振動 | ドクター鈴木・あめぶろ研究室

振動

 情けないぐらい安普請である私の生息する研究棟は、ユーティリティ(水道ガス電気等)がしょっちゅういかれる。何かあると普通は学生のせいにされ、張り紙などして注意喚起される、と思うのだが、私の今いる棟では何故か犯人は私、らしい。


 どこかで漏電しているらしいと・・・「センセ、コンセントにナイフ刺しませんでした?」

 どこかでガスが漏れていると・・・「センセ、くさい屁こきませんでしたか?」

 どこかで下水が詰まると・・・「センセ、でっかいウンコは自宅でしてきてくださいよ・・・」


 何が何でも私のせいにしたいらしい。


 実は今日も工事の人が入って大爆音轟かせて「下水改修工事」をやっている。きっとまた、私が原因でこうなった、ということになるかもしれない。私が犯人ではないのは確かなので疑われても大丈夫だが、騒音や振動を伴う工事はまことに具合が悪い。特に振動は超ヤバイ。


 もともと安普請なので、キャンパス内を大きな車が通るだけで揺れる。キャンパスは山の上超ド田舎にあるのだがそれでも、山のふもとは工業団地になっていてそこで何かの建設工事があるとやはり揺れる。精密な測定器には振動が大敵なのだ。測定値がおかしくなることがある。


 私は学部生の頃(25年ぐらい前)、足に棲みついていた白癬菌(ぶっちゃけ・・・水虫)の影響で、(通学は普通のズックだったが)学内ではサンダルで過ごした。あるときサンダルが破れて新調しなければいけなくなったときに大学のすぐ近くの靴屋で「朴歯の下駄」が安く売られているのに気付き、当時通学定期も買えない位超貧乏だったが無理してその下駄を買い込み、お気に入りで学内を闊歩したことがある。


 その翌日、何かの講義に出るため「から~ん・ころ~ん」と学内廊下を歩いていると、「そこの学生!下駄を脱げ!」とある教授に怒鳴られた。何事かと思ったら、私が下駄で歩くだけでその先生の研究室の計器に異常が出る、ということなんだそうだ。前日から犯人探しをしていたところに私が現れた、ということ。


 私の母校は『バンカラ大学』だったのでぼろぼろな服を着ているやつが多かったが、下駄履きの学生を見なかった。みんな気をつかっていたらしい。っていうか、工学理学の常識として、下駄履きは駄目よ、ということだったわけだ。


 以降ずっと「工学理学部系」に籍を置いている私は自重0.1トン。普通に歩いても揺れるらしいので、私はいつも抜き足差し足忍び足で歩く。振動を出さないように歩く私の歩き方は「鈴木歩き」という名前でキャンパス内でちょっとだけ有名。


 マスターしたい方はお教えしますよ(苦笑)。
 ではそういうことで。