■ロボット活用でマンパワーを引き出さなければ、高齢化は乗り切れない
世界的に見ても高齢化率でトップを独走する日本では、間近に2025年問題や2040年問題が控えています。2025年になると、1947~1949年に生まれたいわゆる団塊の世代がいっせいに後期高齢者となり医療や介護の負担はさらに増大するのです。
日本全体では生産年齢人口や総人口が減り続けるなかで高齢者は増え続け、2036年には高齢者の割合は33.3%で3人に1人になるとも試算されています。さらに2040年頃には団塊ジュニアが高齢者となります。その後、高齢者人口は減少するものの、65歳になる人が出生数を上回ることから高齢化率は上昇を続け、2065年には38.4%(国民の約2.6人に1人)が65歳以上の高齢者になると予想されています(内閣府「令和3年版高齢社会白書」)。
国民年金制度ができた1960年代には約9人の現役世代で1人の高齢者を支える胴上げ方式だったものが、約3人で1人を支える騎馬戦型になり、やがては約1人の現役世代が1人の高齢者を支える肩車式社会が到来するといわれているのです。
超高齢社会を乗り切るには、医師も薬剤師もすべての医療・介護職がよりクリエイティブに、それぞれの職種でしかできないことに集中するしかすべはありません。効率化、ICT化、そしてロボット化を進めることで専門職を単純作業から解放し、今あるマンパワーを最大限に引き出さなければ、超高齢社会を乗り切ることなど困難です。
特に今後を見据えて進めるべきなのは、ロボットを活用したタスクシフトです。薬剤師業務をロボットに移管することで、超高齢社会で必要とされる高度急性期医療、先進医療に充てるマンパワーと財源を確保することができるからです。
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、2019年度の医師の平均年収は約1169万円、薬剤師の平均年収は約562万円です。また厚生労働省「令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」では2020年時点での全国の医師数は約34万人、薬剤師数は約32万人となっています。このことから、現在の医師の業務には1169万円×34万人=約3兆9746億円、薬剤師の業務には562万円×32万人=約1兆7984億円の人件費がかかっているといえます。
今後薬剤師の業務のうちの約半分を占める対物業務をロボットが担うようになれば、単純な労働量だけで計算すれば薬剤師の半数(約16万人)に、病棟等における薬学的管理や薬剤の投与量変更などの医師の業務のうち、薬物治療に関わる多くの部分を移管することができます。そして、その分医師はそれまでとは違う業務、例えばより高度な急性期医療や先進医療に携わることが可能になります。つまりロボットへの薬剤師業務のタスクシフトによって医師のマンパワーを引き出すことと人件費の削減につながり、超高齢社会を乗り越えるための医療に充てることができるのです。