「ムツゴロウ麻雀記」 畑正憲 | 「非現屋」

「ムツゴロウ麻雀記」 畑正憲

人間ムツゴロウのダークサイド

 ムツゴロウって言われて知らない人はいないだろう。動物
王国に君臨し、トラでも何でも「かわいいですね~」のひと
言でかたづけるおっさんだ。

 動物が大好きなのは分かったが、彼がいったい何者なのか
よく分からない。特に動物王国ってなんだ??タレントって
言うほどもテレビに出てないし、動物に囲まれてるのは分か
るが、動物は家賃も払ってくれないだろう。

「サラリーマンをなめるなよ。麻雀の強さはよ、
 月給の多い少ないで決まらないのだぞ」
 ―――畑正憲

 本書はそんななぞ多き男、ムツゴロウこと、畑正憲氏に
よる麻雀に関わるエッセイである。ムツゴロウと麻雀。想像
持つかない組み合わせにちょっと驚くかもしれない。事実、
僕がこの本を手にとったのは、その意外な組み合わせによる
ところが大きい。

 好々爺然として、今は仙人のような印象すらある氏だが、
本書を参考にすると、サラリーマン時代があったらしい。
そのサラリーマン時代、雀荘で学生の会話を盗み聞きする。
すると彼らは「サラリーマン、特にG社のやつらの麻雀は
ちいせぇ」なんて話している。

 もちろん、畑氏が勤めていたのはそのG社。そこで氏は、
一緒にいた同僚とともに彼らと打つことに決定。「安いん
じゃ嫌だぜ」なんて生意気言う学生を逆にコテンパンにする。

「いかかがですか一晩」
「いいですよ。しかし負けませんよ」
 ―――自信家 H

 たしか、畑氏は小島武氏、阿佐田哲也氏とともに魔王杯
とかいうエキシビジョンマッチをやったことがあるはずだ。
筋が良い、悪いを別にして強い打ち手であったということ
である。

 強いということは、数をこなしてきたということであり、
そんな彼が書くエッセイには多彩な人物が存在する。誰も
が一度は聞いたことのある人物達ばかりであるが、麻雀と
いう切り口で全く別の印象が生まれ、「ああ、彼らも人間
だね」と思えるはずだ。

 志賀直哉の文章じゃなくて、麻雀を評してるのなんて、
この本くらいじゃないだろうか?