
(撮影:来栖百代さん)
師走に入ってしょっぱなの12/2にお誘いを受けて、ボクシングの試合を初めて観にいきました。
格闘技を生で観るのは、極真空手とムエタイとプロレスのみ。
ボクシングはTVでたまに観ていて好きなのですが、実際に試合を観に行くのは、お誘いがなければ中々いく機会なんてないものです。
塚井太郎。32歳。
出版編集プロダクションをやる傍ら、今回がプロボクサーデビュー戦。
ボクサーとしては異色でかなり遅いデビュー。
塚井さんと知り合ったのは、昨年だったろうか、ランニングのチャリティーイベントの
お手伝いを駒沢公園でしていた時です。
その時は、少しだけしかお話しなかったのですが、その後facebookでつながっていました。
そして秋口に塚井さんから、メッセージが来ました。
「12月にプロデビューするので、ぜひ観に来てください!」
知ってる方のチャレンジ、ぜひ応援したいと思い、「いきます!」
即答しました。
スポーツはやっぱり生で観ないとと思ったのもあります。
スポーツに関係したシゴトもしているので、できうる限り観ておきたいという動機もありました。
試合会場はfaceという新宿のイベント会場。
始まる前から熱気ムンムンです。
そうして第一試合に登場した塚井さん。
ご本人いわく、1ラウンドは様子をみてアウトボクシングをする作戦だったらしいですが。
しょっぱなから、モーレツな打撃戦。
何度もいいますが、初めて生で観るボクシング。
その打撃音が半端なくすごいんです。
バチコンバチコン。
音とともに、汗が飛び散ります。
これは絶対生で観た方がいい。一発でそう感じました。
周りの観客のみなさんも、それぞれの選手への応援と場の空気にコーフン状態。
そして1ラウンド1分をすぎてしばらくたった時、優勢かと思っていた塚井さん、
相手のパンチがヒット。そしてダウン。
なんとか立ち上がったのですが、タオルが投げ込まれTKO負け。
まさに一瞬の出来事でした。
本当に一瞬の勝負。
しかし、その登場からダウン迄の短い時間にすごいドラマが凝縮されてるように感じます。
全力同士のぶつかり合いに衝撃をうけました。
そして、そのまま2試合目以降も戦いに夢中になっていたところ、
後ろから「山本さん!」
と声がしたので振り返ると、笑顔の塚井さんがそこに。
応援にきていた人に、御礼の挨拶に会場中をまわられていたのです。
本当にウレシそうな、でも少しどこかやはり悔しそうな、そんな表情が印象的でした。
聞くと、塚井さんの応援に今回230人の人がいらしていたそうです。
集客ナンバー1だったそう(笑)
そんな塚井さんとその後、どうしても話が聞きたくて今日、お会いすることに。
塚井さんのボクサーをはじめた動機とか、練習や試合中のメンタリティーなどを聞きたいとおもったのです。
22歳の頃は、バスケをやっていて自身でもチームを率いていた塚井さん。
そのトレーニングの一環でスポーツジムに通っていたときに、たまたま誘われたのがボクシング。
試しにやってみたら、面白くてそのまま続けていったのだそうです。
プロになるため会社も辞めた。
小さい頃から人と違ったことをするのが好きでとにかく目立ちたがり屋。
「ある意味クレイジーでいたいんです」
そんな言葉が印象的でした。
クレイジーなことにチャレンジする塚井さんは、そうすることでまわりの人に
楽しんでほしかったそうです。
1人は好きではなく、目立ちたがり屋だが、決して自分よがりでなく、まわりの
つながりを大切にしてきた。
が、しかし、いよいよプロテストという段階の審査でとったCTスキャン。
脳に影が。。。
血管の障害の可能性が少しあり、プロは断念せざるをえなくなりました。
その後は、ランニングやジムに通うくらいで競技という意味でのスポーツは
ほぼやらなかった。
社会人時代の友人知人とも交遊を続けていたけど、やりたいことのために
会社をやめて、「いい会社だから、本当にやりたいことないのなら、続けろよ」と
相談をうけるたびに言っきた仲間に、すこし後ろめたさもあった。
そうして、父親の出版編集会社で社会人として再始動し、結婚、2人の子供にも
めぐまれた。
そんなとき、プロボクサーを目指していた頃に、励まし合っていた、(当時は、正キーパーになれずにいた)プロサッカー選手の友人の弟が、テレビで大活躍しているのを観たのでした。
その瞬間、自然と涙が溢れた。
友人が夢を実現にしているウレシさと、ふがいない結果に終わった自分への悔しさが入り交じって。
そうして、ほどなく、塚井さんは再びボクシングジムの門をたたくことになります。
それが2009年でした。
とはいえ、幼い子供と妻をおいてシゴトと練習の日々は正直大変。
だが、「2011年の震災で、やはり何かをしたい。30オーバーの自分がプロボクサーとして
戦う事で、観てくれる人に何かを残したい!」
そう決意されたのでした。
そしてついに2012年12月に念願のプロデビューのリングにたったのでした。

と、ここまでが経緯。
長いですが、でもなんだかとっても等身大で正直で共感できる話だったので、そのまま
お伝えしました。
そして、今回もっとも聞きたかった、紆余曲折があり、苦難を乗り越えてたどり着いた試合で
感じたこと、気持ちよかった事を聞いてみました。
「試合中は、痛さも感じないし、すごく客観的な視点の自分がいました。
対峙している自分と相手が俯瞰した感じに見えていたんです。
でも観客の声などはまったく聞こえませんでした。
そして、殴るか殴られるかのその精神的肉体的な極限状態が
とっても気持ちよかったです!」
そう答えてくれた塚井さん。
やっぱりエクストリームな状態に入った者のみが触れる事を許されるその「キモチよさ」
は、それぞれ種類は違うかもしれませんが、格闘技の世界でも同じでした。
ここは、docue!構想以来、ずっとテーマにしていることで、
アスリートや冒険家は、なぜ危険を冒したり、肉体的精神的に自ら追い込んだり、わざわざするのだろう?ということの答えだと最近確信しています。
だが、塚井さんは、その後すぐにこういいました。
「でも入場曲とともにリングにあがった時です。最高に気持ちよかったのは」
「え?!」
やさしい笑顔だが、しかし、鋭い眼差しでそう語る彼に少し圧倒されながら、
僕は、聞き返しました。
「まさにスタートする時点じゃないですか?」
「そうなんです。元々目立ちたがり屋というのもあるかもしれないですけど(笑)、
とにかく、今迄の道のりと、230人の友人知人家族の応援してくれる四角いリングに
立てた事なんですよ。
通常デビュー戦で後楽園なんかだと、入場曲なんてかからないし、オーディエンスも平日が多いからすごく少ないんです。
僕はプロとはいえ、会社で働きながらなので、平日の試合は無理だったんです。
そのかわり練習もキツかった。昼間はたらいて22時ころから夜中迄練習。家族ともほとんど会えないですし。
そんなこともあったり、さらに連絡した人たちが、快く二つ返事で応援にきてくれました。
そんな人たちの中でリングに立てて、もう最高だ! って(笑)」
僕が足をつっこみつつあるウルトラマラソンの世界でも
「スタート地点に立てた人はみんな勝者」
と言います。
ジャンルは違えどそうなのかもしれないなと思いました。
気持ちよさには、自分を追い込んで感じるキモチよさと、
まわりの人たちと共鳴しあうことでのキモチよさの2種類があるのだ。
まてよ?でもそれって表裏一体。実は同じことなのかも。。
フッ、このテーマは深いな。。
改めてそう思う月曜の夜でした。
ちなみに、塚井さんに次の目標も、月並みですが聞いてみました。
「わかりません。最高の舞台を経験してしまったから 笑」
まわりには、勝つまで次、挑戦するんでしょ?
なんて意見も結構あるようですが、今はわからないそうです。
その話をきいて、とっても正直な人だとさらに思いました。
そりゃ、今はわからないだろうな。と。
たとえ競技性の高いスポーツでも勝ち負けだけじゃない、そんなスポーツの形がある。
やっている本人がどう感じて何を得るかは自由だ。
そしてどうであれ、まわりに影響を及ぼせる。
僕のとなりで観ていた女性も、はじめて塚井さんにさそわれてボクシングにきたけど、
とっても感動したと、言っていた。
この塚井さんの正直なあまりに正直な今回のお話、聞けて本当によかったです。
次は、ひょっとしたらまたやるかもしれないし、まったく別のことやるかもしれないし、
なーんにもやらないかもしれない。
やりたい時がやるとき。
本当にそう思えるときが。
塚井さん、本当にありがとうございました!
とてもイロイロなことをいただきました。
(写真は今日の塚井さん)
