市内にある旧生産直売所周辺を散歩してきました。ここはかって「完熟農園」という名称で南アルプス市主導、農家の人たちも一部出資して設立運営されていた6次産業施設です。当初運営主体者の意気込みや設立の意義は感じられましたが、将来計画・アプローチを含め、そのほとんどが行き当たりばったりの対応だったような気がします。結局半年で破綻してしまいました。今は草ぼうぼうです。

完熟農園跡地

  <完熟農園跡地・廃屋 手前はレストラン右奥は直売所>

 

 当時の市長・行政の甘い計画、拙速な行動に加え、監視役、ブレーキ役の議会が機能しなかったことや天候不順による野菜、果樹の供給不足などが原因として挙げられているようです。(山梨日日新聞)

 

 しかし生産者側(農家)からみると別の大きな要因が考えられます。

①一つは6次産業施設と言いながら1次(生産)と3次(販売)のみで、周辺の「道の駅」や「生産直売所」と何ら差別化が図られていません。2次としてレストラン(加工)が在るといっても今はどこでも軽食店舗等を兼ね備えています。優位性を持つための魅力・目玉が有りませんでした。

 

②農園全体のレイアウト。特に建物の配置とデザインセンス、これにはコンサル業者に問題があったと云えます。建屋につけられた『R』はRecycle(再資源化)、『M』はManufacturing(製造所)を表し、それが道路から奥まったところに配置されているため、外から見ると「完熟農園」という名前の『再生処理工場』としか映りません。案内板も目立たず不親切でした。したがって通行量が多いのにもかかわらず、一般立寄り客は少なかったと思われます。

 

③我が家で採れた野菜、果樹は農協出荷分を除いて3施設で販売しましたが、「完熟農園」では雰囲気的に価格を高めに設定しなければならなかったこと(還元を大きくするためか)、店内売り場は暗く、黒を基調とした内装、小さな証明と、銀座のお店を意識したような(よく言えば、シック、高級感)作りのためか売れ残ることがしばしばでした。これでは農家も不安を覚え収穫量が少ないときは確実に売れる施設を優先せざるを得ませんでした。

完熟農園パンフ

  <完熟農園 当時のパンフ 負債額7~9億円(不確定)>

 

立地条件も良く、家から近いところに野菜や果樹を収められることは大変ありがたいことで期待もしていましたが残念な結果となってしまいました。そしてユーザーの想定は何だったのか。ファミリー、若者、外国人を含む観光客など誰を呼び込み、リピーターにする予定だったのか。わからないまま終わってしまいました。

 

次回分析と反省に終わらせず、新しい提案をしてみたいと思います。