パスポートのハンコ | ドクター鈴木・あめぶろ研究室

パスポートのハンコ


 今はとても無理だが、若い頃はただ単に遊ぶだけ・時間をつぶすためだけの目的で海外にまで足を伸ばしたことがある。そんなとき楽しみなのはパスポートに押された各地の『イミグレーション(出入国)印』である。


 日本のような島国にいると、国境通過は日常的でない。仕事の都合などで出入国を繰り返しているような方以外は当然、どうしても「海外旅行」と身構える。出入国印はそんなときの一つの記録・記念になりえる。


 若い頃にヨルダンからイスラエルに陸路で入国したことがある。イスラエルに入国履歴があると近隣のアラブ諸国に入国できないという時代であったので、テルアビブの空港などでは普通は入国印を押さない、と聞いていた。私の場合は陸路だったのでどうだろうか不安だったが、やはり判は押されなかった。これ幸いにとその後別の某アラブ国に入国しようとしたら、「ヨルダンを陸路で出発して別の国への入国印が無い場合はイスラエルに入国したと判断する。そうではない証拠を出さない限り入国拒否」と宣言されひどい目に遭った事もある。そんなわけで私には入国印の思い出はある種特別でもある。


 あるとき、かねてから思っていた「一日でどれだけハンコを集めることができるのだろうか」「一週間程度の旅行でどれだけのハンコを集めることができるか」という疑問を解消したくなった。香港の某大学に出かける用事があったので、旅行代理店の人が変な顔をするのを無視してこんな旅行プランを立て、実行した。


 日本->台湾->澳門(マカオ)->香港。しかも乗継地点で必ずその国に入国するという計画だった。日本から香港までは直行便もあり半日かからずに到着するが、このプランでは「朝一番に出国して夜遅く現地到着」となる。


 日本出国・台湾入国/出国・澳門入国(空路)/出国(海路)・香港入国(海路)


 1日に6種類のハンコをゲットできた。これに気を良くした私は、さらに別の日に、香港基点で何かできないか考えた。


 香港->澳門->中国->澳門->香港


 これで8種類ゲットできると思って究極の日帰り旅行を敢行した。ところがこれも6回だった。澳門と中国の「国境」では、中国側しか押印しないのだ。つまり「澳門出国(陸路)・澳門入国(陸路)」はハンコ無しだった。出発時と逆のルートで帰国し、「1回の海外旅行で18個の出入国印」を貰った。これは過去最高の出来事だった。


 次に実行したのは、マニアの方から教えていただいたシンガポールとマレーシアの国境(ジョホール)の陸路通過。出ては入り出ては入りで、パスポートがどんどん両国の出入国印で埋まっていく。ただ、やってて空しくなる(少しもうれしくない)のと、イミグレ係員が「またお前か」と面倒くさそうに判を押す姿を見て数往復で休止。この時は日本出発から帰国までで10回程度の押印だった。


 その点ヨーロッパはずいぶん不利である。いわゆるEC諸国は、域内出入国で押印を省略することが多い。ヨーロッパ発ヨーロッパ行きのいわゆる「EC域内旅行」で入国印を貰ったのは「ジブラルタル」に出かけたときだけだった。しかも「ハンコが欲しい人」は別の手続き窓口に並ばなければいけない・・・(並んだのだ、私)。


 今夏の欧州旅行では、「日本出発・英国入国・日本到着」の3種類のハンコしかない。英国は出国するときにははんこを押さないのだ!「ハンコ集め」をするならやはり東南アジアなのかなあ、と改めて思った。


 何馬鹿やってるんだか、私(苦笑)。ではそういうことで。