 

満足のいく線が書けるようになって、はじめて良い道具をつかってみる。

 

そうすれば、はなから助け船狙いで購入するより、はるかに感動できるのではないかと企んでいます。

 

 

きっと、「めちゃくちゃ得した」気分になって、より道具に感謝できるのではないかと。

 

 

 

 

 

螺鈿細工の硯箱はとても美しいけど、

 

私たちは芸術品のコレクターではない。

 

私たち書家はクリエイター。

 

 

華美な道具は上には上があり、キリがありません。

 

消費者側に徹するのではなく、モノづくりを優先するのを忘れないようにしよう。

 

 

 

まずは、今手元にある道具だけでどこまで書けるようになるか。

そうやって頑張ってみるのも、レベル上げRPGのようで楽しいです。

 

 

 

 

それでは、このへんで。