さて、再び排ガス制御の話です。


 前回説明したとおり、三元触媒は、空燃比によって浄化能力が限られる為、その処理が可能な範囲(ウィンドウ)内に入るようにエンジン制御を行っています。 この制御を可能にしたのがO2センサー (或いは別名ラムダセンサー )と言われる排気ガス中の酸素濃度を測るセンサーが開発され、このセンサーが排気ガス中の残留酸素の量を測って、空燃比が濃ければ残留酸素は減少、薄ければ増加するのでこれに合わせて理論空燃比になるようにしています。 酸素センサーは、酸素の量に応じて起電力が変化して信号としては0~1Vの間で電圧を変化させています。 この電圧変化は、理論空燃比を境にして大きく変化します。 つまり理論空燃比よりも薄い場合は0V、それよりも濃いといきなり1Vくらいの電圧を出力します。 これによってECUは濃いか薄いか判断してフィードバック補正係数を変化させる事で常に理論空燃比付近になるように制御しています。 最近では傾斜型ラムダセンサーと言う、より酸素濃度と起電力(電圧)とが反比例するものも見受けられます。 一例のグラフを参照してください。

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今は一般的な理論空燃比のところでonーoffに近いO2センサーが使われていますが、今後より高度な排気ガス規制(実際の運転に即したもの。)が制定されればより普及されると思います。 (これはほんの一部の車両にしか使われていません。 非常に高価だから。)


さて、加速をする場合には、燃料を増量(空燃比より多い燃料)し噴射させるか吸気量を増やすかしないと加速は出来ません。 高速の合流点でそろそろと加速する人と一気に加速して流れに乗る方走り方は様々ですが、現在の排ガス規制で使われる運転モードは全社の加速より緩やかなものです。  この運転モードに関しては、ちょっと引っ張るようですが、より興味があるであろうECUチューニングと排気ガス制御との関係・そしてメーカーが行なうECUの書き換えが排気ガスに与える影響が同なのかに今回は絞ってみると、結構今の制御は良くできている。 学習機能然り、排気ガス試験専用プログラムではないけれど、必ず排気ガス規制はクリアできる制御がなされている事が判りました。 自動車メーカーは絶対に制御プログラムを開示しませんから、どのように調べるかは別にして、通常アイドリング・一定速巡航中・まろやかな加速には、O2センサーの信号を使って理論空燃比に限りなく近くなっています。 つまり三元触媒が浄化できる範囲に必ず入るように制御されます。 これぞ究極・完全無比の排気ガス制御?O2センサーの信号を外し軽くアクセルを組んでいくと空燃比は、14.7からはずれてしまいます。 そこ信号をつなぐと一瞬にして14.7になるほどレスポンスがいい! この制御プログラムを書き換えてしまうECUチューニングを行なったらそれこそ有害物質垂れ流しになってしまうのではないか? 通常ならそう思うでしょう。 でもどんなにがんばっても11モード・10・15モードで試験するとほぼ100%クリアします。 そのメカニズムとは;


1.排気ガス測定モードに近い運転では、O2センサーからの信号をフィーとバックさせてる。

2.このフィーとバックをかける条件は エンジン回転数・アクセル開度とその変化率・吸気負圧・水温・排気温度等等

3.排気ガス測定モード運転域は、どの様なECUチューニングを行なっても書き換えが出来ない。

4.排気ガス測定域付近外では、O2センサーからのフィーとバックは外される。 例えば吸気負圧150mmH2Oとかエンジン回転数  

  4500rpm以上とか、アクセルをある一定以上の開度・或は踏み込み速度等。

5.アクセルoffのときは燃料はカットされ、フィーとバックはされない。 


つまり「ECUにO2センサーのフィーとバックをかけているところは、スポーティーに運転する範囲では使わない運転条件」の為、ECUのプログラムを書き換えて出力やトルク特性を変えても一切影響を受けず同時にエンジンはよりピックアップもよくなりECUチューニングの効果は十分発揮できるわけです。 これはすごいって????。 逆に言えば、「排気ガス規制に関係ないところでは、O2センサーのフィーとバックは無い」(あれば現状のシステムではエンジンは高回転まで廻らずレスポンスも非常に悪くなってしまいます。)。 つまりこの様な領域では、空燃比は濃いわけで、三元触媒の浄化効果があるところから外れてしまいます。


sw1 斜線部分の中で全ての回転をカバーしようとすればエンジンは壊れてしまいます。


 ただしこのグラフの通りで、NOxの浄化能力はさほど落ちない反面、CO・HCは大幅に増加してしまいます。 つまりNOx以外は垂れ流し状態で当然高出力のエンジンではPM(ただし眼で見えるほどのサイズにはガソリンの燃焼からは出てこない。でもこれこそ問題のナノPMなんです。)も排出しています。 NOxと同じぐらいHCを徹底的に抑えなければ光化学スモッグは改善されないし(l光化学スモッグはNOx単独で起こすものではありません)、直接吸い込んだ場合はCO/HCの方がずっと健康に悪いのにです。 決してNOxを無視しろなんていいません。 この様な排ガス試験専用に近い排気ガス浄化システムは欠陥では無いかという問題定義です。 この様な領域は小排気量ほどトルクが少ない為、流れに乗る為にはアクセルを踏み込む事が多く、大排気量ほどトルクも大きく三元触媒のウィンドウの範囲から外れることが少なくなります。 簡単に言うと大排気量ほど排気ガス制御は簡単で、75%低減なんてのは小排気量に比べると楽にできる。 CO2の排出量は多いのに今の環境意識からすれば、現在のガソリン車の排気ガス規制はザル法でしかないと言いたくなります。 本来


1.酸化触媒と外域導入システムで加速時に、酸素補正をしてCO・HC三を燃焼させて三元触媒で浄化するか、

2.三元触媒の前段階で理論空燃比になるようの過熱大気を排気に吹き込ませる。 この時には傾斜ラムダセンサー等を組み合 

  わせ、より精密な制御が必要で今のシステムではできない。


こうなると、触媒の追加コストや、制御系のコストの増加が生じ、絶対に自動車メーカーは行ないたくない浄化システムになってしまいます。  ようするに排気ガス測定専用のプログラムと浄化システムしか今のガソリンエンジンにはついていないといっても過言ではありません。 これって明らかに規制だけ満足させれば良いという事で、真の環境対策になっていない。


これに対し、ディーゼルはDPFと酸化触媒がついていて、CO・HCはガソリンの数分の一、しかもどの回転でも過剰酸素域なのでこれらは大きく変化しません。 PMもかなりのところまできています。 (307HDi136のPMレベルは新長期規制実測値で0.0009g/Kmです。 でもTL的にはまだまだ不十分だと思っています。) 残りはNOxでこれには多くの方法が開発され始めており、これが出来れば、ディーゼルはガソリン車と比較してもきれいだと言えるようになります。 しかもシステムによっては、どの回転でもきれいになる。 希薄燃焼以外はディーゼルでは起こらないからです。 それでいてCO2の排出量は既にずっと低い。 熱効率41%前後といわれている最新のディーゼルエンジンは、フューエルセルの効率と比較してもほぼ同じ、今後より期待できるパワーソースである理由がここにあるのです。 


だからと言ってガソリンを否定するものではありません。 ガソリンにはガソリンの良さがあって、さらに今ディーゼルと同じように希薄燃焼の新しいエンジンの開発が行われています。 ただ、現行のガソリン車はクリーンだなんて決していえない。 まだまだ改善すべき点がある。 TLはそう考えています。 つまり夫々の利点を理解して、好きな方を択べる環境が必要でた思うのです。 その中で、ディーゼルの現行の新長期規制レベルは、実走行レベルで比較すれば、ガソリン車と同じぐらいのクリーンさであると言え、ガソリンは完璧だなんて理解が間違っている事を知って欲しいと思います。 どっちももっとクリーンになって欲しいのです。 これを理解して欲しいので今回、ECUとO2センサーフィーとバックについてあえて触れることにしたのです。


でもなんで実走行とかけ離れたそんな試験法なんでしょうか? すでに新しい規格も決まっていますが、これでは不十分。 (これを話し合う人たちは、こんなことまで考えていないか、或は企業としてそんなことまでしたら儲からないと思っている人だけしかメンバーでないからと言ったらきっとしかられてしまいます。 それこそ、ディーゼルを悪者扱いしたどこかの自治体なんかは、政治の道具としてしかしていないから、試験方法を全ての運転条件にするなんて言うはずも無い。 今のホワイトカラー・エグゼンプションの考えと同じです。 イギリスなんかでは、施行後大問題になって、現在対策に追われているのに、好ましいと結論を出す愚かな名メンバーで実情すら把握していない人達が決めていると言いたくなります。)  


本当の環境を作る努力はやはり一人一人が理解し行動して始まります。 次回は、この排ガス試験用の運転モードを考えて見ます。