定期駆虫のすすめ | LINDO BLOG

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こんにちは。獣医師の田村です。

 

気が付けば、もうすぐ7月ですね。

 

夏の予定に愛犬とのアウトドアを検討されている方もいらっしゃるかと思います。

今回は、愛犬と一緒にアウトドアに行かれる方に、ぜひ知っていただきたいことについて書こうと思います。

 

 

 

 

みなさま、定期駆虫をご存知でしょうか。

定期駆虫とは、ノミ、ダニ、フィラリア、お腹の寄生虫などに対して定期的に薬を使い駆虫して、予防することをいいます。

フィラリアやノミダニの駆除をされている方は多いと思います。

今回は、ペットだけでなく人間に感染する危険のある寄生虫と、その予防の必要性についてお話しします。

 

 

一般的に、寄生虫は感染者の糞便に排泄され、そのを口にすることで感染します。

 

一昔前までは、人間にも寄生虫感染がよくみられました。

昔は人糞を肥料にして農作物を作っていたため、その中に寄生虫の卵が含まれてしまうと土壌が卵で汚染され、作られた野菜などに付着して感染が広がっていたからだそうです。

現在は化学肥料にかわったため農作物からの感染が減り、また終戦直後と比べると衛生状態も非常によくなっているため人間同士での寄生虫感染は減少しているそうです。

 


しかし一方で、新たな寄生虫感染が増えているそうです。

それに関わっているのが


生肉などの生鮮食品海外渡航、そしてペットです。

 

 

なぜペットからなのでしょうか。

 

 

一昔前までは、犬は番犬などの役割から外飼いが当たり前でした。

また、猫も半野良で飼っている家が多かったため、ペットのトイレを室内に置くということはほとんどありませんでした。

それゆえ、ペットと人との居住空間は完全に分かれていました。

 

しかし現在、ペットは家族の一員として飼われていることが多く、居住空間は人間と非常に密接になりました。

同じ部屋で食事をし、トイレを室内に置き、同じ布団で寝ることもある。


そういった密な接触をすることにより、ペットから寄生虫感染するリスクが増えているのです。

 

ではペットはどのように感染するのでしょう。

 

 

まず危険なのは野良猫などの野生動物の便です。

野良猫の便検査をすると割と高い確率で寄生虫の卵が検出されます。

万が一野良猫の便を口にした場合は、寄生虫感染を起こす可能性が高いといえます。


また、臭いを嗅いだ際に鼻先についた卵から感染する可能性もあります。

 

 

 

もうひとつは感染していた犬から感染が広がるケースです。

主な感染スポットは、お散歩コース公園ドッグランなどです。


寄生虫は大量に寄生しないと症状が出ることが少なく、必ずしも糞便検査で検出できるわけではないため、感染に気付くことが難しいのです。


それゆえ知らず知らずのうちに感染し、周りに広げてしまうことがあります。

 

 

お散歩中やドッグランで便を片づける際、水で流して掃除をすることはないですよね。

そのため、便を片付けたとしても目に見えないサイズの寄生虫の卵が残っていることがあり、そういった場所の臭いを嗅いだ際に卵を口にして感染してしまうことがあります。

また、ひとたび土壌が卵で汚染されると駆除することが難しいため、ドッグランなどが感染スポットとなっているケースがあります。


 

また、これは少ないと思いますが生肉を与えている場合に感染することがあります。

犬や猫は肉食とはいえど、お肉を与える際は必ず加熱してあたえましょう。

 

 

 

ではどのような対策をすべきか。

 

おすすめしたいのは定期駆虫です。

 

先にお話しした通り、便検査で問題がなかったとしても寄生虫感染を完全に否定できるわけではありません。

 

そのため感染しているかもしれないという前提の上で、寄生虫駆除薬を定期的に飲ませることにより感染予防をすること(=定期駆虫)が効果的です。

 

特におすすめしたいのは、小さい子供や妊婦さん、ご高齢者のいるご家庭です。

こういった方々は成人に比べ免疫力が低いため感染しやすいほか、感染によって症状がでやすいのです。

 

また、アウトドアに行かれるアクティブな犬たちにもおすすめいたします。


自然豊かな環境には野生動物がいます。


野生動物は寄生虫感染をしている割合が非常に高く、それらの動物が居住している環境は、土壌が卵で汚染されている可能性が高いのです。

 

 

駆虫剤の服用頻度についてですが


アメリカ疾病予防センター(CDC)は6か月以上の成犬に年4回(3カ月に一回)の駆虫薬服用を推奨しています。

 

 

フィラリア予防のために蚊に刺されないようにするのが困難で初期症状がないのと同様、寄生虫の卵を口に入れないようにすることは困難ですし、初期症状がありません。

 

 

それゆえ、

感染したかもしれない寄生虫を駆除し、身体を定期的にリセットするための定期的な駆虫剤の服用=定期駆虫が重要なのです。

 

フィラリア予防薬の中にはお腹の寄生虫の駆除効果のあるものもあります。


お薬によって異なりますので、かかりつけの先生に確認しましょう。


当クリニックも、寄生虫駆除薬はもちろん寄生虫駆除効果のあるフィラリア予防薬を取り扱っております。

お気軽にご相談くださいませ。

 

 

 

少し話がずれますが、最近ジビエ料理が流行っていますよね。

ジビエとは、シカ、イノシシなど狩猟の対象となり食用とする野生鳥獣、又はその肉のことです。

少し前に、ジビエを生で食べることによる感染症について、厚労省が注意喚起をしているという内容のニュースを見ました。


具体的な感染症はE型肝炎食中毒寄生虫感染があげられます。

 

獣医学の勉強の一つに、寄生虫学というのがあって、獣医学生は様々な寄生虫について勉強します。

ホルマリンに浸かった本物の寄生虫のスケッチをしたり、動物の肉に寄生している姿の写真をみせられたり、実際に魚をさばいて寄生虫を探してみたり…

 

気持ち悪い寄生虫をたくさんみてきました。

 

 

先にお話しした通り、野生動物は高い確率で寄生虫感染をしています。

それゆえ、野生動物の生肉を食べるなんて、あの時みた寄生虫を思い出してしまい絶対にできません。

 

実はこういった現代のグルメ志向も寄生虫感染増加の一要因だそうです。

 

 

寄生虫の実物をみてみたい!とご興味を持たれた方は
ぜひ目黒にある「寄生虫博物館」をお尋ねください。

 

きっと生肉、生魚に対する認識が変わると思いますよ。

 

もしかしたらしばらく生ものを食べたくなくなってしまうかもしれませんが、食に対する正しい知識を身につける貴重な経験になることと思います。

 

(私は学生実習で見た寄生虫たちで十分満足してしまったので行ったことはないです。そして行く勇気がありません。。。)