「経理は簡単だ!」?
1. 「経理は簡単だ!」?
財務ソフトメーカーは、どのメーカーも帳票出力の簡単さを以って、
「経理は簡単だ!」と主張する。
「簡単な訳がなかろう!」と言っても、始まらない。
「どうせなら、勝ち組「弥生」「勘定奉行」ソフトを積極的に紹介するとするか・・・」と税理士事務所の弊社も、財務ソフトメーカーに迎合する。
最近では、先進の税理士事務所では、仕訳処理を中国に依頼する。四、五年の現地指導を経て、仕訳処理の誤謬は日本人スタッフより少ない。それでも心配な向きには、弊社などの税理士が責任(リスク)を負う。それでも自社での処理結果よりは、安心して任せられる。そういう処理現場の環境である。
更に、インターネットの普及で税務署自身が、個人所得税・法人税等についても、“e-tax”推進を声高に叫んでいる。これは近未来(恐らく2010年過ぎ)に来るべき、国民皆申告制の導入に合わせて実施される税務改革の一つと考えられる。蛇足ながら国民皆申告制とは、給与所得の源泉徴収制は維持するが年末調整は廃止し各納税者に還付申告さる徴税制度をいう。
この電子送信は、民から官へのものである。しかし民から民(税理士事務所)への“e-tax”機能がより効果的であることは言うまでもない。何故なら、税理士事務所が、“e-tax”申告内容について、プライマリー・スクリーニングを掛けるから、徴税コストがより安く済むためである。納税者も後で調査を受けるに際し、多少異論もあろうが、税理士に幾ばくかの防波堤になってもらいたい気持ちがあると思われる。
兎に角、各法人・各個人事業主の現場で仕訳処理された経理が、自動的に財務諸表と成り、税理士事務所に電子送信され、そこで多くは「異常値監査」という手法を使って、不注意の脱税・不正経理のプライマリー・スクリーニングをする。それが国税庁が、税理士事務所を“e-tax”の中継点に位置させた理由である。
弊社は“e-tax”時代の中継送信所たる税理士事務所の役割については、その「異常値監査」で充分の機能を果たすと判断する。そもそも国税庁は「決算は誰でも出来る」と半ば積極的に公言する。法律がそれを許しているからである。会計人の規制は、世界的に資格ハードルを低くする流れに反する。だから本当は中小企業の決算も税理士に限定するとすれば、脱税は減るが国民生活の利便性という政治理念に反する。
2. 専門家(会計士)の本音
しかし一方、この会計自由化により税理士の「記帳代行」という業務は根本的に衰退の一途を辿っている。日本では10年前はほぼ100%が税理士の専門領域であったが、今は80%程度まで落ち込み、今後10年ほどでアメリカの会計事務所並みの50%程度に落ち込むと見込まれる。つまり50%の税理士事務所が後10年ほどで消えうせるという筋書きが見える。
「いつまでも記帳代行にしがみ付く奴は衰退を待つに等しい愚か者だ」
今でも既に「記帳代行業」の肩身は相当に狭い。無能呼ばわりされるのである。現に記帳代行の付加価値は殆どなくなったと言える。安い財務ソフトが世間を席巻している。
「経理マン募集」記帳代行しか能のない税理士事務所は、それでも新聞に募集を掛ける。しかし殆ど反応はない。雇われる方は、一歩地位の高い「経営コンサルティング」を目指し、且つ「リクルート会社」に登録して、高い募集費を払って採用する税理士事務所にしか就職しないのである。
「何が経営コンサルティングだ。」
「バカ野郎!中小企業の社長の方が、経理も財務も法務も労務も、よく知っている!何をコンサルティングすると言うのか?」と、弊社はわめく。でも世の中の流れは変ることはない。
「喚け、おっさん」と言う具合である。
かように若者が「経理を身体で覚える」修行をせず、経営コンサルティングに向かい、余裕のある税理士事務所が、その生草坊主を受け入れる。止むを得まい。これもまた経済戦争の強者と弱者なのである。
3. 中国に頼む経理記帳
かくして弊社などは一足先に先端事務所として「中国チャンネル」で経理処理を目指すことと相成った。日本人のバカ・スタッフより、余程熱心に勉強するし仕事する。誤謬も少ない。四、五年経た中国人スタッフには、日本人会計人と何らそん色はなくなっている。否もっと優秀である。さあしかし、中小企業の社長はどう観るか?
「中国チャンネル?何だそりゃ」。
「危なっかしくてとても任せられないや・・・」
「とんでもない。大事な決算を中国人に任せられる訳がなかろう!」と反応するのではないかと憶測する。気長にやるしかあるまい。幸い弊社は税理士のいる会計事務所(税理士又は公認会計士のいない会計事務所はいっぱいある)である。取あえず税理士がリスクを負えばそれで済む。気長にやるしかない。
この情況は、他の産業で言えば、例えば介護の現場で「日本人スタッフ」が居ないのに、日本人スタッフを求める国民と同じかなあ。まあこのまま世の中が進めば、介護現場は崩壊するなあ。何かにつけて閉塞感溢れる社会である。
「何が悪いのかなあ」。
「役人?キャリア官僚?政治家?マスコミ?」
「いやあ、国民だなあ。やっぱり」。
こんな国が栄えたためしはないのではないかなあ。一人偉そうに評論家振る私である。でも何ともならないから、致し方ない。ゆっくり社会が変るのを待つとしよう。下級役人の暴動が起きる時期が日本の夜明けかなあ?
文責:税理士堂上孝生(C)2008/3/15 dogami@taxes.jp