気がつけば50歳。ついに人生の半分以上を医師として過ごしてきたことになりますが、振り返ってみれば旅をするために働いていると言って過言ではない生活を続けてきていました。1,700回以上飛行機に乗り、170回以上出国し、90以上の国を回ってもなお尽きない旅への飽くなき探究心に、我ながら驚き呆れていますが、そんな中でも憧れの旅のスタイルが、クルーズ船の旅です。
これまでも飛鳥IIやにっぽん丸などのラグジュアリークルーズ船をはじめ、さんふらわあや太平洋フェリー、新日本海フェリーなどの長距離フェリー、地中海、バルト海、カリブ海のカジュアルクルーズ船と、それなりに船旅も楽しんできましたが、これらのクルーズは長くても7泊8日で、次から次へと立ち寄る港と船内イベントで慌ただしいものでした。「次の港まで1週間」と言ったゆったりとしたクルーズは、いつかは出掛けてみたいと憧れる存在です。
もちろん、この手のロングクルーズは退職後の楽しみにするしかないと考えていたのですが、退職後の楽しみを目前にして亡くなった複数の恩師の姿を目の当たりにしたこと、そして自らががん患者となり、それ以降人生観が大きく変わったことなどから、なんとか早いうちに、つまり現役のうちに実行する方法はないかと、密かに企んでいました。
そんな中、世の中はコロナ禍に突入し、テレワークと呼ばれる仕事のスタイルが当たり前の世の中に。実際に緊急事態宣言中は自宅からのテレワークとなり、完全にテレワークのみに移行はできないものの、大半の業務は実現可能となったことを体感しました。また、働き方改革なる言葉が無縁と思われた医師の世界にまで広まり、温泉やビーチリゾートに滞在しながら働くと言ったスタイル、いわゆるワーケーションは、もはや夢物語でもなんでもないワークスタイルとなりました。
となれば、長期休暇を取るのではなく、クルーズ船でテレワークをすればいいのでは?と考えるようになりました。しかも、毎日のように港に寄り、イベント目白押しで忙しいショートクルーズとは違い、ロングクルーズならゆとりの時間もたっぷりあるはずなので、その時間で仕事ができるでしょう。ただ、テレワークをするにはネット環境は必須と言うことで、ひとまず船内WiFiなるものがどの程度使い物になるのかを確認するため、先行して国内クルーズでトライアルを行ってみたところ、快適とまでは言えないものの、なんとか仕事にはなりそうな手ごたえを感じました。
ちょうどこのトライアルを終えた頃、国際クルーズがようやく再開されると言うニュースがあり、まさに「渡りに船」。しかもにっぽん丸の再開クルーズはめったに催行されないインド洋単独のクルーズ、更に寄港地のモルジブ、モーリシャス、マダガスカルはいずれも未踏の国と言うことで、今回の「モーリシャスプレシャスクルーズ」乗船を、ほぼ即決したのでした。

今回のクルーズコース