母は まず茶器にお湯を入れ お湯を冷ました
私も妹も それに倣った
父は高度成長期バリバリのサラリーマン
母のテンポは その時の父には
無駄だったのだろう
お茶を飲まずに出社していた
母が他界し 父は泣き虫になった
「 生きているときに ありがとうを
言っておけばよかった 」
母は起きると必ず 家中の窓を開け
空気を入れ替える
「 家だって 呼吸をしたいのよ 」
今は 誰に言われた訳でもなく
父は 全ての窓を開ける
面白いな
茶器に お湯を入れ 冷ましたお湯で
お茶を入れる
母がやった様に
見ていたのだ 感じていたのだ
ありがとうが 言えない父
今、わたしに沢山のありがとうを
言っている
夫に言った
「 生きているうちに ありがとうは言ってね 」
わたしも 母に もっともっと ありがとうが
言いたかった
母の75歳の誕生日
好物の貝のお寿司を父と食べた