スローフード? | ドクター鈴木・あめぶろ研究室

スローフード?

 一世を風靡しているファーストフードに替わって、最近はスローフードが脚光を浴びている。私はあるときはファーストをあるときはスローを選ぶようにしている。


 先日、昼ごはん時間をはさんで二箇所に出張したときに、一箇所目の午前の予定が長くなってゆっくり昼ごはんを食べる時間がなくなってしまった。だから道端のファーストフード店で用を足すことにした。


 マーフィーの法則ではないが、時間が無いときに限ってファーストフード店は見つからない。イメージとしてハンバーガーかドーナツの店を探していたがやっと道の向こうに見えてきたのはどんぶり物を出す店だった。いわゆる「はやい・うまい・やすい」っていうやつ。


 昼食時だったがあまり駐車場はこんでおらず、こいつはラッキーとばかり車を止めて店に駆け込んだ。


 「並」一丁ね!


 カウンターの椅子に座ると同時に店員のお兄さんにオーダーを入れた。はい、お待ちください!とお兄さんの元気の良い声が聞こえた。


 私のすぐ後から少し怖い人相をしたおじさん二人組(以下便宜上「強面(こわもて)の客」と略記)がご入店。私と同じく「並」を一丁ずつ注文した。


 ふと気付くと、オーダーを入れて5分が経過していた。とりあえずのお茶とか水も出てきていない。どうなっているのかと思って店員を呼ぼうとしたその瞬間、強面の客が吠えた。


 おせーぞ!なにやってんだ。


 そこで判ったのだが店員は、「テイクアウトの弁当30人分」をせっせと作っており、カウンターの客の注文が後回しになっている。強面の客一組、私、そして作業服姿の客一人の合計4人が「置いてきぼり」になっているのだった。


 テイクアウトのお客が雰囲気を察知して、
 お弁当はそんなに急ぎませんからお店のほう先にやってください
と声をかけた。しかし店員は順番ですから、とせっせと弁当をパッケージに詰めている。


 私も時間が気になってきた。こんなに待つならどこか蕎麦屋にでも入っても一緒だったか、と思った頃、例によって私の代弁者、強面の客が吠えてくれた。


 おい、いい加減にしろよ。


 その頃弁当が出来上がった。テイクアウトのお客が、カウンターのお客にすみません、お先に、と声をかけて店を出た後、店員はカウンター客用のどんぶりを作り始めた。その後も続々とお客が来て、「お預け」状態が8人に拡大していた。


 お待たせしました、並二丁です、ごゆっくりどうぞ。


と、強面の客にどんぶりを出した。


 おう、待ったぞ!強面の客は生姜をしこたま掴んでどんぶりに掛け、割り箸を割って食べだした。次に出たのは作業服姿の客だ。


 お待たせしました、ごゆっくりどうぞ。


 その客、遅いんだよ、何で俺のが後なんだよ、とブツブツ言いながらトレイを受け取り食べ始めた。その後に私だ。もう時間が無いのでごちゃごちゃ言わないで食べるに限る、と黙々といただき始めた。


 さて私が食べ終わろうとしたまさにそのタイミングに、作業服姿のお客が突然暴れだした。


 どうしても納得できない。ファーストフードなんだから速く料理を出すのが当たり前だ。こんなに待たされるのはおかしい。こんなのもういらない。


 割り箸を投げどんぶりをテーブルに叩きつけた。私がそのどんぶりを見ると、ほとんど全部食べ終わっている。見事な完食だ。しかし。


 作業服の客、「客が満足していないのだから金は払わん、馬鹿者!」と啖呵を切って店を出た。店内の全員が凍りつきあっけにとられていると、強面の客「おぉ、そういう手があったか」と、まねをして啖呵を切って店を出た。


 さて、こういう状況で私はどうしようか。既にその3人の客の後を追う事は出来ないタイミングだった。数秒考えたがやはりこのまま金を払わないのもどうかと思い、レジに向かった。


 あんたたちも大変だね、と店員に声を掛けると彼は苦笑いをしていた。


 その後次の出張先に行く車の間中ずっと考えて出た結論は、「新手の食い逃げか?」ということだ。あれが食い逃げ(犯罪)ではないなら、私も次やってみようか・・・。


 やったとしても「やったね、お父さん、明日はホームランだ!」と息子に言われることだけはなさそうだ。やめておこう・・・。ではそういうことで。