「今日も病院に銃弾の雨が降る」 鈴木崇生 | 「非現屋」

「今日も病院に銃弾の雨が降る」 鈴木崇生

効率と機転の美学―――戦場医療

 「ジャケ買い」という言葉をご存知だろうか?レコード
(12インチね)を買うような連中の間で使われる表現で、
視聴もせずに、ジャケットが気に入ったとか、ジャケット
が凄いからとか、中身はともかくジャケットだけで購入を
決めてしまうことを指す。

 今日本屋に行って危うくこのジャケ買いをやらかしそう
になった。一冊は『百年の誤読』。年代ごとの話題本を批
評しなおすという趣旨の本だが、カバーが麦焼酎「百年の
孤独」のラベルにそっくり。多分、酒好きが関わってるん
だろうが、面白すぎてずるい。

 もう一冊は『人は食べなくても生きていける』。僕の地元
の本屋にはトンデモ本コーナーというか、とにかく訳の分か
らないサブカル本のコーナーがあって、そこで見つけた。見
つけた場所も場所だが、帯はさらに凄い。裸のおっさんが仁
王立ち。しかも、局部は葉っぱで隠している!おっさん、食
べるはとにかく、服は着ないと人間として生きられないよ。

「よくこれで事故が起きなかったな」
「いや、よく死んだ」

 ―――鈴木氏の同僚の医師
 
 幸い、上記2冊は買わずに踏みとどまったが、時には買っ
てしまう事もある。そんな中の一冊が本書、『今日も病院に
銃弾の雨が降る』だ。中身も見ずにタイトルだけで買ったわ
けだけど、予想外に面白かった。

 本書の著者、鈴木崇生氏は外科医だ。日本の医局でもめ、
仕事を失ったのをきっかけに、彼は海外に職を求めて旅立つ
事を決意する。最初に行ったのがイラン・イラク戦争下の
イラク、次に紛争中のアフガニスタン。本書は、そうした
海外滞在の体験記だ。

 海外滞在とはいうものの、戦時の国に滞在するんだから、
事は尋常ではない。例えば本書には手術中、病院の近くに
ミサイルが着弾し、手術室の扉が爆風で開いたエピソード
が紹介されていたりする。

「若い外科医よ。一人前になりたかったら戦場に行きたまえ」
 ―――本文より

 本書を通じて人間のたくましさというか、リアリティを
感じることができる。日本であれば必要な設備なしでの手
術など信じられないが、戦場(鈴木氏は従軍医師ではない、
念のため。)でそんなことは言ってられない。レントゲン
なしでも、電球が一個しかなかろうがやるしかない。

 また、物がない状況というのは人を蝕むもので、現地の
ナース達のエピソードも驚くものが多い。麻酔のやり方を
頑として聞かず、効きの悪い患者には筋弛緩剤を投与する
だけ(当然、痛かろうが“痛い”顔は作れなくなる)。そ
んなむちゃくちゃなエピソードがほとんどだ。

 戦争って何?NGOは何やっててどんなヤツラ?この本を
読めば雰囲気が分かるだろう。