オバマにみる政治とグラフィックデザイン | A View of dogbutt

オバマにみる政治とグラフィックデザイン

ニューヨークタイムズのブログ「T Magazine」 で見つけたんだけど、
このグラフィックはオバマ大統領が経済復興を目的に始める2つのプロジェクトARRA(左)とTIGER(右)のロゴ。
左のARRAはパーフェクトとはいえないけど、85点くらいはもらえそうなグッドデザインだとおもう。
ちょっとレーモンド・ローウィやポール・ランドなクラシックなアメリカの匂いもする。
右のTIGERはインパクト勝負が少し裏目に出てしまった感じはするけど…。(←上から目線)

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記事によれば、デザインチームはクリエイティブディレクターがシカゴベースの
Mode Projectという事務所。デザイナーはDraplin DesignのAaron Draplinと
Wire & TwineのChris Grassだって。(この三組誰も知らなかった…。でもグッドチョイス!)

オバマ大統領のグラフィックと言えば、OBEYが勝手に描いた肖像画がゲリラ的に広まって
いつの間にか選挙戦のシンボルになっていたけれど、
明確な根拠がない、「なんかやってくれそう」感からくる期待感を背景に
大統領にのぼりつめた人だけに、
プロジェクトのロゴマークまできちっとデザインしてくるのはさすがだなあとおもう。
オバマ大統領は今後も勝ち目の薄い、厳しい戦いを強いられるわけだけど、
グラフィックデザインで人々の気持ちを盛り上げ結集させることで、
少しでもこの困難なタスクの成功の可能性を高めようという意思を感じるのです。
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日本の政府、官庁ももう少しだけデザインに気を配ってほしい。
キレイなデザインならばコミットする気持ちも少しだけ高くなるとおもうんだ。
ちょっと汚いものが多すぎませんかね。そんなに全力投球する必要はないけど。
まず大至急、今すぐに変えてほしいのが観光庁のVISIT JAPANキャンペーンのロゴ。

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成田空港にかえってくるたびにこのロゴに盛大に出迎えられると、ほんとうにやりきれない気分になる。
猛烈な脱力感。
ホームページの記述によれば
「力強く大胆な造形は、日本への観光を通じて出会う発見、驚き、感動をシンボライズして」いるらしい…。
マジっすか?
誰がデザインしたんだか知らないけど、これ国辱ものだと思いますよ。

こうした政府もののデザインとなると、みんなに伝わらなければいけないから、
わかりやすくて、クールより少しあたたかみがあるもので、なおかつ誠実な印象が必要だとおもう。
官公庁だったらつい声をかけてしまいがちなのは佐藤可士和先生だと思うけど可士和はマズい。
ぐっとこらえて、たとえばGroovisions(グルービジョンズ) が各省庁のCIをデザインしたら、
とても素敵なことだと思うし、行政にもっと共感できるようになるとおもうんだよね。

ちなみに歴史上イメージ戦略で最もうまく大衆を操った政治家は
ヒットラーとその宣伝相のゲッベルスだと言われてて、
A新聞あたりのマスコミは、ポピュリズムの文脈とからめて政治のイメージ戦略を批判しがちだけど、
これって「殺人事件が起きたから包丁の販売を規制しろ!」ってのと同じロジック。
目的と手段をごっちゃにして議論してはいけません。