こんにちは、獣医師の田村です
さて、今回は(人が)妊娠したときに、ペットとの生活で気を付けるべきことについてお話しします。
前回も申し上げた通り、獣医師は人間の健康について的確なアドバイスをできる立場にはありません。
これは獣医師的アドバイスというよりは、体験談として受け取っていただければと思います。
動物病院にはいろいろな動物が来ます。
中には野良猫だったり、暴れん坊の猫だったり、噛みついてくる犬だったり…
普通にペットを飼っている以上に動物の影響を受けやすい環境かと思います。
私が妊娠中に働いていた動物病院には、出産経験のある先輩獣医師とトリマーさんがおりました。
二人とも予定日一か月前まで働き、その後産休を取ったそうです。
彼女らが産婦人科の先生から受けたアドバイスをあげてみますと、
重い犬を持ち上げない
犬の散歩ではリードの引きや転倒に注意
疲れたりお腹がはったらすぐ休憩
(つまり、あんまり無理はしないようにということです)
そして何より…
『噛まれないように気を付ける』
でした。
妊娠中は抗生剤を含め、薬の使用にかなりの制限がかかります。
動物に噛まれたら、ほとんどの傷には抗生剤の使用が必須です。
傷が化膿して入院した同業者は私の周りだけでも数人おりまして、中には生死の境をさまよった人もいます。
それほど噛まれ傷というのはやっかいで危険なものなのです。
私の立場から妊婦さんにお伝えできるのは、いたって常識の範囲内でペットを飼うのであれば、特に問題はないということ。
ただし噛まれることだけはないように、十分に注意していただきたいということです。
それ以外にすべきことには、お散歩の後にペットの足を洗う
トイレの始末の後に手を洗う
口移しなどの濃厚接触は避ける
などもありますが、これらは妊娠中だけでなく、日頃からぜひしていただきたいことです。
これは聞いた話ですが、ペットを飼っている家庭の子供は少年犯罪率が低く、それを証明する論文もあるそうです。
ペットを飼うということは、子どもの情緒教育にとてもいい影響があるのですね
また、
「赤ちゃんが生まれてから、ペットが赤ちゃんを攻撃したり、受け入れたりしないかどうか心配です。」
という質問もしばしば受けることがあります。
絶対という保証は難しいのですが、今まで受け入れなかったペットを見たことがありません
最初は、なんじゃこの生き物は…
と、遠巻きに赤ちゃんの様子を見ているペットたちも、段々と自分はお兄ちゃんお姉ちゃんだ、という意識が芽生えるのでしょうか。
最初は戸惑っていたペットも
赤ちゃんが泣いていると鳴いて教えるようになりました
とか
赤ちゃんにおもちゃを持っていったりお世話しようとしています
という話もよく聞きます。
また、犬は本来群れで生活する動物なので赤ちゃんを受け入れやすいと思いますが、
単独行動を好む猫さえも赤ちゃんを受け入れて気にかけているという話もあります
赤ちゃんには誰もが守ってあげたい、お世話してあげたいと思わせてしまう力があるのでしょうか
動物はそういったものを人間より敏感に受け取ることができるのかもしれません。
赤ちゃんが生まれてからの日々、お母さんは赤ちゃんのお世話にペットのお世話にてんてこ舞いでしょう
お母さんを独り占めできないさみしさのなかで、ペットはそんなお母さんのことを心配していると思います
たまにはお兄ちゃんお姉ちゃんとして頑張っているペットのことを抱きしめて、大好きだよと伝えてあげてくださいね
以上、体験談を踏まえて書かせていただきたました
もし、ご不安なことがあれば産婦人科の担当の先生に確認してくださいね
今妊娠中の方やそのご家族の方々、これから妊娠をお考えの方のお役に立つことができたら幸いです