「大人の学び直し書道」
今回の漢字は「音」です。
立、日、でできているシンプルな形ですが、横画の長さのバランスが難しい。
音
分析するな、好きであれ
「私の音楽を分析するな、愛せよ!」
フランスの作曲家であり、ピアニストのフランシス・プーランクの言葉です。
私は、このセリフがとても好きです。
音楽と書道は何の関係もないように思えますが、意外にも非常に関係が深いです。
それは「リズム」。
書道は、楽器のような音こそ出ませんが、とてもリズム感を大切にした芸術です。
書体によってリズムを変え、テンポを変え、節をつけ書きます。
リズムのバランスを重視しているところは、非常に音楽との共通点があります。
書道の展示会に行ったときにふと思ったこと。
書道経験が長くなればなるほど、書かれている書の技法や墨の色などをついつい見て分析してしまいます。
もちろん、それは自分の書の幅を広げる学びになるのでとても良いことなのですが、最近思うことは「感動」が減ったこと。
書道をはじめたばかりのことは、無知ならではのまっさらな感覚で書の作品を見ることができ、もっと素直に作品を感じることができていました。
そう、素晴らしい音楽を聴いて感動した時のような、ゾワゾワした感覚。
無知ならではの、楽しみ方。
私は、下手に知識が増えたせいで作品を芸術としてみるのではなく、「教科書」として見ていたのです。
それに気がついてからは、まずは書の作品は「文字を追わずに。線だけ追う。」これを意識するようにしました。
書が奏でる「音」に集中します。
すると作品がまるで動き出すような感覚がきます。
その音と動きを楽しむ。
それからゆっくりと、詳細を楽しむ。
本で言えば、初見はブックカバー。
文字は目次。
墨と線は中身。
このように楽しむことによって、何度も作品を堪能することができます。
本屋に行って気になるブックカバーの本を開いてしまうかのように、書道の展示会でも、すばらしい作品の前で足が勝手に止まり書の世界へと連れて行ってくれるはずです。
書道の音
先ほどは、作品に音があるという抽象的なお話をしましたが、実際に、書道には音があります。
紙の擦れる音。
墨を硯で擦る音。
筆を走らせる音。
書道教室というものは比較的静かに過ごしますので、静けさの中で聴く、様々な音が好きです。
一番好きなのは、自分が筆を走らせる音。
この音は書いている本人だけが楽しめます。
たくさんの書道の音を聞きながら、教室でのお稽古開始。
たまにお話が盛り上がって、そんな音どころではなくなるときもありますが、集まった人の笑い声は心を温めてくれます。
書道が好きな人が、同じ日、同じ時間にいつも顔を合わせる。
そして、好きな書道の話しをたくさんする。
共通の「好き」を持っている人がいるだけで、私たちは「癒し」をもらえます。
人は、歳を重ねるたびに「孤独」を感じる機会が増えます。
こんなときに支えとなるのは、やはり「人」です。
書道は何歳からでも、何歳までもできる趣味です。
「ちょっとはじめてみようかな」
と思った瞬間が、学び直しのタイミングです。
私たちと一緒に「好き」を育ててみませんか?